第146話 残念無念のわんちゃん

「ふぅ~・・・漸く帰って来たって感じだ」


【お帰りなさい】


「ただいまスラミー。特に異常とか無かったか?」


【はい。ありません】


 ある時考え付いたウルフ捕獲計画の為に魔境地帯を離れていた俺達は、無事魔境地帯へ帰ってくることが出来ていた。・・・帰りに魔の森と魔境地帯の間にあった村へ寄って来たので少し時間はかかったが。


「まぁそのお陰でウルフの鞍を作れたからいいんだがな」


「ウルフ程度の動きだとゴブリン達が落とされることはなさそうなのに、あれは必要だったのかや?」


「ないよりはあった方がいいじゃん?長老達も体が安定していいとか言ってたし」


「ふむ」


 村へ寄ってきた理由はウルフに付ける鞍を作るためだったのだが、ニアに『あれ必要だったの?』と聞かれてしまった。

 確かに昔俺が居た元ごぶ助の村でもゴブリンライダー達は鞍無しで乗っていたが、俺的には鞍は絶対あった方がいいと思うんだよね。


「俺も偶にエペシュとか乗せてるから解るんだけど、乗せる方からしてもあった方が安定していいのよ。だから俺用のも作って来たし」


 鞍はついでだからと、俺は自分用のも作って来た。まぁ理由は言った通り偶にエペシュとかを乗せるからである。

 因みにだが、その時に一応ニアにも聞いてはみたが・・・


『まぁ妾の背中は安くないからの』


 と返されたので、ニアの分は作っていない。まぁニアの背中に乗る猛者は居ないので問題ないし、9割方シャレで聞いたので元々作る気もなかったのだが。


「まぁ何はともあれ、これで攻略スピードが上がるだろう。ゴブリン達の武器も鉄の槍にグレードアップしたしさ」


 他にも村でゴブリン達の新武器を見繕ってきたりもした。実は今までゴブリン達はこん棒を使っていたので、大幅な戦力アップになっただろう。


 ・・・とか思っていたのだが、ニアにこんな事を言われてしまった。


「今までこん棒を扱っていたのに、いきなり鉄の槍は果たしてグレードアップになるのか不思議じゃがの。扱いきれず腐らすのがオチではないかや?」


 俺はその言葉を聞いて思ったね。


(・・・確かに!)


 しかし今となっては後の祭り、なので俺はこう言うしかなかった。


「・・・俺は・・・ゴブリン達の無限の可能性を信じるっ!」


「まぁ可能性だけならあるかもしれんの」


「・・・だ・・・だっしょ?」


「上手く扱える確率は0だろうがの」


「・・・む・・・無念でござる・・・」


 ・

 ・

 ・


 と、馬鹿な事を言っていた翌日、俺はスラミーのダンジョンから離れて仮称『トレントダンジョン』へと向かっていた。

 一応言っておくと、先日あれから『練習させれば扱えるようになるじゃろう。じゃから練習させておくのじゃ』と言われたので、レモン空間に練習場を作って練習させている。因みに教官役には『基本の突きくらいは教えれる』との事でエペシュに頼んである。


