第163話 メイン殲滅犬となったわんちゃん
「お前で最後じゃぁぁあ!スラァーッシュゥ!」
右の通路の往復を終えてゴブリン達が戦うフィールドへと戻って来たのだが、皆が俺を見る視線は何処か不審者でも見るような目だった。
きっと最初の通路に比べて時間が掛かったのでそれを非難しているのだろう。
「すまん長老!皆!敵が若干強くてな!9割方始末しようとしたら時間がかかっちまった!で、状況は!?」
俺は謙虚なわんちゃんなので先ずは皆に謝罪をし、それから状況を尋ねる。すると長老は俺を許したのか、すかさず報告をしてくれた。
「左前の通路が押され気味ですゴブ!少し前からエペシュ様もそこへ掛かりきりとなり、大分不味い状態ですゴブ!他の通路は何とか抑えられているので、右の通路へと魔法を掛けたら次はそちらへ向かってくださいゴブ!」
「了解だっ!」
長老の報告を受けて左前の通路をチラリと見ると、確かにあまり良くない雰囲気を感じた。なので俺は返事をした後直ぐに右の通路へと氷の壁を設置し、左前の通路へと走った。
「大丈夫かエペシュ!皆!」
「ちょっとまずい!」
「「「ごぶっ!来た!メイン虐殺犬来たごぶ!これで勝つるごぶ!」」」
「『守護の壁』!・・・そんで喰らえっ! ウ ォ ォ ォ オ オ オ ン ! !」
帰って来た返答がヤバ気だったので、俺は一先ず仲間へと『守護の壁』を使い、その後で『雄たけび』を使った。
『『『・・・ッガァ!』』』
すると思惑通り敵が怯んだので、俺は『今だっ!』とエペシュに声を掛ける。
「うん!水よっ!礫となり敵を打て!」
「ナイスっ!んじゃあ俺もっ!風よっ!切り裂けっ!」
これまた思惑通りエペシュが怯んだ敵へ魔法を使ってくれたので、俺もそれに合わせて魔法を敵へとぶつける。
すると少しだけ間が空いたので、見たことが無い敵のステータスチェックとエペシュへと声を掛ける事にした。
「先ずは・・・『鑑定』!」
名前:
種族:6つ足狼
年齢:-
レベル:7
str:221
vit:204
agi:378
dex:195
int:139
luk:62
スキル:雄たけび 咬みつき ひっかき 連携 脚力強化・小
ユニークスキル:
称号:
名前:
種族:ウルフェル
年齢:-
レベル:6
str:280
vit:173
agi:298
dex:166
int:172
luk:70
スキル:雄たけび 咬みつき ひっかき 連携 火の吐息
ユニークスキル:
称号:
他にも何種類かいたみたいだが、パッと見えた魔物を鑑定してみた所この様なステータスだった。数が多い上にこのランクだと、確かにエペシュでもきつくなって来るだろう。
「エペシュ!俺は先程までと同様に通路へと突っ込んで行って後続を潰してくる!ここに居る分は任せてもいいか!?」
「それ位なら大丈夫!任せて!」
「頼んだ!」
このままここで並んで迎え撃つとなると結局は状況が変わらないと思ったので、俺は再び通路へと攻め入りこちらから攻める事にした。
それもなるだけ早くしなければきつくなって来るため、俺はその場をエペシュへと任せて通路へと飛び込む。
「つってもこのままじゃさっきより時間がかかっちまいそうだ・・・ここは新技の使いどころっ!」
そう言うと俺は一先ず『雄たけび』と強風のコンボで敵を退かせ間を作り、新技『風圧縮』をし始めた。
「集え集え・・・集いて収束せよ・・・」
新技と言いつつ似たようなことは前にもやっていたが、あの時は何も考えずやっていたのでノーカンっ!ノーカンなのだっ!
