第156話 変わったダンジョンとわんちゃん
思えば疑惑は多々あった。
それは斥候のゴブリン達には発動しなかった釣り天井の罠が本隊へと落ちて来た事だったり、2,3種の魔物が徒党を組んで連携して来たりと色々だ。
だがしかし、俺はそれを『罠設置が上手い』や『そんな事が出来る様に予め仕込んであったのか』位にしか思わなかった。
「だけどさ、あれらの罠や戦法ってリアルタイムで監視して指示を出しているんじゃないかって、そう思ったんだ。大変だろうがやって出来ない事は無いし、上手くダンジョンを活用できる奴ならそっちの方が撃退はたやすいだろうからな」
「ゴブ・・・すると先程の襲撃も、儂等がご飯を食べだすタイミングで気が緩むと思い仕掛けて来たと・・・そういう訳ですゴブ?」
「多分だけどな」
食事や休憩は気が緩みがちになるので、奇襲をかけるならば最適のタイミングである事は間違いない。もし監視してリアルタイムでダンジョンを動かす転生者が居るなら狙ってくるのは当然だろう。
「ここからはそれを踏まえて進む事にしよう。隙をついて来たり罠に誘導して来たりするかもしれないからな」
「ゴブ。より一層皆の気を引き締めさせますゴブ」
「ああ、頼んだ」
元より長老は慎重派なので基本的には今まで通り進んでいたら大丈夫な筈だ。そして俺も転生者が居るかもと気が付いたので警戒を密にする、そうすれば大体の罠が防げるだろう。
「っと、話していたら食べ終わるの俺達が最後になってたな」
「ゴブ。ドロップアイテムも拾ったみたいですし、出発しましょうゴブ」
「ああ」
ご飯を食べる途中で喋り出してしまったので、気が付いたら既に他の皆は出発準備が終わっておりドロップアイテムもごぶ蔵が収納してくれていたみたいだったので、俺達は休憩を終わらせ出発する事にした。
そうして先程話した様に慎重に進んでいると、今度は逆にぱったりと敵が現れなくなってしまった。
「敵が消えましたゴブ・・・」
「だな?俺のスキルにも反応が無いし、見逃してるわけでもなさそうだし」
「先程の儂等の会話を聞いて戦力でも集中させているのかも知れませんゴブ」
「いや、会話は聞こえない筈・・・あ、でも雰囲気で察せられたのかもしれないか」
「ゴブ・・・」
敵が来なくなったことを不思議がり長老と話しながら進んでいたのだが、その間もずっと敵は現れなかった。
罠は相変わらずぽつぽつとあったので、釣り天井もあった事から床だけでなく天井まで注意して進んでいると、遂に敵が現れないままボス部屋っぽい場所を発見したとの報告が入った。
「ごぶ!長老!ボスの部屋っぽいの見つけたごぶ!」
「解ったゴブ!・・・との事です一狼様」
「ふむ?」
しかし俺は頭にハテナマークを飛ばしながら首を捻っていた。それと言うのも俺のスキルにはボスっぽい魔物の反応は無かったからだ。
「報告して来たって事はそこまで離れていない筈だよなぁ・・・ん~・・・取りあえず扉前まで行ってみるか。・・・おーい」
俺は長老に断り、一足先にそのボス部屋っぽい所を見に行ってみる事にした。
報告をしてきた斥候に案内を頼んで通路を進むと、予想通りに割と近くにその場所はあった。
「ありがとさん」
「ごぶ!」
「確かにボス部屋っぽいね?」
「だなぁ?でもやっぱり『索敵』には反応が無いんだよな」
案内してくれた斥候に礼を言った後にスキルを使ってじっくりと探ってみるも、やはり結果は反応なし。
だが迂闊に開けるわけにもいかないので長老を待ちつつ扉に『鑑定』をかけたりしていると、背中の上のエペシュがいきなり『あ』と声を上げた。
「ん?どうしたんだ?」
「そういえばダンジョンでボス部屋にボスが居ないのって聞いた事あったの思い出した」
「ダにィ!?知っているのかエペデン!」
「???」
「・・・何でもない。で、それ教えてくれる?」
「うん」
ついついネタ的な聞き方をしたがポカーンとされてしまった。・・・おーまいごっど。
「えっと、たしか仕掛けだらけのダンジョンがあって、そこはボス部屋も仕掛けを解いて進むんだって」
「へぇ~・・・そんなダンジョン作る奴もいるんだな」
「うむ。一時期そんな迷宮が流行った時もあったのじゃ」
助言NPCニアによると、やって来た転生者がギミックダンジョンを作ったところそれがダンジョン界隈で流行り、一時期ダンジョンはギミックダンジョンが溢れかえったらしい。
しかしこのギミックダンジョン、肝心のギミックがほとんど使い回しだったらしく、攻略法が直ぐに確立してしまい廃れてしまったそうな。
「妾も出来た当初は面白くて通っておったが、どこも同じですぐに飽きたのじゃ」