「まぁ今回は再びこん棒や松明を使った蛮族スタイルでいってもらうか」


「うむ。と言うか正直あの迷宮ならばそちらの方が効果的かも知れんのじゃ」


「それは確かに。まぁ余裕があったら実戦練習でもさせとくわ」


「うむ」


 そんな事を話しているとダンジョン近くまで来たので速度を落として入口を探す。



 ・・・探したのだが。



「あれ?ここら辺の筈なんだが・・・どこだったかな?」


「うむ」


 2,3度来ただけなので入口を上手く見つけられずにいた。よくよく思い出してその記憶を頼りに辺りを探してみたのだが・・・


「あれ?何処だ?全然見つからん」


 それでも見つからず、似た様な地形だから全然違う所と勘違いしているのかと思い周辺を走り回ったのだが、やはり見つからなかった。


「んー?確かここらに会った筈なんだけどなぁ?」


「ふむ・・・む・・・」


 ないない言いながら入口があった筈の場所辺りを前足でペタペタと触っていると、ニアが何かに気付いたのか少し真剣な顔になり・・・衝撃的な事を口にした。


「どうかしたのか?」


「・・・ふむ、どうやら消滅したらしいのじゃ」


「・・・え?」



「消滅したらしいのじゃ。核を抜かれての」



「・・・・・・へ?」


 最初ニアの言ったことの意味が解らずポカーンとしてしまったが、直ぐにその意味を理解し叫んだ。


「ま・・・まじかあああぁぁぁあああ!?!?」


「マ。なのじゃ」


 何で?何時の間に?誰が?と思ってワタワタしていると、ニアがヤレヤレといった感じで口を開いた。


「ま・・・魔境地帯は元より競争が激しいからの、よくある事なのじゃ」


「な・・・成程」


「それにあれじゃ、お主を殺しかけた転生者、あ奴は積極的に迷宮を潰していっておるとか言っておったではないかや?」


「あー・・・」


「ここはさほど離れておらんし、奴が潰しに来たのかもしれんのじゃ」


「ありうるな・・・」


 ニアの言う事を聞いて思い出したがここは多くの迷宮が迷い込む地、よって生存競争も熾烈だろうし、あの転生者もここいらで暴れまわっているので余計に凄いのだろう。

 なので俺はこう考えた。・・・一旦ガッツリと移動するべきなのではないかと!


「あー、でもそうするとスラミー置いてけぼりになるか。・・・留守番させとくのもありか?」


「うん?」


「いやさ、ちょっと考えたんだけど・・・」


 移動について考えていたのだがニアの意見も聞いてみようと考えを話してみた。移動するとスラミーがここに置いてけぼりになる事や、移動した先でダンジョン狩りをする事等等。

 するとスラミーの事についてはこんなアドバイスを頂けた。


「核はあのダンジョンから引っこ抜いて移動させればよいのじゃ」


「え?あー・・・そうか。その手もあるか」


 忘れていたが、ダンジョンからコアを抜いてもコアが死ぬ事は無い。ここでもし『守護者』とかダンジョンモンスターがいたら別だろうが、今のスラミーダンジョンはもぬけの殻なのでそれも支障はない。

 後はダンジョンから引っこ抜いても人格や性能に支障はないかなのだが、それもニアに聞いたところ大丈夫だという。


「まぁ新しく設置するまで各種機能は使えんし、再設置には少し時間がかかるがの。しかしそれ位許容範囲であろ?」


「だな」


 デメリットを聞くも、今の所ダンジョン機能は使っていないのでデメリット足り得ないし、これならば問題なさそうだ。


「うし、なら一旦スラミーの所へ帰って話をした後移動するとしよう」


「うむ」


 俺は『決めたのなら善は急げ』と言わんばかりに即行動に移す事にした。ここでぐずぐずしていた所で、少し前に調べたここらのダンジョン情報も役に立たなくなっている可能性が十分あるからだ。


「待っていろよ変態野郎め・・・いつか必ず帰って来てぶっ潰してやるからな・・・」


 俺はそんな決意を胸にスラミーの元へと急いだ。



 こうして俺達は一旦転生者のダンジョンから遠くへ行き、実力の底上げを図ることになったのだが・・・


 ・

 ・

 ・


「わぉ・・・」


「やはりお主も転生者じゃの一狼。とんでもないのじゃ」


「・・・やっぱりすごい事・・・だよな?」


「うむ、こうユニークスキルがポンポンと習得出来るのは『凄い』というより、『おかしい』のじゃ」


「うん・・・」



 何故か俺はダンジョンに潜る前に・・・新たなユニークスキルを手に入れてしまった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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