「収束・・・収束・・・圧縮・・・」
「一狼、来ておるぞ?」
「ぬわっ!未だ圧縮仕切ってないのにっ!やっぱこの技は未だ駄目かっ!」
今までずっと姿が見えなかったニアが敵が迫ってくることを教えてくれるが、俺の技は未だ完成していなかった。予定ではこれ、圧縮し切れたらプラズマみたいなものが出来上がる予定だったのだが・・・
「このままじゃ唯の風で出来た球だっ!」
そう、今のままだと唯の圧縮された風で出来た球なのだ。これを敵にぶつけたところで完成予想のプラズマみたいに敵を次々と焼いていく事は不可能だ。
「くっ・・・精々圧縮された風が爆発するくらいじゃないか・・・って、充分じゃねぇかっ!おらぁ!くらえやっ!」
だがよくよく考えるとこのままでも十分殺傷能力は高そうだったので、俺は圧縮された風の球を向かってくる敵の向こうへと射出した。イメージ的には何かにぶつかった瞬間圧縮を一気に解除する感じだったのだが、果たしてどうなるのか。
俺は今か今かとその瞬間を待っていたのだが、何故か急に嫌な予感がして防御を固めた。
「・・・っ!『守護の壁』氷の壁!水の壁!風よ阻め!」
敵が迫って来るにも関わらず俺は使えそうなスキルをすべて使い、自分をすっぽりと覆う。
そしてそれが出来たと思った瞬間・・・
『ッ パ ー ン ! 』
空気どころか音も通さない様にガッチガチに覆った筈なのだが、何かが破裂した様な大きな音が聞こえ、その後に防御壁にバンバンと何かがぶち当たる衝撃が響いた。
長いようで短い時間が経ち、静かになったので俺は防御壁を解いて外に出る。すると・・・外は先程まで魔物の声で五月蠅かったはずなのに、それが嘘だったかの様に静まりかえっていた。
「なんだかわからんがチャンス!」
俺は今だとばかりに再び風を集め始めた。と言っても今度は先程の様にそこまで風を集めて圧縮させる事もなく、程々に集まって来た風へと炎を混ぜ込み炎の竜巻を作った。
「イケッ!」
そして出来た炎の竜巻を前方へと放つ。炎の竜巻は魔力を送り続けていたので、威力が衰える事もなく通路の敵を焼き続け、遂には敵を焼き尽くした。
「うっし、綺麗に片づいた!多少は時間が掛かったけどこれでミッションコンプリートだな!早く戻ろう!」
その炎の竜巻について行き様子を見ていた俺はガッツポーズをし、全速力で通路を引き返した。
今回は生き残った敵も居ないので全速力で戻り、ついでにどうせならと皆が戦っている場所へと出た瞬間に通路を魔法で塞いだ。
「これでよしっと・・・エペシュ!大丈夫だったか!?」
一連の作業を終えたので、残していったエペシュの事が気になったので振り返り叫ぶ。
するとエペシュは何故かホッとした様な表情を見せた。
「よかった。無事だった」
「え?」
「ここに居ても防御しなくちゃいけない凄い音と衝撃が伝わって来たから、何かあったかと思った。大丈夫だったの?」
「・・・大丈夫だ、問題ない。」
俺が放った圧縮風球の威力は大分凄まじかったらしく、少し離れていたここまで被害が来ていた様だ。
流石に『俺が放った攻撃が当たっちゃった?メンゴメンゴ!』とは言えないので適当にごまかし、長老の元へ行ってくると言って戦略的撤退を決め込んだ。
「長老!エペシュの方は鎮めて来たぞ!」
「ゴブ!ご苦労様ですゴブ!それより、強い魔物が居たのですゴブ?凄い衝撃と音がしましたゴブ」
「だ・・・大丈夫だ!問題ない!」
戦略的撤退を決め込んだはずだが逃れられていない様だった。だがそれは今は考えない事にして、長老へと状況の説明を促す!
「で・・・状況は?」
「ゴブ。一狼様が3か所の通路の敵を一掃してくれたので大分落ち着いてきていますゴブ。ですが前方の通路の敵がドンドン強くなってきていて、このままだと儂等だけでは抑えきれなさそうですゴブ」
「エペシュが比較的動けるようになったから前方の通路を見てもらい、その間に俺が残りの封鎖してある右前通路を片付けるか?」
状況を聞いて次の動きを俺が提案すると、長老は顎に手をやり考える様に俯いた。だが直ぐに答えが出たのか顔を上げた。
「ゴブブ・・・出来るならば一狼様には次に前方を攻めてほしいですゴブ」
「右前の封鎖は持ちそうだし取りあえず放置か?」
「それもありますが、負傷者が増えているのですゴブ。なので一旦エペシュ様に回復役へと回ってもらいたいのですゴブ」
「そういう事か、了解だ」
「エペシュ様には儂から伝えて来るので、一狼様はそのまま前方通路をお願いしますゴブ」
「おうよ!」
ゴブリンやウルフも戦えてはいたが負傷して動けないものが多くなって来たらしく、長老はそれを鑑みて俺を前方通路へと送る作戦を建てて来た。
俺としても治療は早くした方が良いと思ったのでそれを承諾し、前方通路へと走った。
「ここの通路は俺が受け持つ!抜けてこっちに来た奴だけ相手を頼むっ!」
「一狼ごぶ!頼んだごぶ!どんどんごぶ達の手に負えなくなってきて困っていたごぶ!」
「ああ、任せろ!」
前方の通路を受け持っていたごぶ蔵達に合流すると、エペシュの援護も頼めないので先ずはこちらへと流れてきている魔物達を片付ける事にした。
少し乱戦気味になっているので、仲間を傷つけない様にスキルを使わず爪と牙で敵を仕留めていく。
「おらぁ!がうがう!がるぁああ!・・・ふぅ、粗方片付・・・ってそうだよな、お代わりはたくさん来るよな」
スキルで一気にとはいかず、ちまちまと仕留めた末に一息ついていたのだが、前方の通路から敵が沸き出て来るのでそれどころではなかった。
しかし乱戦状態も解除されたので、これなら大丈夫だと思いソロソロ通路へと突っ込んで一掃しようと考え、俺はごぶ蔵へと声をかけた。
「ごぶ蔵!後は任せた!俺は通路へと侵入して敵を根こそぎ殲滅してくる!」
「ごぶ!」
その時だった。
「グワァァァオオオオオンン!」
前方の通路から一声大きな叫びが聞こえたと思うと・・・
「ガフュゥルルルゥゥゥ・・・」
「・・・」
通路から・・・どこかで見た様な魔物が現れた。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「狭い空間で爆発系は・・・」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が 虐殺爆破犬に進化します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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