「初見です、よろしくお願いします。ギミック解らないので教えてください」
「うむ。駄目じゃ。自力で頑張るがよい」
「・・・」
ギミックは教えてくれないらしい。
「初見殺しが無い事を祈るだけか・・・」
出来れば簡単な謎々だったらいいなぁ~なんて考えていると、本隊が到着したので長老に先程の話を教えて情報を共有した。
長老もダンジョンには縁が無かったのでそれは初耳だったらしく、そんなダンジョンもあるんだなと頷いていた。
「ゴブ。それでは入りますゴブ?」
「仕掛け部屋ってのも予想だから、一応警戒して扉を開けて様子見しよう」
何があるのか解らないので慎重になって損はない。
俺達は注意しながらソロソロと扉を開けて部屋の中を覗き込み、罠等が無いかを調べてから恐る恐る部屋の中へと入った。
幸いにも部屋の中に罠は無く、有ったのは次の階へ行くための階段に続く扉と仕掛けのみだった。
取りあえず俺(エペシュ付き)と長老(ウルフ付き)のみでその仕掛けを確認する事にした。
「ふむ?これが仕掛けか」
「ゴブ」
そこにあったのは天秤の様なモノが1つと、○が1~8個書いてある金属の様なモノ、それに看板だった。
「多分この看板がルールというか説明なんだろう。・・・どれどれ」
看板を見てみると文字ではなく絵が描いてあった。恐らくこれは『字が書いてあった所で読めない可能性の方が多いんじゃね?』とでも思ったのだろう。
「んー、多分だけど・・・金属の様なモノは錘で、○は錘の重さを表しているみたいだな。1を基準として1個分の重さから8個分の重さ、みたいな。それでその錘全部を使って天秤を水平にしろ、かな?」
「ゴブ。儂にもそう思えますゴブ。後ここに書いてあるのは、正解したら階段に続く扉が開き失敗したら・・・爆発ですゴブ?」
「・・・多分?ってペナルティやばいな」
笑い顔の横には階段の絵が描いてあったのだが、泣き顔の絵の横には爆発したみたいな絵が描いてあるので、爆発はしないにしろあまり良くない事が起こるのは確かなのだろう。
「ま、と言ってもこんなのはイージーすぎる。余裕しゃくしゃくだわ」
「速い・・・ちょっと待って、計算する。えっと・・・1と3で4。2と4で6・・・・」
俺の上でエペシュがブツブツ言いながら計算しだしたので、少し待つ事にしたのだが長老はどうやらもう計算し終わって答えが出たらしい。
エペシュはどれくらいで終わるかなーなんて考えていると・・・奴がやって来た。
「ごぶ?」
そう、ごぶ蔵だ。
俺はごぶ蔵の進路をふさぐように立ちはだかり、天秤と錘に近づけないようにした。・・・だって、絶対コイツはやらかすから。
「待てごぶ蔵、それ以上近づくんじゃぁなぁい」
「何でごぶ?」
「何でもだ!とにかく近づくんじゃぁなぁい」
「ごぶもあれやってみたいごぶ!」
やはりやらかす気だった様だ。
「いや、出来ないだろ?あれ、簡単だが計算するんだぞ?」
「余裕ごぶ!・・・ごぶ・・・ごぶごぶ」
何故そんなに自信があるのか解らないが、ごぶ蔵は余裕と言った後に看板を見てからゴブゴブ言い出した。・・・計算しているのだろうか?
まぁ計算するだけなら何も起こらないし、エペシュが計算し終わるまで待ってみるかと思っていると・・・いきなりごぶ蔵が手を上げた。
「解ったごぶ!」
「え?マジ?」
「ごぶ!」
意外や意外、どうやらごぶ蔵はエペシュより先に計算を解いた様だ。
「んじゃあどうするか説明してみ?あ、実物には触らせないからな?」
「ごぶ!先ずは・・・」
さぁ・・・ごぶ蔵の答えはあっているのだろうか・・・乞うご期待!
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「ごぶ蔵さん天才なの?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が 答えを教えてくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532
お詫び:ギミックの説明を微修正 2022/7/10
「んー、多分だけど・・・○は錘で1~8はそれぞれ重さを現している。それでその錘全部を使って天秤を水平にしろって事かな?」→「んー、多分だけど・・・金属の様なモノは錘で、○は錘の重さを表しているみたいだな。1を基準として1個分の重さから8個分の重さ、みたいな。それでその錘全部を使って天秤を水平にしろ、かな?」
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