第152話 植物ダンジョンでボス戦のわんちゃん

「動いたっ!先ずは様子見でいくぞっ!」


「解ったっ!」


 動き出した敵の対処に、俺は先ず様子見を選んだ。流石にイケイケドンドンで突っ込むのは無謀だと思ったからだ。


(さぁ・・・どんな攻撃をしてくる・・・って、鑑定してなかったっ!)


 究極の様子見である『鑑定』様を使っていなかったことを思い出し、俺は慌てて敵のステータスを確認する。



 名前:ド・ガガ

 種族:ウッドドルイド

 年齢:-

 レベル:12

 str:83+50

 vit:205+50

 agi:139+50

 dex:288+50

 int:353+50

 luk:86+50

 スキル:樹魔法 水魔法 補助魔法 棒術 硬化 眷族召喚

 ユニークスキル:

 称号:迷宮『ウッドパレス』の守護者



「・・・んん?」


 俺は初っ端からトップスピードで動く気満々だった体の力を緩やかに抜き、7割程度の速度を出すつもりで体に力を入れて動いた。


「・・・エペシュ、奴を拘束するような感じで風魔法とかって使える?」


「やってみる!風よ集いて檻となせ!ウィンドプリズン!」


 そして相手の側面へと移動しつつエペシュにお願いをして魔法を使ってもらい、そこへ更に俺が『火魔法』をぶち込んだ。


「恥ぜよ爆炎、絡みつき燃やしつくせ『ナパーム』。エペシュ、そのまま風の維持を頼む」


「解った!」


 あの変態転生者のダンジョン内でやっていた合体魔法みたいな事を今回は分担してやってみたのだが上手くいっているみたいで、炎の柱は敵を燃やし続けていた。

 俺は何があっても動けるようにし、一応防御も固めておくかと『守護の壁』も使っておく。

 そうしてそのまま見張っていると、敵の方からのリアクションがあった。


『ギギッ・・・!』


 多分だが持っていた『樹魔法』だろう、いつぞや見たエペシュの魔法みたいに木の根っこみたいなものが此方へと迫って来た。

 俺はそれを魔法を維持したままのエペシュを気遣いながら避けるのだが・・・余裕であった。


「・・・ステータス差が酷いからか?敵の魔法がおっそいな」


「私の加護の影響もあるかも」


「加護っていうと、世界樹の加護とかいうやつか?」


「うん。世界樹って樹の王様みたいなものだから、同じ様に加護を持っていないと、そいつからの樹系統の攻撃は弱くなる」


 唯の称号だとばかり思っていたのだがそういう効果があるらしい。

 と、そうやって話しているといきなり敵の攻撃がパタッと止んだので、俺もエペシュに言って攻撃を止めてもらう。

 するとだ・・・


「居ない。倒した?」


「多分だけどな。あ、『樹魔法』で探ったり出来るか?」


「あ、そうだね。やってみる」


 敵の姿は消えていて、エペシュにも魔法で探ってもらったが反応は見当たらなかった。という事は、倒したようで間違いなさそうだ。


「まぁ、何となく解っていたけど余裕だったな」


 キメラドールの件もあったので、決して『オゥ、ベリーイージーネ!』と思っていたわけではないが、ステータスを確認した時に守護者の補正値からしてあまりヤバイダンジョンではないと思っていたが、その認識で間違いなかったみたいだ。


 俺達がふぅと息を吐いていると、後ろで見ていた長老達が入って来て話しかけて来た。


「終わったのですゴブ?」


「ああ長老、終わった。ダンジョンの様子からしてそうだったが、比較的ここは未成熟のダンジョンだったらしく、最後の砦である守護者も弱かったみたいだ」


「成程ですゴブ」


 ゴブリン達ももう大丈夫だと聞いてほっとしたみたいで、先程まで比較的きりっとしていた表情がみるみるゆるゆるした表情へと変わっていった。

 しかしここは一応未だダンジョン内、だから『まだ完全に気を抜かない様に!』と注意をしたのだが、一度弛緩した空気は戻らなかった。


「んん・・・これは・・・ってまぁ仕方がないか。このダンジョン入ってから緊張しっぱなしだろうしな。・・・よし、おーい皆!後はもう大丈夫だからレモン空間へ入っていてくれ!」


