第148話 1級建築士とわんちゃん

 それは何の変哲もない町だった。


「何で町がここに・・・?」


「ふむ?変わった町じゃの?」


「え?」


「ん?」


 何の変哲もない?町だった。


「え?どこが変わってるんだ?」


「例えばじゃが・・・大体2階建てでおかしな屋根をしておったり、道が全て石?で出来ておる所かの」


「んん?・・・あ・・・あぁ~」


 ここで漸く俺はニアが変わっている町といった意味が解った。


「屋根は瓦・・・石を平べったくしたものを重ねてある物で、道路はアスファルト・・・まぁ石みたいなモノか、どちらも俺の前世で一般的な家や道路だな」


「ほぉ?」


「まぁそれによって余計にあんな町がある意味が解らなくなったが・・・」


 ニアへと解っている事だけ説明してみるのだが、何故レモン空間に地球の日本式家屋があるのかはさっぱり解らなかった。

 しかしここで考えていても仕方ないと考え、取りあえず近づいてみようと町の中に足を踏み入れると・・・ある一軒の建物が目立っていることに気付いた。


「・・・んん?なんだあれ・・・バルーン?」


「あの建物だけは3階建てのようじゃの?」


 周りが2階建ての家ばかりに対してその建物だけは3階建てで、更にデパートで偶にある様なバルーンもつけてあったのでその建物は異様に目立っていた。

 その建物が明らか様に怪しかったので『何かあるだろう』、そう考えた俺達はその建物へと向かってみた。


「ん?おーい!」


「「「ごぶ?」」」


 するとその建物の近くに数人のゴブリンを見つけたので、俺は彼らを呼び止めて話を聞いてみる事にした。

 しかしだ、俺がここはなんだ?どうしてこんな町が?と質問をすると、彼らは皆して『ごぶ』とあの建物を指さすのだ。


「いや、流石にそれだけじゃ解らん」


「ごぶごぶ。あのばしょにいるやつがしってるごぶ。おれたちも『あたらしいすみかができた!』ってきいたのと、『せつめいするからあつまれ!』っていわれただけごぶ」


 流石の俺もそれだけでは解らなかったのでもうちょっと詳しく話してくれと頼むと、どうやらあの建物に全てを知る人物が居るらしい。

 ここで俺はその人物についての心当たりが出て来るのだが、容疑者は2人いた為判別がつかなかった。


「俺もどうやらあそこに行かなくちゃいけないみたいだな。・・・まぁ元から行くつもりではあったが」


 サッサと行って犯人に事情を聞いてみよう、そう考えた俺はそのゴブリン達と連れ経って3階建ての建物の中へと入った。

 すると俺達を出迎えたのは・・・


「いらっしゃいませごぶ。案内するごぶ」


 ウェイターだった。・・・正確にはウェイター風の恰好をしたゴブリンだが。


「一狼様とニア様はこっちごぶ。お前達は・・・ごーぶ!誰かこいつらを案内してあげてごぶ!」


「ごぶ!俺が案内するごぶ」


 どうやら俺達とあのゴブリン達では通す席が別なのかそこでお別れとなった。といってもこの店はまだ内装は出来ていないらしく、すこし離れた位置ってだけなのだが。

 まぁ何かあるのだろうとそのままウェイターゴブリンの後をついて行くと、その先には長老とエペシュが座っていた。


「長老、エペシュただいま」


「お帰りなさいゴブ」


「お帰り」


「うむ」


 ウェイターゴブリンに促されるまま席に着いた後、俺は容疑者の1人であった長老へと話しかけた。


「これってごぶ蔵がやった?」


「・・・そうですゴブ。ダンジョン機能についてはごぶ蔵に権限は渡していなかった筈なのですが・・・ゴブ・・・」


「一狼のスキルと合体した事で許可なしでも使える様になったかもしれんのじゃ。ごぶ蔵じゃし」


