第159話 豆知識は動画から得たわんちゃんと転生者?

 ブンブン!と勢いよく飛んでいくこん棒が床に張られている水に着水した瞬間の事だった。


『・・・バシャァパギィ゛ィ゛ィ゛!!!』


『ザァァァァ・・・パギギギィ゛ィ゛ィ゛ンッ!!!』


「な・・・なんじゃありゃ!凍った!?」


 床の水が瞬時に凍り付いたと思ったら天井からも水が降って来て、それが地面の凍っているこん棒に当たったと思ったら更に凍りつき、最終的にこん棒は氷山みたいになってしまった。

 俺は余りの事に口をあんぐりと開けて固まっていたのだが、ゴブリン達やゴブリン(仮)のエペシュはそれが面白かったのか・・・


「・・・!ごぶ蔵!こん棒出せる!?」


「はいごぶ!」


「えいっ!」


『・・・バシャァパギィ゛ィ゛ィ゛!!!』


『ザァァァァ・・・パギギギィ゛ィ゛ィ゛ンッ!!!』


「「「おぉ~・・・」」」


 再び罠ポイントにこん棒を投げて遊び始めた。


「・・・ちょ!エペシュたんストップ!ごぶ蔵もこん棒を渡すんじゃァなァイ!」


 何をしている!?と俺はゴブリン&エルフを制止し、おかしな遊びを止めさせた。

 そして遊びを止めさせた後に、先程起こったのが何なのか考えてみる事にした。


「水に触れた瞬間こん棒が凍った・・・もしかしてあの水は液体窒素とかか?・・・いや、液状の液体窒素は常温だと蒸発しだすから違う様な・・・」


 俺のイマイチ微妙な科学知識を引っ張り出して先程の現象と照らし合わせてみるが、イマイチ答えは出てこない。

 だがそうやってうーうー唸って考えていると、おぼろげながら前世で見たある動画の事を思い出した。


「そう言えば暇つぶしに見ていた動画で何かあったな・・・水がいきなり氷に変わる奴。なんだっけなぁ・・・冷却・・・冷凍・・・冷蔵・・・冷やす・・・ん~・・・あ、思い出した!過冷却現象!」


「罠の正体がわかったのですゴブ?」


「多分だけどな」


 俺は微妙にあやふやだが過冷却現象の事を長老に話す。


「水って冷たくなったら凍るんだが、やりようによっては凍らせずに水のままでいられるらしいんだよ。んで、その状態の水に衝撃を与えたら一気に凍る。・・・ってのが多分この罠なんだろうとは思う」


「成程ですゴブ」


「つっても、普通だとあんなに凍らない筈なんだけどな。・・・まぁダンジョンマジックなんかな」


「ダンジョンマジックですゴブ?」


「いや、それは適当に言っただけだ、すまん。要はダンジョンが引き起こせる不思議現象ってことよ」


「ゴブ」


 そう言って長老が罠の方を見たので、俺も罠の方へと目を向けた。

 恐らくこの罠は『何だ、ただの水か』と油断させたところに過冷却の水を踏ませ氷漬けにする罠なのだろう。

 俺達も気づけなかったら恐らくそうなっていただろうこの罠・・・中々恐ろしいモノだ。


「ま、だけど解ってしまえば簡単だな。要は天井の罠反応の下を通らなければいいだけだし、それにっと・・・『黒風』」


 俺は余り威力云々考えずに、風を通路にビュンと吹かせた。

 そうすると水面は当然の如く揺れ動くのだが、過冷却状態になっている水面はというと・・・


『『『・・・バシャァパギィ゛ィ゛ィ゛!!!』』』


『『『ザァァァァ・・・パギギギィ゛ィ゛ィ゛ンッ!!!』』』


「「「おぉ~・・・」」」


 こちらも当然と言っていいのか、衝撃を与えられた床の水は全て凍り付き、ついでに天上の罠も発動したのか大量の氷山が通路に出来上がった。


「ここまでやるつもりはなかったが・・・ま、いっか。よし長老、進もう!」


「解りましたゴブ。皆の者!進むゴブ!氷の山の近くを通る時は注意ゴブ!」


 こうなれば残るは唯の水が張られた通路のみ、俺達は悠々と水の通路を渡って行った。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 ≪???≫



 迷宮の核が存在する石室にて、一匹の魔物が映し出される映像を見て喚いていた。


「な・・・何なんだなアイツラ!尽く僕ちん渾身のトラップを回避するんだな!ぬぅぅん!どれも苦労して思い出して作った自信作だったのにぃぃぃ!」


 魔物はその鋭い爪が生えた足で暫く地団太を踏み暴れていたが疲れたのだろう、ゼーハーゼーハー言いながら再び映像へと目をやった。


「強いから仕分け部屋で罠コースに送ったけどもうダメなんだな!この罠コースを抜けたら全勢力を持って物量で圧殺してやるんだな!数は力だよね兄貴ぃ!・・・って兄貴はもういないし、あいつはそんなこと言わないんだな」


 魔物は誰かを思い出す様なそぶりを一瞬見せたが直ぐにやめ、代わりに苦い顔をした後に唾を吐き捨てた。


「・・・ッペ!あのクソ野郎の事はどうでもいいんだな!思い出すだけでイライラするんだな!」


 そう言って大きく鼻から息を出した後、これまでとは一転、魔物はニヤニヤした表情になりある扉の方へと歩き出した。


「んふふ・・・こういう時は一度リラックスするのが一番なんだな。おーぃ・・・っとと・・・」


 そう言いながら扉を開けると、魔物はその部屋に居るもう一匹の魔物の名を呼ぼうとした。

 しかしもう一匹の魔物が寝ていた為慌てて口を塞ぎ、静かにその魔物へと近づいた。


「んー・・・良く寝てるんだなぁマイハニー。ぐふふ・・・かわいいんだなぁ・・・」


「んむぅ・・・んん・・・」


 涎でもたらしそうな勢いで寝ている魔物を見ていた魔物は、自身が持つスキルでその魔物のステータスを覗き見る。


「うんうん・・・この調子ならもう少しで進化するんだな・・・そ・・・そうしたら・・・ぐふっ・・・ぐふふっ・・・」


 魔物はそう言った後急にその部屋を飛び出し、上手く隠された隠し部屋へと移動した。


「ぐふぅ~・・・ぐふぅ~・・・ここまで来たのなら一番美味しそうな時に手をだすべきなんだな!それまでは・・・こいつらで我慢するんだな!」


 入った隠し部屋には数体の魔物が居たのだがその魔物達は迷宮が生成した魔物らしく、置き物みたいに大人しく座っていた。しかしそんな事は関係ないとばかりに興奮した魔物は迷宮産の魔物へと飛びつき・・・


 暫くの間、隠し部屋ではお祭りが繰り広げられていた。


 だがそうしている間にも、迷宮の核には侵入者達の順調な侵略行為が映されていた。


【侵略者達が再び罠を回避。着々と侵略が進められています。危険度大です】


 迷宮核もその状態を報告するも、その場には誰も居ない。



 しかしその後も迷宮核による報告は続き、お楽しみを終えてスッキリした魔物が戻って来ても報告は止まる事が無かった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「お?新たなゲスゥですか?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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