第160話 奇才を殴りたいわんちゃん

「ん~・・・これらの罠を作った奴ってすごいは凄いけど、科学者とかではないっぽい?」


 相も変わらず現代知識を使ったキテレツな罠が続く階層で、俺は推測をしていた。


「無害だと思って通り過ぎようとしたらいきなり爆発したり、俺も使っている水蒸気爆発を使った罠なんてのもあったけど、何かどれもこれも『実験してみました動画』の域を超えてこないんだよな」


 俺は今まであった罠を思い出した末、コイツ教師か動画を見て学んだだけのにわかじゃないかと考えていた。


「もしそうならかなり楽になるな・・・って、楽ではないか」


「む?なんじゃ、その科学者とやらではなかったとしたらそんなに楽になるのかえ?」


「比較的?」


 ニアに尋ねられたが、俺としては大分楽になるだろうし見通しもよくなるとは思っている。

 なんせ本物の科学者が居たのなら俺の知識では解決できない更に奇怪な罠も出て来るかも知れないし、本当に下手をすると核反応罠とか使って来て『\(^o^)/オワタ』みたいになってしまうかもしれないからだ。


「そんな設備用意できるわけないだろって思っても、意外とダンジョンさんがやってくれるかもしれないしなぁ・・・何かと油断できないんだよなこの世界」


「何やら面白そうな話の気配がするのじゃ・・・一狼よ、それらを妾に話すのじゃ」


「別にいいけど・・・目の前のあれもあるし後でな」


「うむ」


 前世の話が大好きィーヌのニアさんが話を聞かせろと強請って来たが、今はそれどころではないので俺は話を流して目の前の扉を見た。


「長老、俺的にはこの扉の仕掛けが描いてある看板の意味を解釈出来たんだけど、そっちはどう?」


「儂も出来ましたゴブ。恐らくですが、正解の線を切ると開き、間違っていると爆発でもするのではないですゴブ?」


「まるっきり一緒だな。って、ドラマとかアニメの時限爆弾かよ!?」


「それも後で聞かせるのじゃ」


「はいはい、後でね」


「うむ」


 言っていなかったが現在俺達が何をしているのかといえばだ、道の途中にいきなりデーンと出て来た扉の前で扉の仕掛けについて考えていたのだ。


「ごぶ蔵の腹時計具合や進んで来た距離からするに、未だボス部屋ではなさそうだ。だけど腹時計が夜だって事だからこれだけ開けたら休むとするか」


「賛成ごぶ!今宵のごぶの腹は飢えているごぶ!」


「お前の腹は妖刀なのかな?」


「ごぶ?」


 自分では微妙、ごぶ蔵からしたら問題外だったらしい突っ込みは置いておき、俺は目の前の仕掛けを解くことにした。


「線はあれだな、ピタゴラスイッチ的な感じになってるから正解が解りづらいな」


「ピタゴラスイッチが何かは解りませんが、確かにですゴブ。実際に動かしてみないとどう動くか解らない様な仕掛けもありますし、これは難解ですゴブ」


「だなぁ・・・」


 頭脳労働担当の俺と長老があれやこれやと協議していたが中々答えは出ず、『これは解いてから休むではなく、休んでから解くことになるか?』なんて思っていると・・・



「ごぶ!ごぶは解ったごぶ!」



 奇才ごぶ蔵が手を上げ出した。


「違います。なので大人しくしていてください」


「ごぶっ!?まだ何も言って無いごぶ!」


 勿論またトンデモ回答をすると解り切っていたので俺は流し、黙っていようね~?とやんわり断ったのだがごぶ蔵は諦めなかった。


「聞くだけ聞いてほしいごぶ!そうしたらきっと一狼はごぶを褒めるごぶ!」


「いえ、聞いたら多分殴りたくなるか突っ込みたくなるのでいいです」


「ご~ぶ~!!」


 ごぶ蔵が食い下がり俺が流す、そんな事を続けていると、俺の背中にいる救いの女神が『一狼、聞いてあげてよ』との言葉をかけて来たので、俺は仕方なくごぶ蔵の答えとやらを聞くことにした。


