第164話 厄介な敵とわんちゃん
そいつはコボルトに似ていたが、四肢や首の太さ、単純な大きさ等差異が見られる魔物で、こんな魔物はこのダンジョンで初めて見た筈なのだが俺には何故かそいつに見覚えがあった。
「どこかで見た筈だ・・・コボルト・・・ニコパパ?いや、彼らとも違うな・・・」
頭の何処かにはあるのだがなかなか出てこない、そんなもどかしい感じだったが『鑑定すれば一発じゃん』と気づいたので、俺はその魔物を鑑定した。
名前:
種族:ウォーワーウルフ
年齢:0
レベル:3
str:515
vit:482
agi:533
dex:306
int:217
luk:102
スキル:絶倫 ウォークライ 咬みつき ひっかき 腕力強化・中 脚力強化・小 土魔法
ユニークスキル:
称号:
「結構強いな・・・そしてウォーワーウルフか」
称号やユニークスキルは無いのだが基本のステータスが大分高く、近接戦に限るならエペシュよりも強そうだった。
「だが俺ならいけそうだな・・・しかし、ん~」
「グルォォォオオオン!」
相手のステータスが解ったので評価をし、更に種族名で記憶から奴の正体を引っ張り出そうとしていたのだが、敵さんはそんなゆっくりと考える時間をくれないみたいだった。
「・・・っ!耳を塞げっ!」
ウォーワーウルフが大きく息を吸いこんだのを見た俺は咄嗟に叫び、自分の耳を水や風を使い防御した。
『ウォホゥゥゥウルルルゥゥゥウウウウウ!!』
(あんまし音が通らない様にってやってみたけど・・・うるせぇ!)
これは唯叫んだだけでなく、『ウォークライ』を使ったのだろうと俺は考える。それというのも、昔ゲームで『ウォークライ』と言う技があり、それは戦意高揚効果や敵をスタン(行動不能)状態にする技だったからだ。
「クソ・・・耳が良いのは犬の弱点でもあるな・・・皆!大丈夫か!?」
咄嗟の事だったので自分の防御を固めるので精一杯だった俺は味方へと呼びかけた。すると・・・
「ご・・・ごぶぶぅ・・・」
「きゅぅぅん・・・」
「っく・・・この世界の『ウォークライ』は敵の戦意を低下させる感じのスキルなのか!」
ゴブリンやウルフ達は蹲ったり視線をウロウロさせて落ち着きが無かったりと、戦闘が出来る状態ではなくなってしまっていた。
だが不幸中の幸いと言うか、どうやら効果は戦意を低下させる
「うぅ・・・うるさいごぶ。ごぶの耳は繊細なのにごぶ」
更に、ウルフ達は全滅だったが一部のゴブリン達は戦意低下状態にもならず、少しフラフラとはしているが行動できている様だった。
「この状態でごぶ蔵が動けるのはナイスだな!おーいごぶ蔵!動けない皆をレモン空間へ送って休ませてやってくれ!」
「ごぶ?わかったごぶ!」
「頼んだ!」
大多数の仲間が行動不能に陥ったのは痛手だが、長老やエペシュ、ごぶ蔵といった上位の面々が行動できるようなので、大分マシになった今の戦況ならどうにかなるかも知れない。
だがそれにはやはり・・・
「ガフュゥルルルゥゥゥ・・・」
アイツを片付けるしかなさそうだ。
「今はあいつの正体なんぞ後回しだ!倒してから考える!ベリーイージーだ!」
この戦局を乗り越えられなければ正体云々もなにもない。なので俺は頭を空っぽにして倒す事だけを考える事にした。
「ッシャァ!行くぜ!・・・って、うぉっ!?」
「「「グギャァァァオゥゥゥ!」」」
先制攻撃だっ!と思っていた所で、周りに居た雑魚が急に俺へと突撃して来た。その様子は尋常とはいい難く、まるでクスリでもキめてるのかと言わんばかりだった。
「『ウォークライ』にはこちらだけでなく、自分方にも影響を及ぼすって事か・・・って、あ!壁が!」
『・・・ミシッ・・・バリバリ・・・』
敵の圧力が一気に上がった為、長老と協力して作った数を制御するための壁が軋みをあげ、ついには耐えきれず破壊されてしまった。
そうなってからは大変だった・・・
「っちぃ!掛かって来いや!・・・ってそっちに行くんじゃねぇ!うらぁ!」
通路から一気になだれ込んできた敵は無差別に攻撃の目標を定めた為、戦意喪失中の仲間へと襲い掛かったり・・・
「ごぶ!こっち来るなごぶ!」
「ごぶ蔵!」
戦意喪失中の仲間を助けている最中のごぶ蔵へと迫る敵を排除したり・・・
