第144話 ネトゲを嗜んでいたわんちゃん

「今日はここまでにするゴブ!・・・すいません一狼様、今日の探索はここまでとさせてもらいますゴブ」


「しゃあないしゃあない。『レモンの入れもん』っと」


 あれから4日程経ったのだが、探索は順調・・・という訳でもなかった。


 その原因は・・・


「ダンジョンがまさか広大なフィールドになってるとは思わなかったしな。まぁ焦りすぎても良い事はないから確実に行こう。周り回ってそれが近道になるかもしれないしな」


「ゴブ」


「ん、皆レモン空間へ入ったみたいだな。俺達も入ろう」


 そう、原因はダンジョンの大幅な構造の変化にあった。

 1~4層までは洞窟風で出て来る魔物も弱かったのだが、5層目からがらりと様子が変わったのだ。

 あの転生者のダンジョンも5層からはがらりと様子が変わっていたが、こちらのダンジョンも様子は一変しており、唯の土の通路が広大な森の様なフィールドへと変化していた。・・・まぁ魔物の強さ自体はそこまで上がっていなかったので、それだけは幸いだったが。


 一応参考までに現在いる6層、その魔物の一部のステータスはというと・・・



 名前:

 種族:オークトレント

 年齢:-

 レベル:6

 str:105

 vit:133

 agi:63

 dex:59

 int:31

 luk:29

 スキル:硬化 叩きつけ

 ユニークスキル:

 称号:


 名前:

 種族:マウスプラント

 年齢:-

 レベル:5

 str:88

 vit:115

 agi:60

 dex:88

 int:21

 luk:18

 スキル:消化液 絡みつき 蔦操作

 ユニークスキル:

 称号:


 名前:

 種族:蔦球

 年齢:-

 レベル:4

 str:71

 vit:59

 agi:75

 dex:62

 int:24

 luk:28

 スキル:蔦操作 絡みつき 劣化分裂 合体 仲間を呼ぶ

 ユニークスキル:

 称号:



 こんな感じだ。


(まだまだ長老達でも十分対応できる範囲だから焦らず見守るのが正解・・・だよな?)


 実は先程長老に『焦らず行こう』と言っていたが、あれは自分に対して言い聞かせるためでもあった。


(イカンイカン・・・死にかけた事を思い出してまた弱気になってしまった。こういう時は美味しいモノでも食べてテンションを上げよう!)


 そう・・・それはまだあの敗北の記憶が新しく、俺の脳裏にチラチラと影をおとすからだった。

 しかしいつまでもこんな事を引きずっては居られないと思ってはいたので、俺はごぶ蔵の美味しいご飯でも食べて気分を変える事にした。


「ごぶ蔵!何か美味い奴!大盛で!」


「解ったごぶー」


 レモン空間に入るなり調理場へと直行して声をかけると、俺より早く調理場についていたごぶ蔵が声を返してきた。


「お待たせごぶ!」


「さんきゅう!ではいただきます!」


 早い・美味い・ごぶを信条とするごぶ蔵はその信条通りに速攻で美味い料理を出してくれたので、俺はそれにガッツキだした。

 そうして『うまいごぶ!』と軽いごぶ状態に陥りながら食事をしていると、長老やエペシュ達も調理場へとやって来た。


「ごぶ蔵、儂も何か美味しいモノを」


「私も」


「妾もじゃ」


「ごぶ!少々待つご・・・出来たごぶ!」


「ではいただくゴブ」


「うまうま」


「うむ。今日もいい味じゃ」


 俺と同じく長老達も料理にガッツキ始めたのだが、折角だからと俺は今日の事を長老に聞いてみた。


「長老、長老から見て今日の探索どうだった?」


「ゴブ?そうですゴブな・・・」


 長老は少し考える様にご飯をもぐもぐとした後に口を開いた。


「敵自体は儂等だけでやれているので、戦果としてはまずまずですゴブ。ですが一方、探索速度自体はガクッと落ちたので対策を講じる必要があるかも知れませんゴブ」


「ふむ・・・やっぱ長老もそう思っていたか」


「ゴブ。儂等の能力では色々速さが足りませんからゴブ。敵の発見速度しかり殲滅速度も・・・ゴブ、移動の速さもですなゴブ」


「ふむふむ・・・」


 長老の考えは俺とほぼ同じものだった。

 確かにゴブリン達にお任せの今の状態だとそれらのモノが足りないとは思っていた。ここでウルフでも仲間に居れば、ゴブリン達をライドオンさせてそれらが補えたりするのだが・・・


