第157話 沢山の仕掛けとわんちゃん

 お詫び:ギミックの説明を微修正 2022/7/10

「んー、多分だけど・・・○は錘で1~8はそれぞれ重さを現している。それでその錘全部を使って天秤を水平にしろって事かな?」→「んー、多分だけど・・・金属の様なモノは錘で、○は錘の重さを表しているみたいだな。1を基準として1個分の重さから8個分の重さ、みたいな。それでその錘全部を使って天秤を水平にしろ、かな?」

 ------------------------------------


 はい、解散。


「ごぶっ!?」


 ごぶ蔵が自信満々に解ったと言ったので聞いてみたら、案の上間違っていた・・・というか斜め上な発想の答えを言ってきたので、俺はごぶ蔵をしっしっと追いやる振りをしながらどこが駄目だったかを言ってやった。


「その答えはなごぶ蔵、とんち的発想では当たりかも知れないがこの問題では不正解だ」


「ゴブ。とんちが何かは解りませんが、『全ての錘を半分に切って、天秤に片方ずつ乗せる』が間違いなのは儂も解りますゴブ」


「だよな?」


 とんちみたいに捻った考えを出さないと答えが出ないならば別だが、今回出ている問題は計算でもしてみれば明確に答えが出る問題なのでごぶ蔵の答えが正解だって事はありえないだろう。

 しかしごぶ蔵はそれが認められないようで食い下がって来た。


「でもそうしたら駄目って事も描いて無いごぶ!だからごぶの答えでも間違っていないはずごぶ!」


「っは!確かに!」


「っは!確かに!じゃないよエペシュたん?計算する事諦めてないで?」


 頭ゴブリンのエルフさんが天才ゴブリンの発想に賛同しかけたので突っ込んでしまった。どうやら頭ゴブリンさんは計算を諦め気味らしい。

 なのでこれ以上待っていても駄目かなと思い、俺は正解を教える事にした。


「数学的に考えたら余裕なんだが、この場合・・・・・・」


 俺は得意げになって答えを言い始めたのだが、実はこの問題、昔ネットで見た『1~10や1~100を足した時の総数の簡単な計算方法』を応用するだけだった。一応超簡単にこの計算方法を説明すると、『頭と尻の数字を足し、総数の半分の数を掛ける』だ。


「って事で1,8,2,7を片方に、3,6,4,5をもう片方にって感じだな」


「「「おぉ~」」」


(・・・ギ・・・ギモ゛ヂィ゛ィ゛ィ゛!)


 俺がドヤ顔をかましながら説明し終えると、何も知らない長老達は感心した様子で拍手をしてくれた。


「・・・」


 ニアだけは俺の顔色を読んだのかはたまた心を読んだのか、『コイツ・・・』みたいな雰囲気を出して半目で見て来たけどな!


「よし、答えも解ったところで仕掛けを動かして進むか。長老、片方頼んでいいか?」


「ゴブ」


 そのままドヤっていると何か言われると感じたので、俺は仕掛けを動かす事にした。


「これでよしっと」


「こちらも載せましたゴブ」


「ありがとう長老。っと、皆!何かあるかも知れないから一応警戒してくれ!」


「「「ごぶ!」」」


 天秤へ錘を乗せ終わると俺は念のために皆へと指示を出した。

 流石に指示通りギミックをこなしたので大丈夫だと思うのだが・・・なんて思っていると、階段へと続いていると思わしき扉から『カチッ』という音がした。


「開いたのか・・・?」


「あ、ほんの少しだけど隙間出来てる」


 身構えてはいたが何事もなく扉は開いた様だったので、俺達は少し開いた扉を完全に開いて先へと進んだ。

 するとやはり次の階層へと続く道で合っていた様で階段が見えた。


「ん、大丈夫そうだな」


「ゴブ。っと、一狼様、今日はこの辺で探索終了でもよいですゴブ?」


「そうだな。階段の所だし丁度イイ、ここで今日は休むとするか」


 思えば朝からこのダンジョンへと入り、時間はそろそろ夜になる。かなり進化を重ねた俺や、強者であるエペシュ、ニアは2,3日ノンストップでもいけるが、ゴブリン達はそうではないので、一日一回は寝る為に休憩をとる必要があるのだ。