「燃えてしまえ!恥ぜよ爆炎、絡みつき燃やしつくせ『ナパーム』!」
「「「グギャァァ!・・・グギョォォォオオオ!!」」」
「はぁ!?燃えながら突っ込んでくるだとっ!?」
『ウォークライ』によって敵の痛覚でも麻痺しているのか、瀕死状態でも敵が動く事を止めなかったからだ。
「くっそぉ・・・唯『雄たけび』をちょっと凄くしただけかと思いきや、めっちゃ厄介だな『ウォークライ』!・・・でも、何であいつは動かずにこっちを見て笑っているんだ?」
今の状況はどう見ても俺達側のピンチ。普通なら雑魚に混じってウォーワーウルフも突っ込んでくるところなのだが、奴はこちらを見ながらニヤニヤとしているだけで一向に動く事をしなかった。
「うぉっ!あぶねっ!」
・・・訂正だ、奴は合間を見て土魔法で攻撃を仕掛けて来た。
だがそれも散発的かつ威力も弱めなので簡単に対処でき、正直嫌がらせの域を出ない攻撃だった。
「まぁ余裕ぶっこいてくれてるんならそれはそれでこちらは助かるからいいんだがな!よし!動けるものは後方の階段方向へ!ちょっと強い攻撃を使う!」
「「「ごぶ!」」」
「わかった!」
ごぶ蔵が頑張ってくれたおかげで動けない味方を全て収容することが出来たので、俺は戦況を変えるために強力な攻撃を仕掛ける事にした。
幸いと言っていいか、敵方は狂ったように通路から飛び出しこちらへと攻撃を仕掛けて来ているので、大技を使ったならば大部分を殲滅出来るだろう。
「すまん!エペシュは時間を稼ぐために援護を!長老は俺の攻撃の余波を防ぐために壁を作ってくれ!」
「任せて!」
「解りましたゴブ!」
溜めなく適当に使ってもそれなりの威力は出るが、今の状況だと一発で敵を殺しきらないと面倒だ。
なので俺は2人へと援護を頼み、集中してスキルと魔法を使い始めた。
(あんまり風を集めて圧縮しまくると不味いからほどほどに・・・そこへ何時もの如く火を加えてっと・・・後はタイミングを見て投下する水球も程々に圧縮して準備・・・)
魔力を回し、風、火、水を準備していく。これらから解るかもしれないが、俺は何時もの炎の嵐からの水蒸気爆発を狙っていた。
「よし!十分に魔力も練り込めた!エペシュに長老、備えてくれ!」
「ゴブ!防壁準備は出来ていますゴブ!」
「長老!手伝うね!」
「行くぞっ!炎の嵐!」
「む?ばーにんぐはりけーんすぺしゃるではないのかえ?」
「・・・バァァァニィィングゥゥゥハリケェェェェンスペシャルゥゥ!」
「「「か・・・かっこいいごぶー」」」
ニアさんがいつぞやの事を覚えていて何か言ってきたが、俺は兎に角敵へ向けて練り上げた炎の嵐を放った。
「「「グギョォォォオオオアアアア!!」」」
「ヨシッ!・・・長老!俺がこの水球を放ったらすぐに前方も壁で覆ってくれ!」
「ゴブ!」
「ふぅぅぅ・・・嵐よ圧縮せよ!・・・今だ!っそい!」
そしていい感じに炎の嵐が敵と踊っているのを確認したので、俺は魔力を操作し嵐を圧縮させ、そこへ水球を投げ込んだ。
『ボボボボボッ・・・ッボォォォォォン!!』
その結果、思惑通りに水蒸気爆発が起こり長老が作った壁に凄い衝撃が襲ってきた。
だがその衝撃は直ぐに治まり、壁の向こう側の喧騒も収まっていた。
「長老、前方を少しだけ開けてくれ。確認をする」
「ゴブ」
状況を確認する為に壁を一部解除してもらい、俺は戦場の様子を確認した。
するとそこにはドロップアイテムが散らばるばかりで、生きている魔物は居ない様に思えた。
「・・・やったか?」
未だ通路の奥に敵は残っているかも知れないが窮地は脱した、そう思った俺は呟き安堵の息を吐いた。
その時だった・・・
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「やったかっ!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 一晩でやってくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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