「うーん・・・でも居ないからなぁ。外で見つけたとしても何処かのダンジョンの斥候だろうから駄目だし・・・うーん・・・」


「何を唸っているのですゴブ?」


「いや、ウルフでも居ればなぁとさ」


「成程・・・ウルフ・・・ゴブ。確かにウルフが居れば色々解決でしたゴブ」


「だよな」


「うむ?ウルフ?必要ならば捕まえてこればよいではないかや?」


 俺達が2人で唸っているとニアが横からそんな事を言ってきたので、俺は肩を竦めてニアへと言葉を返した。


「いやいや、何処にもいないから唸ってるんだぞ?そのいないモノをどこで・・・」


「魔境地帯から出て捕まえてこればよいではないか?まぁ少々時間はかかるじゃろうがの」


「・・・なん・・・だと・・・!」


 まさに『何時から魔境地帯の外に出れないと思った?』といった感じだった俺だが、ニアの言葉を聞いて目から鱗が落ちた気分だった。・・・と言うか幻術にでもかかっていたのか俺は?


「ありだな・・・うん、充分ありだ」


「ゴブ。しかし魔境地帯入口からこの辺りまで来るのに確か4,5日かかっていましたが、よろしいのですゴブ?」


「確かに時間ロスにはなるが、俺は良いと思う。まぁあれだよ、Aを取る為のBがあって、そのBを作る為のCという素材を取りに行くみたいな。ネトゲではよくあるやつだ!」


「ネトゲゴブ?」


「妾は聞いたことがあるのじゃ。何やら中毒性が薬の比では無い程のモノだとかという話じゃ。気が付いたら沼に嵌っていたとかいう話を聞いたので、前触れなく現れる邪神みたいなものなのではないかと思うのじゃ」


「ゴ・・・ゴブッ!?」


「間違ってはいないけど間違っているぞソレ。ってネトゲはどうでもいいとして、今はウルフだ!」


 何故か『ソレドコノ闇のゲーム?』みたいな話をしていた長老とニアへと突っ込みを入れた俺は話を戻す事にした。


「ともあれだ!俺はウルフ捕獲に賛成だ!このダンジョンもここまで来たけど、結果的には一回外に出てウルフ連れて来た方が早いって事があるかも知れんし!」


「移動するのは一狼様ですので、一狼様がよろしいのであれば儂等には文句はありませんゴブ。寧ろ文句と言うよりありがたいですゴブ。儂等も元はウルフと暮らしてましたので、そうなるとすれば皆喜ぶはずですからゴブ」


「おっけーい!」


 ふとした事から話題になったライドオンウルフ計画だが、長老達も乗り気な様なので実行に移す事にした。

 これで戦力アップだな!と思っていると、これまで話に入ってこなかったエペシュが俺を見てこんな事を言ってきた。


「もふもふ増えるの?」


「ああ、増え・・・っは!?」


 何気なく返答しようとエペシュの方を向いたのだが、俺は気づいてしまった。


 えぺしゅたんのめがきらきらしていることに・・・


(ま・・・まさか!モフモフなら誰でもいいのかえぺしゅたん!!NTR!NTRなのかっ!?)


 俺は焦ってしまいそんな事を考えてしまい、更にそんな妄想は広がりを見せてしまった。


(だって・・・だってだ、もしウルフの赤ちゃんでも居てみろ・・・きっと『ちっちゃい、かわいい、もふもふ。大きい一狼はもういらない』とか言われるかも・・・いやもしかしたらさらに・・・・・)


 ドンドンと俺の妄想は広がりを見せ、最終的には俺がオークロードのお嫁さんにされていよいよ・・・といった時・・・


「一狼?どうしたの?」


「・・・っは!?・・・メス堕ちエンドかと・・・」


 エペシュの声で俺は現実へと戻って来た。・・・戻ってこれたのだ。よかった!

 現実に戻れた俺がホッと一息を吐いていると、エペシュがズズイっと俺に近寄って来てウルフ捕獲について話しかけて来た。


「で、もふもふ捕まえに行くの?」


「あー・・・」


 俺が『やっぱやめようかな』なんて言おうかと迷っていると、俺の横から長老が口を出してきた。


「ゴブ。ですので森の整備も少し考えねばなりませぬなゴブ」


「うん。所々に開けた場所をつくって・・・・・」


「というよりは儂等の住居の場所を広げて・・・・・・」


 流石長老といった所か、長老は既にウルフを捕まえた後の計画を建てだしていて、エペシュに森について色々と言い始めていた。

 流石にそれを見て『やっぱやめた』とは言い出せなかったので、どうやらウルフ捕獲計画は行わなければならないようだ。


(・・・ふぅ。やるか)



 妄想はあくまで妄想なのでああはならないと自分に言い聞かせ、俺はウルフ捕獲計画を練り始めた。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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