第182話 急変する事態なわんちゃん
樹が立ち並ぶ森の中、辺りには小さな魔石や鳥の羽等が散乱していた。
そんな中で犬達とゴブリン達が揃って咆えていた。
「「「ウオオォォォオオン!」」」
「「「ごぶっ!ごぶっ!」」」
だがその中で1匹の犬と1人のゴブリンだけは様子が違った。
「グルッ・・・グルルル・・・」
片方は溢れる怒りと力を抑える為、瞳に狂気を携え静かに唸り・・・
「・・・ゴブブ」
残りの片方は怒りの為眉間に皺をよせ歯を食いしばってはいるが、冷静に思考しようと目を瞑り何かを考えていた。
「ゴブ・・・」
やがて思考していたゴブリンは考えがまとまったのか目を開け、犬の方へと声を掛け、これからの行動に必要だと思われた事を話していく。
犬の方は頭が回っていないのか、それともゴブリンの言う事を全面的に信じているのか何も言わず唯々頷き、『こういうモノが必要だ』と言われた物を自分のアイテムボックスから探し始めた。
そしてゴブリンから言われた物が用意できると、犬は静かに怒りをにじませた声で呟いた。
「行くぞ・・・仲間を奪還しに・・・」
・
・
・
・
・
後にそんな事が起こると夢にも思っていなかった俺は、今日も元気にダンジョン探索を行っていた。
「6階層からは敵の数は減ったモノの、1体1体が強いな」
「ゴブ。しかし拘束魔法はまだまだ有効で、地面に落ちた敵はまともに戦えなくなっているので余裕ですゴブ」
「けどニアの話だとそろそろ落ちてもケロッとしている様な敵が出るらしいから、油断は禁物だぞ?」
「ゴブ」
現在は6階層の探索を始めてから半日ほど経ち、そろそろ眺めの休憩を入れるかと考えていた所だった。
「長老、そろそろ昼ご飯休憩でもいれるか?」
「そうですな・・・因みに周囲に敵は居ますゴブ?」
「俺のスキル範囲には居ないな」
6階層は1~5階層と違い森フィールドとなっており非常に見通しが悪くなっており、休憩を入れると無防備になるので念のために俺に確認したのだろう。
「ではここで休憩しますゴブ。皆の者!一度止まるゴブ!昼ご飯の時間ゴブ!」
「「「ごぶ!」」」
そして大丈夫と解った長老は皆へと声を掛けて移動をストップさせ、皆で昼休憩という事になった。
皆はごぶ蔵がせっせと配ってくれた昼ご飯をパクつき至福の時を過ごす。
「ごぶ蔵の飯は何時食べても美味いな」
「うん。エルフの村に居た時より美味しい物食べてる気がする」
「照れるごぶ!でももっと褒めていいごぶ!」
警戒をしつつ雑談なんかもしてリフレッシュしていると、長老がこの階層の攻略について話しかけて来た。
「一狼様、この階層ですがもう少し早く進む事が出来そうですゴブ」
「ん?早く進む?」
「ゴブ。今現在の攻略速度は見通しが悪い森の中なので遅くなっておりますゴブ」
「だな。でも安全のためには仕方なくないか?」
「もっともですゴブ。しかし、もしも一狼様の様に敵が感知できれば早くなると思いませんゴブ?」
「そりゃなるんじゃないか?」
長老の言う事に俺は素直に頷く。しかしだ、このダンジョン攻略は全体の力を底上げすると言う目的もあるので、俺が積極的に索敵&デストロイをしてしまうと台無しになってしまう。
だから長老から『スピードを上げるためにスキルを使ってほしい』と言われても困ってしまうのだが・・・いや、まてよ?まさか!?
「知っているのかラ○デン!?その方法を!?」
「ゴブ?」
・・・ネタを叫んでしまったのは悪かった。だからその『何言ってるの?』みたいな顔はやめろください!