 皆の気が緩む理由も解るので、俺は先にゴブリン達をレモン空間へと送る事にした。


「儂は残らせていただきますゴブ。ごぶ蔵!皆を頼むゴブ」


 しかし長老だけは残ると言ってくれ、ごぶ蔵に皆を任せる様に頼んでいた。俺もごぶ蔵に今日はもうご飯を振る舞って休んでくれとだけ言ってレモン空間への道を開いて送り出す事にした。


「じゃあ先に帰ってるごぶ!一狼達のご飯も用意しとくごぶ!」


「ああ、頼んだ。また後でな皆」


「「「ごぶご~ぶ~」」」


 そうして皆を送り出した後は勿論・・・


「よし、じゃあコアルームに乗り込むぞ!」


 このダンジョンの要であるコアルームへの侵入だ!


 俺は皆に声をかけた後、入口と反対にあった道を進んだ。するとさほど時間もかからずコアルームへと辿り着いた。


「ふーん・・・お、あったな」


 コアルームは何処もさほど変わりがないようで、ダンジョンコアが中心に置いてあるシンプルな石造りの空間であった。

 コアルームに入ってもダンジョンコアにしか用が無いため、俺は速攻ダンジョンコアの所へと近づいて行き声をかけた。


「今までの法則からすると・・・おい、ウッドパレス。勝手に侵入して来てすまんが、お前を頂いて行く。因みに文句は受け付けない」


 俺がそういうとウッドパレスはチカチカと光った後にコアへと文字を浮かび上がらせた。・・・どうやら未だ喋る段階にも育っていないらしい。


『観念。好きにしてください』


「潔いな・・・」


「迷宮核はあまりあがく事はせんからの。潔いというより自分の命?に執着せんのじゃろう」


「成程な」


「本能としては『自分を守り他を侵略する』というモノを持っておるのにの、不思議なモノじゃ」


「価値観の違いってやつじゃないか?ダンジョンコアって俺達みたいな生物とは根本的に違いそうだし」


 ダンジョンコアはAIみたいなモノだろうからモノの考え方がかなり特殊なんだろう。・・・多分。

 不思議な物体の事を考えても答えは出ないだろうと思ったので、俺はサクサク物事を進める事にした。


「んじゃ、回収っと。・・・って、あ、レモン空間に入れちゃった」


 そーれ回収っとレモン空間にダンジョンコアを放り込んだ後で気が付いたのだが、今の俺のレモン空間の中は大分特殊だ。なのに気軽に新しいダンジョンコアを放り込んでしまったのだが・・・大丈夫だろうか?


「大丈夫じゃないかもしれんな・・・さっさと様子見なきゃ。って・・・あ」


 更に大丈夫じゃない事に、俺がダンジョンコアをレモン空間に入れたことによりダンジョンからコアを持ちだした判定になってしまったらしく、ダンジョンの崩壊が始まってしまったみたいだ。・・・といっても、直ぐに崩れるわけじゃないのだが。


「あらまぁ~・・・あ、そうじゃん。皆、レモン空間に入ってくれ。早速新機能の設置した出入り口にワープ使うわ」


 やっちまった!と思ったが、直ぐに新機能を思い出した俺はそれでダンジョンを脱出する事にした。ユニークスキル様様だな!


(まぁ普通のアイテムボックスならダンジョンコアは収納出来ない筈だから、このスキルの所為だとも言えるんだがな・・・っと)


 全員がレモン空間へと入り終わったようなので、俺は念の為誰も残っていないか周囲を軽くチェックした後レモン空間へと入りダンジョンを後にした。



 こうして俺達のダンジョン攻略は成功という結果を残し終了となった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「弱い(確信)」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ウッドドルイドが 強くなって再登場・・・するかもしれません。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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