第169話 勝利のBGM蝙蝠と吠えるわんちゃん
「ぐふっ・・・ぐふふふっ・・・こいつら間抜けすぎるんだなぁ!」
一狼達に向けて再度『チェンジリレイション』を使ったバーツは、ボォ~っとした感じで立つ一狼達を見てニタニタと笑い転げた。
「ぐふふっ・・・僕ちんのチートスキルを解除は出来ても、防げなかったんだなぁ!まぁそれもしょうがないんだな。なんせ、僕ちんのスキルはチートスキルに相応しく、手をかざしただけで使えちゃうんだからな!」
暫くそうやって笑い転げていたバーツだったが満足したのか立ち上がり、一狼達の方へと近づきため息を吐いた。
「はぁ・・・それにしても、折角良い所だったのに台無しなんだなぁ・・・このイッヌめっ!って危ない危ない、関係を設定する前に衝撃を与えちゃぁ下手したら敵対関係になっちゃうんだな」
バーツは先程あった事を思い出し一狼を蹴ろうとしたのだが、寸での所で止め足を降ろし、その後気分でも入れ替えるかのように深呼吸をした。
それが終わるとそれまでの不機嫌そうな表情から一転・・・ニヤニヤデレデレしだした。
「ぬぅーん・・・それよりはロリフたんなんだなぁ。僕ちんの為に帰って来てくれるだなんて流石嫁一号!みっちりと使い込んであげるんだな!」
バーツはそう言うとエペシュの背中をそぉーっと押して祭壇前まで誘導し、そこに着くと体勢を整えさせた。
「また面倒なことになっても嫌だから、僕ちん的ジャスティスの誓いのチッスだけ先に頂いておくんだな!で、関係を設定したらお楽しみタイムから始めるんだな!もう正直ドリルの先からビームがでそうなんだな!・・・ということで」
バーツはどうやら先程の続きをご所望の様で、『ゴホン』と咳ばらいをして喉の調子を整えた後、彼にしては真面目な口調で語り出す。
「えー・・・汝らは真摯な気持ちで相手を想い・・・あー・・・訪れる苦難を手を取り合い乗り越えますか?また・・・えーっと・・・魂を繋げぇ・・・あ、死した後もその繋がりを辿り巡り合う事を神に誓いますか?・・・だったんだな?」
少し自信無さげに『これで合っていたよな?』という感じで頷き、最終的には『まぁいいか!』とでもいう様な感じで頷き少ししゃがみ気味に姿勢を変えた。
「兎に角、誓うのならば互いに祝福を送り合って神に証明するんだな!という事で、チッスカモーンベイベー!なんだな!」
バーツは何故か自分から行かず、目を瞑ってエペシュからのキスを待ち始めた。
「さぁ・・・さぁ・・・僕ちんの大勝利だからチッスを・・・んんん・・・」
蝙蝠なのにタコの様な口をしてバーツは待った。
それはもう待った。
なんせエペシュはバーツの性癖ど真ん中、ドキドキがワクワクでテカテカだったからだ。彼はエペシュとキス出来た瞬間に自作した勝利のBGMを、追加した機能を使い流すつもりだった。
・・・
「・・・まだなんだな?」
しかし何故か一向にエペシュからのキスが来ない。
「・・・チラ・・・なんだな?」
これはおかしいと思いチラリと目を開けると・・・
「あ」
目の前で思いっきり弓を引いて構えているエペシュがそこには居た。
「・・・なっ!?いったいな「グ ル ォ ォ ォ ォ オ オ オ オ ン ン ン ! ! ! ! 」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
オッス、オラ一狼。
今オラは敵のスキルにかかった振りにいそしんでんだゾォ。
けどこれもまたてぇへんなんだぁ。
だってよぉ?クソ野郎がオラのでぇじな女神にベタベタしてんだゾォ?オラはもうプッツンしそうでてぇへんだぁ!