「あ、いや、うん。なんかいい方法でもあるのか?」
「ゴブ。前々から開発はしていましたが、昨日の夜の作戦会議を聞いてもしかしたらと思い開発を急ぎましたゴブ。結果的には考えていた魔法の開発は無理でしたが、今の状況で使えそうな魔法が出来上がったのですゴブ」
「へぇ・・・すごいな・・・」
ごぶ蔵のユニークスキルをチート臭いなんて思っていたが、実は長老の方がチート疑惑が出て来たのでは?なんて思ってしまった。・・・まぁ神様公認のユニークスキルなのでチートも何もないのだが。
「まぁうん。んじゃあ休憩後に試してみて、イケそうならスピード上げてみるか」
「ゴブ」
・
・
・
チートだ云々は置いておき、30分程休憩を取った俺達は早速長老の新魔法とやらを試してみる事にした。
「それじゃどんなのか見せてくれ。っていうか先に効果聞いておくか」
「ゴブ」
俺の『索敵』は俺を中心とした円形の範囲内にいる敵を知らせる、言うなれば潜水艦のソナーみたいなスキルだ。
長老も魔法でその様にしたかったらしいのだが結局は駄目だった様で、視界の中の違和感に気付けるぐらいのモノしか出来なかったらしい。
「罠感知の魔法に似た感じか?」
「ゴブ。擬態している敵やこの様な森で見えにくい敵に反応し、それらが点滅して見える様になる魔法ですゴブ。更にこの魔法は多数へ掛ける事により真価を発揮しますゴブ」
「ふむ?」
「魔法を掛けられた者で微弱ながら意思が繋がる様になっているので、多数の視点で観測する事により効果が上がりますゴブ。つまり、皆に掛けて皆が警戒すると、ほぼほぼ敵を見つけれる!・・・はずですゴブ」
場面によっては俺のスキルより使えるだろうし、何より誰にでもかけられる魔法である、上出来過ぎると言えるほどに上出来だろう。
「「「ごぶごぶ」」」
説明を聞いていたゴブリン達は多少首を傾げてはいたが、漠然と凄いとは思ったのか長老へと拍手をしていた。
俺も同じく長老へと凄いと称賛をし、早速かけてもらう事にした。
「ゴブ。・・・見通す眼、感覚を広げるゴブ『違和感発見』」
「ふむ・・・?」
「「「ごぶ・・・?」」」
しかし特に何か変わった様子はなく、俺達は長老を見た。すると長老は冷静に答える。
「罠感知と同じで、物を見るまでは何もないのですゴブ」
「あ、そう言えばそんなこと言っていたか」
ゴブリン達に『解ってないなお前ら』とか言っていたのにこの体たらくである。
『穴があったら入りたい!掘るべきか?』なんて少し現実逃避をしかけた・・・その時である。
「ん?何か来るかも?」
元から『超感覚』なるユニークスキルを持ち、更に今は長老の魔法で感覚にブーストがかかったエペシュが何か違和感を捕らえたみたいだった。
しかし俺のスキルには何も反応が無い。だから長老の魔法の不具合を疑ったのだが・・・結果的には俺の方が間違っていた。
『『『・・・ピュゥェェェエエ!』』』
「ん!?後方に反応が出た!」
鳥の鳴く声が遠くから聞こえたなと思った後にスキルが反応したのだ。
「けど大分遠いな・・・エペシュはよく気付いたもんだ」
「えっへん」
「凄いなエペシュ。だけど今は・・・長老!」
「ゴブ!」
どや顔になっているエペシュを褒めたい所ではあったが、今はそんな時ではない。俺は長老に声を掛け、急いで迎撃準備を進める。
幸いにもまだ距離があった為余裕で体勢を整え、俺達は敵を待ち受けた。
やがて何やら視界に違和感を覚えたかと思うと、樹の枝の切れ目から敵の姿がチラホラと見えた。
「長老!エペシュ!」
「ゴブ!・・・具現し捕らえるゴブ!『マジカルネット』!」
「うん!・・・ふっ!」
長老とエペシュはこのダンジョンの必勝法である拘束攻撃を敵へと仕掛ける。魔法の網と仕掛け矢の網が敵を捕らえて地面へと落とし始めた。
「この階層にしては多いな。長老、エペシュ、大丈夫か?」
「問題ないですゴブ。先日までの階層と違い強くはありますが、網を抜けられる程という訳でもないのでゴブ」
「こっちも全然大丈夫。もっと強いのとかも狩ってたし」
「了解だ」
6階層の敵は強くはあったが、必勝法やそもそもスペックが違うエペシュの前では敵ではない様だ。だから安心していたのだが・・・。
「ん?また何か来るかも?」
「え?あ、本当だ。スキルに反応があった」
ヤレヤレ片付いたと皆が思っていた頃、エペシュが再び何かの接近を感じて声を上げた。
皆が『またか!』と慌てて体勢を整えたのだが、今度の敵は移動速度が遅いみたいでなかなか姿が見えなかった。
そして暫くした後・・・俺達は困惑していた。
『ザッ・・・ザッ・・・』
「足音・・・?鳥系魔物じゃないのか?」
そう、新たな敵は足音を響かせこちらへと近づいていたのだ。
「長老!」
「ゴブ!皆の者!地上の敵用へと隊列を変更ゴブ!」
俺達が慌てて隊列を組み換え、敵を待ち受けていると・・・敵の姿が見えて来た。
「来たか・・・ってドール系のてきぃっ!?」
「ゴブッ・・・!?」
「「「ごぶぶっ・・・!」」」
「体が・・・動かっ・・・」
そして敵の姿が見えたと同時に、何故か俺達の体は痺れたかのように動かなくなってしまった。
一体何が起こったんだと全員が混乱する中、その場に軽い感じの声が響いた。
「ん?あぁ、通りで・・・」
『その声にその姿、お前は!』と俺は言いたかったが、その頃には声すらも出せない状態だったので、俺は
突然現れた
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「誰だお前は!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 謎の魔物の正体が !
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます