第161話 ほにゃららしないと出れない部屋とわんちゃん

「一狼様、ここはまさか?」


「ああ、多分ボス部屋だと思う」


 珍妙不可思議な罠をキテレツな回避方法で進んで来た俺達はある扉へと辿り着いていた。

 距離も大分進んで来たし、何より雰囲気があるのでこれをボス部屋だと判断した俺達は、慎重に慎重を重ねて扉を開く。


「・・・ふぅ。罠無しだな」


「ゴブ。皆の者!安全だったから集合ゴブ!」


「さーて・・・今回の仕掛けはどんなもんかなっと」


 開く前に魔物の気配を感じていなかったが案の上で、部屋の中に魔物はおらず唯看板だけがぽつんと立っていた。やはり今回も仕掛け系のボス部屋になっていたみたいだ。


「部屋の中に罠は無しっと。んで・・・肝心の仕掛け内容はっと・・・ふむふむ?」


「今回も仕掛け部屋ですゴブ?・・・ゴブゴブ」


「また仕掛け部屋だったの?」


「あぁ、エペシュ。どうやらそうっぽい」


「ふぅ~ん・・・ん?3日?開く?」


「あ、やっぱりエペシュもそう見えるか」


「うん」


「儂も同じ様に思いますゴブ」


 看板を見ていると長老とエペシュが来たのだが、2人もこの看板を見て同じことを思ったらしい。


「いやぁ・・・まさか・・・えっっ!しないと出られない部屋とは」


「なにそれ?」


「ナンデモナイデス」


 そう、この仕掛け部屋は何と『えっっ!しないと出られない部屋』!



 ・・・ではなく、3日間滞在しないと扉が開かない部屋らしい。



「何故3日しないと開かないのでしょうゴブ・・・」


「工事中?」


「いや、唯単に向こうさんが工作する為の時間稼ぎじゃないかなと思う。監視してるって言っただろう?多分そのせいで今頃俺達を始末する為の罠でも組んでるんだと思う」


 長老達は理由が解らないみたいだったが、らんらんには・・・いや、俺には解った。

 ここを管理している者はリアルタイムで俺達を監視しているフシがあるので、恐らく俺達が進行を阻止する為に新たな罠でも急いで作っているのだろう。そしてその為の時間稼ぎとして、苦肉の策だがこういう罠にしたんだと思う。


「ごぶ?それならここを100日後に開くとか、1000日後に開く罠にでもすればいいのにごぶ」


「あ~・・・多分それは罠的に無理だったんじゃないかな?」


「ならなんで3日はいけるごぶ?」


「・・・知らんよそんな事」


「ごぶ?ごぶごぶ・・・」


 うちの奇才がなんか変な事を言ってきたが、そんな事は俺も知らんのだ!知りたきゃスラミーにでも聞け!

 なんて思っていると、ごぶ蔵は気になりすぎたのか本当に聞きに行ってしまった。


「おいおい・・・って、まぁいいか。看板の通りなら3日は強制的にストップさせられるわけだしな」


 ごぶ蔵の行動に飽きれはしたが、看板に書かれている通り3日間はここに足止めとなるのでまぁいいかと矛を収め、部屋の中を観察していたゴブリン&ウルフ達に声をかける事にした。


「おーい!ちょっとみんな集合~!」


 俺の声に集まって来たゴブリン&ウルフ達に事情を説明し、3日間は自由時間だという事を伝えた。

 するとここだとやる事が無いのでレモン空間へ行っていいかと聞いてきたので、俺はそれに許可を出し、皆をレモン空間へと収納した。


「さて・・・俺達なんだが・・・」


「ゴブ。誰かはここに残っているべきでしょうゴブ」


「・・・だよな?まぁしゃぁないわな」


「ここでも十分寝れるし遊べる。大丈夫!」


「前向きだなエペシュたん・・・」


「妾達は本来山や野、森に棲む者、街に住むヒューマンとは違うのでこの様な所でも余裕じゃろうて」


「あー、まぁそうね」


 皆はレモン空間へと入れたモノの、恐らくこの罠部屋の性質上誰かは残らなくてはならないと考えていると、長老とエペシュ、ニアはすんなり了解をしてくれた。


「グルル・・・(俺も居ますよボス・・・)」


 そうだな、後長老の傍に居るウルフリーダーもだな。影薄いんよ君。


 とまぁそんなこんなで3日間足止めを食らってしまうことになった俺達は、久しぶりに暇な時間を過ごすこととなった。


 ・

 ・

 ・


「も・・・もっと投げてくれエペシュたん!」


「グル・・・グルル!(こっちも・・・こっちもだ長老!)」


「それ!」


「ゴブっ!」


「「ワンワン!」」


「おーおー・・・木の丸板なんか追いかけて・・・すっかり犬みたいになっておるのじゃ」


 あんまりにも暇すぎて、俺達はフリスビーを作って遊ぶほど暇を持て余していた。


 ・

 ・

 ・


 そして気が付くと・・・


「「ワンワン!ワンワン!」」


「本当にこれが好きだね一狼達は」


「投げすぎて手が痛くなってきましたゴブ・・・」


「「ワン!ワンワン!」」


『カチッ』


「「ワン?」」


「あ、3日経ってたみたい?」


 そう、気が付けば3日も経っていて扉が開いたのだ。


「ワンワ、ワンワンワンォワンワンォ」


「一狼よ、犬語では長老やエペシュに伝わらんのじゃ」


「ワン?・・・っは!」


 そして3日間完全に唯の犬になっていた俺は人語?を忘れていた様だった。・・・不覚なりぃ。


「お・・・おほん。ようやく3日間が終わった様だな。ご苦労さん長老にエペシュ」


 俺は仕切り直す様に長老達にも解る言葉で語りかけ、続けてごぶ蔵達を呼び出す事にした。


「へい!皆カモーン!お仕事の時間だぞう!」


 俺はレモン空間の出入り口を開き、中にいるダンジョン攻略隊のメンバーを呼んだ。



『・・・』



 だが返事は無い、唯の入口の様だ。


 ・・・というのも当然で、俺がここで呼んだからといって中には一切声が聞こえていないのだ。


「・・・うん。まぁ呼んでくるわ、ちょっと待ってて」


 なので俺は仕方なく中に入り攻略隊のメンバーを呼び寄せた。

 程なくして攻略隊のメンバーがボス部屋へと集まり、再度進行する準備が整った所で俺は声をかけた。


「皆!3日が経って扉が開かれた!だから次の階層へと進もうと思う!」


「「「ごぶ!ごぶ!」」」


 皆が『いよいよかっ!』とでも言わんばかりに武器を振り上げたのを見て、俺は続ける。


「だがしかーし!この3日間で恐らく敵は防御を固めているだろう!それは罠を敷き詰めているのかもしれないし、強い魔物でも配置したのかもしれない!」


「「「ごぶっ!?」」」


「兎に角、何かしらは俺達の進行に対する対策を取って来ていると思う!だから十分注意してくれ!」


「「「ごぶっ!」」」


 皆は素直に頷いたり驚いたりしていたが、最後に俺が注意を促すと比較的キリッとした顔立ちになった。だがこの状態は長く維持できないだろうから俺は話を終わらせ、さっさと進む事にした。


「よし!じゃあ気を付けて行くぞー!出発!」


「「「ごぶっ!」」」


 俺は最後にもう一度だけ声をかけ扉へと向かった。


 扉を開けると直ぐに下りの道が見えてきたので進み、次の階層へと降り立った。そして・・・直ぐに皆へと警戒の声を飛ばした。


「・・・っ!気をつけろ!敵の反応が近くから大」



『『『グォォォオオオ!』』』



 気をつけろと言う俺の声は大量の魔物の声にかき消され、その後指示を出す間もなく・・・俺達へと魔物が襲い掛かって来た。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「薄い本みたいにはならないんですか?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が えっっ!な展開に・・・


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532


 お詫び:誤字修正 2022/8/18

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