第145話 しまっちゃうわんちゃん
「ふひぃ・・・流石に全速力を出すと疲れるな・・・」
「そのお陰で来る時より早く出れたではないか。まぁ魔力の運用をもっとスムーズに行えると、今のレベルでも更に疲労を減らし速度を上げる事が出来るのじゃ。精進あるのみじゃな」
「う・・・うっす・・・」
数日前にウルフを捕獲する事を決めた俺達は、魔境地帯から出て魔の森へと帰って来ていた。
因みに俺1人で全力を出して走った所、来るときの3分の2程度の時間で来ることが出来た。・・・まぁそのせいでバテバテなのだが。
「ちょ・・・ちょっと休憩・・・」
「うむ」
疲れすぎていて動くのがつらいと感じた俺は休憩をする事にした。恐らくこのままウルフ捕獲を行っても大丈夫だろうが、そこまであわてる必要もないのでいいだろう。
「ふひぃ・・・しかし、ウルフってこの辺にいるのかね?」
「多分居るじゃろ。外周部は何処も大体住んどる魔物は同じじゃからの」
「そっか・・・ならよかった」
一番の懸念が近くにウルフが居ない事だったが、これなら遠くに行かなくても済みそうだと一安心だ。
少しの間座っていると段々息も整ってきたので、そろそろ動く事にした俺は立ち上がった。
「うっし、そろそろやるかな」
「うむ。そう言えば長老達は出さなくてもいいのかや?」
するとニアが長老達は良いのかと聞いてきた。それに俺はチラリと太陽の位置を見てからニアに答えた。
「まぁそろそろ暗くなってくるしな。長老達も夜目はある程度聞くけど、無理させるのもなんだしさ。それに長老達が居てもウルフの言葉が解らないからあれだろ?」
「それもそうじゃな。おっと・・・妾も姿を消しておこう。ウルフ達がショック死するやもしれんしの」
「いやいやおおげさ・・・でもないのか?」
ニアは俺の答えを聞いた後、自分も姿を消しておくといって姿を隠した。
まぁ確かに初見でニアを見た時は俺も死ぬかと思ったし、唯のウルフなら本当にショック死も有り得るかもしれない。
「まぁ・・・普段でも気配を抑えてくれてるから無いとは思うけどな。っと、遅くなるとご飯が遅れるし、取りあえず探しに行きますか」
あんまりのんびりしている訳にもいかないと思った俺は、『いざ捕獲作戦開始』と心の中で呟きながら森の中へと入って行った。
・
・
・
森の中へと入った俺なのだが、現在絶賛追いかけっこ中だった。
・・・俺が鬼だが!
「へいへーい、待ちなよ坊ちゃーん」
「ぎゃ・・・ぎゃうぅ!来るなぁぁ!化け物ぉぉ!」
「誰が化け物だーがぉー」
「ぎゃ・・・ぎゃうぅ!!」
(な・・・何か解らんが楽しい!)
犬系の本能が爆発しているのだろうか、逃げるウルフを俺は笑顔になりながら追っていた。
「へいへーい!追いついちゃうぜぇー?」
「ぎゃぅぅう!」
「おー・・・スピードアップした・・・」
まぁ普通に追いつくのだが、何故か追いつくのがもったいなくて付かず離れずで追っているのだ。
しかしだ、これ以上虐めても可哀想かなと思い、追いついて話をしようかなと思った時、前方に無数の気配がある事に俺は気づいた。
「・・・ん?」
「ぎゃぅぅう!助けてくれリーダー!」
「グルッ!?」
「あー、そういうことか」
どうやら前方にあった気配は、俺が追いかけていたウルフの群れらしい。・・・ラッキーだ!他のを探す手間が省けた!
ウルフの群れのリーダーはいきなり現れた俺に驚いていたので、俺は先制攻撃をかます事にした。
「おうおう!俺は人面犬の一狼じゃぁ!ワレは何処のどいつじゃぁ!?」
まぁ先制攻撃といっても、どこぞの輩がいちゃもんつける時みたいな事を言うだけなんですがね?
