第154話 一味違うダンジョンとわんちゃん
どうもこんにちは。英気を養おうとしたら『そのような助平と一緒に風呂は危険なのじゃ』と言われ一緒にお風呂に入れなかった獣です。
「実は偶に一緒に入ったりしているんですがね。フヒヒ、サーセン」
「またいきなり変な事を喋り始めおったのじゃ」
「一狼は頭がやばい奴ごぶ」
「おまいう!だが確かに今言う事でもないな、集中しよう」
英気を養う事に失敗した翌日、俺達は予定通り獣系ダンジョンへと赴いていた。
「陣形、自分の役割は覚えてるゴブ!?」
「「「ごぶごぶ!」」」
「体調や装備も大丈夫ゴブ!?ちょっとでも怪しければ言うゴブ!」
「「「ごぶごぶ!」」」
「村長!俺のこん棒ヒビが入ってるごぶ!」
そして現在はダンジョン前にて侵入前の最終チェック中なのだが、長老にまかせっきりでもよくないので俺も手伝うとしよう。
「ヒビ入ってる奴は預かるわ。んでこれ新しい奴」
「ありがとごぶ!」
そこからは俺も真面目に準備を手伝い、それが終わったらいよいよ攻略開始!・・・なのだが、こういう時の恒例である挨拶が始まった。
「問題なさそうだから出発するゴブ!言ったと思うが、今回の敵は恐らく素早いのでそこに注意ゴブ!」
「「「ごぶごぶ!」」」
「では偵察役前へゴブ!出発ゴブ!」
「「「ごぶごぶ!!」」」
「おー!」
「うっし、やってやるぜ!」
「何やら長老がボスみたいになっておるがいいのかえ?」
「・・・適役だし・・・うん」
普通だとこういう時の挨拶はボスである俺がするべきなのだろうが、極々自然に長老が話し始めたので、俺も『やってやるぜ!』とか言ってしまっていた。・・・流石長老だぜ。
「ま、結果的に士気も上がったみたいだしいいだろう。それにこのまま長老にリーダー役をこなしていってもらえれば、後々で俺も助かるしな」
その内俺とエペシュ抜きで何かをしてもらう事もあるかも知れないので、どうせならばここら一帯の攻略指揮を長老に任せてしまってもいいかも、なんて俺は思ったので、後で長老に相談してみようと心にメモをする。
そうしている内に皆ダンジョンへ入ったみたいなので、俺達もそれに続いてダンジョン内へと侵入した。
「1階層はスタンダートな洞窟タイプか。何かそういうルールでもあるんかね?」
「様式美というやつじゃろう。今まで妾が見てきたダンジョンも9割方1階層は洞窟だったのじゃ」
「へぇ~」
「うんうん。ダンジョンと言ったらやっぱり洞窟!エルフ的にもそう思う!」
「ダンジョンを知っている大体の共通認識なのかね・・・ん?」
流石に入口からは何もないだろうとダンジョンの批評何かをしていたのだが、どうやら先頭はいきなり敵に出会ったらしく、ウルフ達の声が響いていた。
「珍しいな」
「まぁそういう時もあるじゃろう」
「まぁそうか。念のため見てみるか」
出て来る魔物は4足歩行の獣系だとは言ったが、どんなものかと気になったので俺は見に行く事にした。
だが先頭の方へと近づくと、既に戦闘は終わってしまっていた。
「あらら・・・はやいな」
「ゴブ?出て来たのは唯のウルフでしたから大して強くありませんでしたゴブ」
「そっか」
出て来たのはウルフだった様だが、こちらの歴戦?のウルフ軍団の足元にも及ばない、そんな強さだった様だ。
「ゴブ。しかし入って直ぐに敵が出たという事は、このダンジョンも敵の数が多いのかもしれませんゴブ」
「あー、それはあるかもな。でも俺達にとっては美味しい状況かもしれないな」
「ゴブ。確かに今の儂等ですと、『弱い敵を大量に』が一番おいしい状況ですからゴブ」
「大量過ぎると死ねるがな」
所感を言い合っているとドロップアイテムの回収や被害状況の確認が終わったようなので、俺達は隊列を整え再び歩き出した。
「取りあえず俺は前方にいるな長老」
「解りましたゴブ」
俺のポジションはフリー・・・所謂遊撃と呼ばれる位置に付いていたのだが、出て来る敵が知りたかった事もあり前方の方に居る事にした。『索敵』も持っているので敵の有無も斥候より早く解るのだが、全部俺がやっていては身にならない為黙っているつもり・・・だったのだが・・・
「んん?んー・・・流石にこれは・・・おーい、ちょっとストップだ!」
「「「ごぶ?」」」
「ちょっと待っててくれ」
ちょっと手を出した方が良いかも知れない。そんな敵の状態に気付いてしまったので俺は本隊から少し先で斥候している者達の元へと向かった。
「・・・ちょっと話がある」
「「ごぶっ!?」」
「「グルッ!?」」
「あ、すまん。俺だ俺」
そうです、オレオレ詐欺です。・・・じゃなくて、斥候のゴブリン達に近づいたら吃驚されてしまったので俺だとアピールしたのだ。・・・別にスキルとか使ってなかったんだがなぁ。
「ちょっと話があるから近寄ってくれ」
余り大声で喋っていると敵にばれてしまうので、斥候のゴブリン達を呼び寄せてひそひそ声で喋りかける。
「この先恐らく道が二手ないし三手位に分かれていると思うんだが、そこをめっちゃ気を付けて見て来てくれないか?」
俺がそういうと斥候のゴブリン達は頭にハテナマークを飛ばしていたが、素直な彼らは理由も聞く事無く実行する事にした様だった。
危ないかも知れないので俺もこっそりと付いて行き、彼らの様子を見守る。
(今のところ大丈夫そうだな。・・・あ、そこの先だぞ・・・よしよし、気づいたみたいだな)
斥候のゴブリン達が俺の気付いた敵に気付いたみたいなので、俺は目線で『長老の所へ戻ろう』と促す。同じく彼らも目線で『了解』と返してきたので、俺達は静かに道を戻り出した。
(ふぅ・・・待ち伏せだなんて・・・小癪な手を使いやがるな)
そう、俺が斥候より早く気づいた状況とは待ち伏せだったのだ。俺はチラリと突き当りのT字路を見て、鼻息をフンフンと荒げた。
(まさかダンジョンの魔物がそんな作戦を取って来るとは・・・『守護者』の入れ知恵か?そんなことしてくる・・・むっ!?)
「気づかれてないと思ったけど気づかれたっぽいな。おい!全力で戻るぞっ!」
待ち伏せについて考えていると俺の『索敵』が敵の動きを察知したので、俺は斥候達に声をかけて走り出した。
別に俺が一気に片付けてもいいのだが、それをすると折角のゴブリン達の貴重な成長チャンスを潰してしまうのでそれはしないことにした。それに初戦でこちらのスペックの方が勝っていると解っていたので大丈夫だとも思ったのだ。
「走る速度もこちらが早いから大丈夫そうだな。ん、本隊が見えてきた。お前達、皆に敵が来ることを知らせながら長老に報告だ!急げ!でも焦るな!」
「「ごぶ!」」
そうこうしている内に本隊と合流出来たので、俺は斥候達に指示した後一応先頭にて伝達が間に合わなかったときの為に待機した。
しかしそれは無用の心配だったらしく、速攻で皆動き出したり長老の指示が飛んだりしていた。
俺は余裕かと思っていたダンジョン攻略だったが、どうやらそうでもなさそうだ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「ぐうケダモノ」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が 一緒にお風呂に入った時の事を詳細に語ってくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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