(・・・ってことでそろそろいいか)
丁度バーツがエペシュの背中を押して離れていったので、俺は念話で声を出さない様に長老とごぶ蔵へと語りかけた。
【長老、ごぶ蔵、スキル掛かってないか?】
【ゴブ】
「・・・」
(む・・・ごぶ蔵は駄目だったか)
長老の方は大丈夫だと反応して来たのだが、ごぶ蔵の方はボォ~としたままだったので、これは演技ではなく本当にスキルにかかってしまったのだろう。
長老もそれに気付き、何故か謝って来た。
【申し訳ないですゴブ】
【ん?】
【魔法が完璧ではなかったようですゴブ】
エペシュ、長老、ごぶ蔵の3人はレモン空間へと収容した際に敵のスキルにかかる確率を下げるため、魔法を使い対策を施し、更にごぶ蔵が料理魔法で切りとった?敵のスキルを料理して耐性料理(効果の有無は不明)を作りそれを食べて来ていた。
長老はその際掛けた魔法が完璧ではなかったと謝っているようだが・・・
【いや、そもそもがユニークスキルだからな。効果があっただけでも御の字だろう。俺にも多分効果はあったし】
相手が使ったのは神すら召喚出来うる力を持つユニークスキルだ、かかる確率を下げられるだけでも十分である。
それに恐らく俺も長老達がこっそりと魔法を使ってくれたおかげで掛からなかったわけだし、十分すぎると言えるだろう。
【あのユニークスキルは1度目はほぼ掛かり、2度目からは相手によってほぼ掛からなくなるのじゃ。なので一狼は魔法が無くても掛かりはしなかったじゃろう】
【・・・そうか】
突然今まで存在感を消していたニアが喋りかけて来た。だが今は悠長に喋っている暇もないので、ごぶ蔵をこっそりレモン空間へと収納して行動を開始する事にした。
【収納完了っと。長老、これからの動きを説明する】
俺は長老へと作戦を伝える。といってもだ、これからの作戦は至ってシンプルだ。
【先ずは俺に声を大きくするような魔法をかけてほしいんだが、そんなのあるか?】
【ありますゴブ】
【んじゃそれをかけてくれ。んで俺がこっそりと敵の真後ろに回って全力で咆える。きっとあいつは耳が良い筈だから一時的に麻痺るだろ】
バーツは蝙蝠の姿をしているし、スキルにも聴力を上げるようなものがあったので恐らくそうだと予想した。万が一普通位の聴力だとしても、至近距離で俺が全力で咆えれば少しは聞くだろう。
【んで麻痺ったらその隙に全力で攻撃を叩き込む。卑怯かもしれないが安パイ・・・安全策だろう】
【ゴブ】
『敵に奇襲をかけて麻痺らせた後に攻撃』というシンプルな作戦を長老へと説明すると、俺は『隠密』を発動させ相手から気付かれにくくなる状態へとなった。
そして長老へと【作戦開始だ】と伝えた後、こっそりと慎重にバーツの背後へと移動していった。
幸いと言っていいのか、バーツは目の前の女神エペシュ(花嫁ver)に夢中になっているみたいで俺には気付かず、あまつさえ何やら自分で誓いの言葉を言い出していた。
【エペシュ、長老にも作戦を伝えて来た】
エペシュには既に作戦を伝えてあったので、それを長老にも伝えて来たと念話で伝えると微かに頷き了解したと伝えて来る。
その間にバーツはクライマックスに入った様で目を瞑りエペシュからのキスを待ちだしたので、これ幸いと収納から弓矢を取り出しエペシュへと渡す。
【それじゃ始めるぞ】
「・・・コクリ」
「・・・スゥゥゥゥゥゥ・・・」
俺は大きく息を吸いこみ・・・
『ギリィッ・・・』
エペシュは弓を大きく引き絞った。
「・・・チラ・・・なんだな?」
と、その時バーツが中々キスしてこないエペシュに焦れたのか目を開けてしまった。
「あ」
(だが今更何もできないだろう!喰らえっ!)
しかしこちらの攻撃は準備万端で発射寸前だったので、俺はそのまま・・・力の限り咆えた。
「・・・なっ!?いったいな「グ ル ォ ォ ォ ォ オ オ オ オ ン ン ン ! ! ! ! 」
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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