しかし、どうもその効果は抜群の様だった。
「グ・・・グルル・・・俺は・・・この辺に住む者です・・・」
「おうおうそうかぁ!ここは今から俺のシマじゃぁ!じゃけぇ住むんなら場所代もらわないかんのぉ?のぉ?」
「グ・・・グルル・・・」
「何うなっとんじゃいわれぇーぃ」
「ッキュ・・・キューン・・・」
(何か可哀想になって来た)
何となくノリでいちゃもんをつけていたのだが、可哀想になって来たということで・・・真面目に話す事に切り替えるとしよう。
「とまぁ、今までのは冗談だ」
「グル?」
「言ったと思うが俺の名前は一狼。ちょっとお前らに話があって来たんだ」
いきなり真面目になった俺にウルフのリーダーはキョトンとしていたが、そのまま俺は話を続ける。
「実は仲間になってくれるウルフを探していてな?それでお前達に目を付けたんだ。因みにだが、俺がそこの奴を追いかけ回していたのは力を図るため。お前を威嚇したのはお前のボスとしての胆力を見るためだっ!!」
「グ・・・グルッ!?なんとっ!そういうことですかっ!」
「ああ!」(まぁ嘘だが)
100%何となーくやっただけで意味はない。反省はしている。
まぁそんな事を言う必要はないのでそのまま話を続けるとしよう。
「で、見事俺のお眼鏡に敵ったのでお前達を仲間にしたい。どうだ?」
「グルル・・・仲間になったらここから離れるのですか?」
「そうなるな。まぁ住処とご飯は保証する。その分戦ってもらうがな」
「グルルル・・・」
どうやらこのウルフリーダーは結構慎重な性格の様で、俺の言う事を聞いたうえで仲間にとって有益かどうかを考えている様だった。
そんな時、ニアがこそっと念話で話しかけて来た。
【一狼よ、一発咆えてやるのじゃ。そうしたら一発で決まるのじゃ】
(・・・え?)
【犬系は横の繋がりも強いが縦の繋がりが重要じゃ。なので一発かましておいて損はないのじゃ】
ニアは俺が知らないと思ったからか犬系独特のルールを教えてくれた。確かに前世で無駄に買っていた本、『犬の気持ち~これで今日からあなたも一流飼い主~』にも同じような事が書いてあった気がした。
なので・・・
(成程?・・・それじゃあ)
「グォォォォオオオオオンンン!!」
俺はスキルの『雄たけび』も使い思いっきり咆えてやった。少し気合を入れて咆えた事もあり、周りの木々をびりびりと揺るがす満足の行く重低音が出せた様だった。
「おぉ・・・まるでライ○○○ング・・・っと、どうだウルフリーダーよ、この様な力のある俺についてこないか?・・・ん?」
自分の咆えた声に少し感動し、若干ドヤりながらウルフリーダーの方を見ると・・・何故かウルフリーダーは寝ていた。
「何でいきなり寝て・・・っは!?・・・死・・・死んでる!」
【いや、死んではおらんのじゃ。気絶しとるだけじゃ】
「そっかー・・・ってちょっと気合入れ過ぎたか?」
【まぁそうじゃの】
ウルフリーダー・・・というか、ウルフ達は全員俺の声で気絶してしまったみたいだ。どうやら気合を入れて全力で咆え過ぎたらしい。
「失敬失敬。・・・って、これ起きるまで待たなきゃいけないか。マジで失敗したなぁ・・・」
【しかし、これなら起きた時には従順になっておるじゃろう】
「そっか」
まぁ結果良ければ全て良しか?と思って気絶したウルフ達を見回した時、俺はこう思った。
なら実質もう俺の仲間だよね?
なので・・・
「じゃ、回収しようそうしよう。・・・さぁ・・・仲間になった子はしまっちゃおうねぇ~?」
俺はレモン空間への入口を開き、そこにウルフ達を丁寧に仕舞って行った。それはさながらドコゾノ子供が想像する様なしまっちゃう人みたいだった。
こうして俺は無事ウルフを仲間に加える事が出来た。・・・因みに近隣の魔物の間で『凄い叫び声を上げた後に獲物を異空間に放り込むヤバイ魔物が現れたらしい』という噂が経ったとかなんとか。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!
これからも頑張っていきますので「面白い」「続きが気になる」「しまわれちゃうんだぁ~(´;ω;`)」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が アナタを仕舞いに行きます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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