「ありうるな・・・」


 はんにんはちーとごぶりんでした まる


 そんなアホな事を考えてしまったが、そのチート疑惑が出て来たごぶ蔵は何処にいるのだろうかと俺は長老に聞いてみる。

 すると、全員が来た後料理を出してから説明がある、だそうだ。


「む?どうやらもうすぐのようじゃぞ?料理が運ばれてきたのじゃ」


「なら待つか・・・」


 今すぐに聞きに行くべきかと思ったのだが、もう料理が運ばれてきたので大人しく待つことにする事に。

 そうすると料理が配られ終えたタイミングでごぶ蔵が登場し喋り始めた。


「お集まりいただきありがとうごぶ!料理を食べながらで良いのでごぶの話を聞くごぶ!」


 そのごぶ蔵の言葉にゴブリン達はご飯を食べ始めたのだが、俺と長老だけは食べ始めずにごぶ蔵の話に耳を傾けた。


「今日の朝に一狼のスキルが進化したごぶ。それで色々出来る様になったのでこの町をつくったごぶ。家も一杯作ったから、後で適当に選んで住んでほしいごぶ」


 俺は矢張りかと思いつつ、話の続きを待つ。


「あの家は一狼の知識を借りて便利なように作ってあるごぶ。だから家に入ったら聞こえる筈の説明をよく聞いて使うごぶ。それでも解らなかったり何かあったらこの建物の2階の事務所、もしくは3階の部屋へ聞きに来るごぶ。誰かいる人が対応してくれるはずごぶ」


「なんかごぶ蔵も微妙に賢くなったな」


「ごぶ蔵は元からやれば出来る子だったのですゴブ」


「やるかどうかは別として・・・か」


「ゴブ」


 確かにごぶ蔵は偶に才能を発揮するので何となく納得だが、あいつ・・・癖がつよすぎるんじゃぁ・・・


「説明終わったからごぶもご飯食べるごぶ」


 ごぶ蔵の癖強ポイントを思い出していると本人が俺達のテーブルへとやって来た。その時ごぶ蔵は『一仕事終えたわー』みたいな顔をしながらイスへと座ったのだが、まだ終わってないぞごぶ蔵よ。


「いやいや、まだ説明は終わっとらんわ」


「ごぶ?あ、このテーブルに座っている人達の家はここの3階ごぶ」


「そうか・・・ってそれはどうでもよくは無いがどうでもいい。それよりも、この町についてもうちょっと詳しく聞かせてもらおうかごぶ蔵さんよぉ?」


「ごぶ?解ったごぶ。食べながら話すごぶ」


 そういった後ごぶ蔵はご飯をもぐもぐし始めたので、俺と長老ももぐもぐしながら話を聞くことにした。

 そしてその際聞いたことをまとめてみると・・・


 ○何で作った?→森より住みやすそうだったから。

 ○どうやって作った→スラミーのダンジョン機能でちょいちょいと。

 ○権限与えてない筈だけど?→権限?何それ美味しいの?

 ○俺の知識を借りて家を作ったとは?→一狼のモノはごぶのモノ、ごぶのモノはごぶのモノ。という事で一狼の記憶を見て便利そうな家を作った。因みに借りた知識で家電製品を模して家魔製品(龍脈接続しなければその内使えなくなるのでお早めに接続するべし)というモノも作ってみた。

 ○何故俺や長老に相談せずに作った?→てへぺろごぶ。


 だそうだ。


「・・・はぁ、まぁ今更言ってもあれだしいいけど・・・次からは相談してからやってくれ」


「ごぶ!」


「・・・」


 皆の為にもなったのでやんわりとそういうと、絶対解っていない様な返事が帰って来たが・・・まぁ許しておいてやろう。


「あ、そういえば鍛冶屋も作ったごぶ」


「鍛冶屋?」


「スラミーのおかげで鉄製品が出せる様になったごぶ。でも自分達で鉄から作れば経費削減になるらしいごぶ。だから作ったごぶ」


「成程」


 どうやら本当の町の様に色々施設もつくったらしいので、後で確認しておこうと考えたのだが・・・俺のレモン空間、何でもできてヤバ過ぎない?