「解ったよ・・・さぁ、話してみ?」


「ごぶ!ごぶが導き出した答えはズバリ・・・」


「ズバリ?」



「遠くで防御を固めてからスキルかなんかで適当に線を切る!ごぶ!」


「はい、かいさ・・・いや、意外と良いかも知れんな」


 奇才ごぶ蔵の回答は正しく奇才だったが、その回答は意外と良いモノに思えた。


「普通なら俺や長老の様に『正解はこっちだ』と考え律儀に扉の前で結果を待つだろうけど、考えてみれば別に扉の前で待つ必要ないよな?別に爆発したら駄目という訳でもないし」


 ドラマやアニメなんかだと『爆発したら被害が出る!』とかで爆発させてはいけないが、今の状態だと別に爆発させたところで防御すればいいだけの状態だ。


 ならば・・・


「ぐ・・・ぐぬぬ!」


 だが・・・だがしかし!ごぶ蔵のアイディアをすんなり採用すると言うのは悔しすぎる!

 特に『(^ω^)<ドヤ?』という感じをしている今のごぶ蔵を見てしまうと猶更だ!


「ご・・・ごぶ蔵の案をさい・・・いや!ふさい・・・いやいや!やっぱりさいよ・・・うぉぉぉおお!」


 俺は迷った。迷いに迷った。

 だがそうしているとニアが『やるなら早うせい』と言ってきたので、それならば仕方がないと俺達はごぶ蔵の案を実行する事となった。


「ニ・・・ニアにやれと言われたから仕方なくやるんだからネッ!決してごぶ蔵の案が素晴らしいからやるんじゃないんだからネッ!」


「ごぶごぶ、解ってるごぶ解ってるごぶ。だからさっさとするごぶ」


「っく・・・線をぶった切れ『黒風』っ!」


 防御を固めて安全を確保した俺はスキルを使い適当に赤色の線を切った。

 そうしてしばらくすると『ボーン!』と言う音が防御壁の向こうから聞こえて来たので、見事に爆発したという事が解った。


「外れか?」


「ゴブ。でも開いているかも知れませんゴブ。見に行ってみましょうゴブ」


 爆発したという事は不正解だったわけだが、それでも一応確認してこようという事で見に行くと、扉は不正解だったにもかかわらずパッカリと開いていた。というか爆発でポッカリと穴が開いていた。


「不正解でも一応は進めるのか・・・」


「らしいですゴブ」


 なにやら釈然としない思いはあったモノの、開いたのなら進もうという事で扉の向こうへと進む事にした。

 だが当初の予定通りそこで休もうという事になったので、扉から少し離れた位置まで来たところでレモン空間への入口を開いた。


「ごぶ!厨房がごぶを待ってるごぶ!」


「厨房は私も待ってる!だから一狼、私も先行くね」


「あ、うん」


 次々と入って行く仲間を見送り、全員入ったのを確認した所で俺も入ろうとしたのだが、最後に俺は後ろにあるであろう仕掛け扉を見てため息をついた。


「はぁ・・・明日からはごぶ蔵がドヤる機会がなかったらいいな・・・」


 そしてそんな言葉と共に、俺もレモン空間へと入って行った。


 ・

 ・

 ・


 だが翌日、俺の願いは無残にも敗れ去ってしまった。


「ごぶ!解ったごぶ!暗い、音も吸収する空間が心を壊すと言うのなら、元から心のないゴーレム系の魔物をごぶ達のダンジョンで召喚するごぶ!そしてそいつに『レモンの入れもん』を持たせて進ませるごぶ!」


 この様に精神系の罠を回避したり・・・


「ごぶ!解ったごぶ!あのはしが渡れないと言うのなら、一狼のスキルで氷の橋を作って渡るごぶ!」


 この様にとんちを回避したり・・・ん?これは何か違うか?


 まぁともかくだ、奇才ごぶ蔵は罠のキテレツな回避を編み出し続けたのだ。

 勿論全て採用したという訳ではないのだが、半分くらいは採用してしまった為にごぶ蔵のドヤ顔は止まる所を知らなかった。


「クソ・・・殴りたい・・・あの笑顔・・・」


(^ω^)「ごぶぅ?」


 そんな事があったモノの攻略自体は順調に進んでいたので、気が付けば俺達はボス部屋の様な部屋へと辿り着いていた。



 しかしその部屋に在ったのは予想外の仕掛けで・・・俺達は思わず脱力、後にやる気を失って3日程遊びほうけてしまう事となった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532


 お詫び:誤字修正 2022/8/18

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