「皆の者!今日の探索はここまでゴブ!」


「『レモンの入れもん』っと。入り口開いたから入ってくれー。あ、ごぶ蔵、レモン空間の中いったらご飯の準備頼めるか?」


「解ったごぶ」


 長老が全員に合図を掛けた後、俺はレモン空間への入口を開いた。

 そして皆がレモン空間へと入っている途中、長老が『そういえば』と話しかけて来た。


「一狼様、先程階段だし休むのに丁度イイと言っていましたが、階段だと何か違うのですゴブ?」


「ああ。俺もダンジョンコアに聞いた話だが、一応ダンジョンには細々としたルールみたいなのがあるそうだ。それに『階段では戦闘禁止』みたいなのがあるらしい」


「成程ですゴブ」


「うむ。何やら神が設定した迷宮における作法だそうじゃ」


「神様が作ったのかそういうルール・・・。それは知らなかったな」


 前世でもラノベや漫画などで聞いた事があったルールだったのだが、神様が考えるダンジョンの様式美なのだろうか?


「ま、利用できる便利なルールならなんでもいいか。っと、皆入り終えたみたいだな。俺達も入ろう」


 雑談をしていると全員レモン空間に移動したみたいなので俺達も移動し、食堂を目指した。

 そして食堂へと着くと長老と一緒の席へと着き、ダンジョン攻略について話し合いながらご飯を食べ始めた。


 ・

 ・

 ・


 翌日、ダンジョンルールに守られたおかげでゆっくりと休むことが出来た俺達はダンジョン攻略を再開し始めたのだが、次の階層へと降りてすぐ、警戒を強める事となった。


「うわっ・・・これは凄いな・・・」


「ゴブ。一面罠の反応ですゴブ」


 俺達はダンジョン攻略の際は予め長老に罠発見の魔法をかけてもらっているのだが、その魔法が床や天井にびっしりと詰められた罠の存在を知らせていたのだ。


「んー、ここでは斥候を偵察に出すのも危険そうだから、みんなで固まって行こう。俺も先頭付近に居る事にするわ」


「解りましたゴブ」


 罠だらけなので皆をレモン空間へと入れて進もうかとも思ったが、これも訓練だと思いそのまま進む事にした。

 だがこの状況で魔物が襲ってくるとデンジャラスすぎるので、俺は先頭へ立つことにした。


「よし、慎重に進もう。ごぶ蔵!お前は特にだぞ!」


「ごぶ?」


 万が一罠を作動させると危険なので俺達はこれまで以上に慎重になり、そろりそろりとダンジョンを進んでいく。

 そうやってゆっくりとだが、長老の魔法のお陰で順調にかつ確実に進んでいると、前方に明らかに罠と思える地形が現れた。


 現れたのだが・・・


「んん?特に罠は無いっぽい?」


「だね。見た感じ絶対降りた瞬間何かあるだろって感じなのにね」


 今俺達の目の前にある地形は底も見えている緩やかな下り坂なのだが、今までずっと平坦だった道にいきなり下り坂があるのだ。これは完全に何かあると思うだろう。


「見えない向こう側から罠が落ちて来るとかか?んー・・・」


「ゴブ、どうしましたゴブ?」


 俺達があーだこーだ言っていると移動が止まっている事について長老が聞きに来たので、長老にもこの罠っぽい地形についてどう思うか聞いてみる事にした。

 長老は緩やかな坂を見ながらゴブゴブと唸っていたのだが、何かに気付いた様子を見せた。


「あそこに松明らしき何かがありますゴブ。あれが何か関係していたりしますゴブ?」


「あ、あんな所に松明があったのか」


「気づかなかったね?」


 その松明はよく見ないと解らない様に細工がしてあり、俺達はまんまとそれに引っかかっていた様だ。

 だが長老が上手く見つけてくれたので、俺はこれで突破口が開けると思い松明に『鑑定』をかける事にした。


「ああ。どれどれ、『鑑定』っと」



『迷宮施設:松明

 ・燃え尽きない松明。火が消えても自動的に点火する。破壊・取り外し不可』



 結果、唯の松明でした。・・・いや、燃え尽きないとか唯の松明と言えるかは解らないが。


「んんー・・・エペシュたん、ちょっと降りてくれる?」


「うん。・・・どうしたの?」


 このままでは埒が明かないと思った俺は単騎で突っ込む事を覚悟した。俺ならばvitやagiのステータスも高いし『守護の壁』もあるしどうにかなると思ったからだ。


「ちょっとイって来るわ」



 俺は自分に『守護の壁』を使い、その緩やかな坂道へと歩き出した。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「一狼さん、それ死亡フラグでは?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 長老が フラグをクラッシュしてくれます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る