「ユニークスキルだけはあるな・・・」


「うむ。果てが見えない空間を自由に弄れる。ある意味世界創造じゃの」


「いや・・・そこまで大それてはないだろう」


 ニアがいう事は大げさだが、国を手に入れた様なモノではあるので凄い事ではある。最近嫌なことがあったばかりだが良い事もあるモノだと気分が良くなった俺は、ご飯を食べ終わった後もルンルン気分だった。

 その為、本当ならもうちょっとごぶ蔵に問い詰めたりするところだったのだが俺はそれをせず、3階にあるという部屋へと向かって休むことにした。


「おぉー。何か高級なマンションみたい」


「何か凄い」


 同じくもう休むというエペシュと共に3階へ来たのだが、3階は高級なマンションみたいになっており、幾つかの部屋や大きな共有スペース等があった。

 ごぶ蔵曰く、部屋はどこも同じ作りだから好きな所を自分の部屋にしていいとの事だったので、俺はエペシュの隣の部屋を選んだ。・・・いや、ちょっとでも近い方があれじゃん?


「じゃあお休みエペシュ」


「うん。おやすみ」


 エペシュに挨拶をしてから部屋に入ると、そこはいたって普通の部屋だった。一応家具がいくつかおいてあったが、俺が使うのはベット位だろう。


「まぁ犬だし。机とかクローゼットとかあっても使い道無いわ。あー、一応シェイプシフトしておけば使えん事ないな。折角の近代風の家だし、偶にだけど人間体にもなるか」


 一通り部屋の中を見た後にベットへと上り、明日も走らなきゃいけないので寝ようと思ったその時・・・事件は起こった。


『ドゴォッ!』


「なんだっ!?」


 いきなり大きな音がしたのだ。どうやらそれは壁の方からしたみたいで、その証拠に壁に異常が起きていた。


 穴が開いていたのだ。


 そしてその穴からは・・・エペシュが見えた。


「あ・・・ごめん」


「お・・・おぅ。何があったんだ?」


「触ってたら壊れた・・・」


「そ・・・そう」


 どうやら壁に穴が開いたのは隣の部屋に入ったエペシュが開けたらしい。・・・っていうかそんなことある?


「ごめんね?」


「まぁ・・・うん。・・・あ、でもあれか一応ダンジョンのあれだからなお・・・っは!?」


 この部屋はダンジョンの機能を使ってごぶ蔵が作ったモノ。ならば同じようにダンジョンの機能を使えば直るんじゃないかと考えた俺だが、久々に天才的発想が頭に閃いた。というか思い至った。


「うん、仕方ないから穴はこのまま、いやもういっそのこと壁を壊して行き来出来る様にしよう」


「もっとこの穴広げるの?」


「そうそう。まぁあれよ、こうなったら仕方がないから2部屋を1部屋みたいな扱いにして、俺とエペシュの部屋にしようそうしよう」


「いいの?」


「いいよ、いいさ、いいともさ。そう決まったところで、取りあえず今日はもう寝よう。さぁエペシュたん、こっちへおいで。一緒に寝よう」


「うん?わかった」


 俺はエペシュを俺のベットへと誘い一緒に寝ころんだ。すると俺のモフモフにやられたのか、エペシュは直ぐに寝息を立て始める。


「っふ・・・始まったわ俺のラブコメ」


 俺はエペシュの寝顔を見ながらニヤリとして呟いた後、エペシュの体に鼻をくっつけて寝始めた。


 ・・・そうさ、俺の天才的発想というか思い立った事実というのは『この展開、ラブコメあるあるじゃね?ならするしかないだろう、俺とエペシュたんのラブコメを!』ということだ。

 だってそうじゃないか!?『壁触ったら壊しちゃった(にっこり』とかそんなラブコメフラグ普通無いやろ!?そうやろ!?



 という事で・・・俺とエペシュたんのラブコメ始まります?



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

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