第143話 出来るゴブリンとわんちゃん
仮称『トレントダンジョン』へと着いた俺は早速レモン空間を開いて探索メンバーを呼び出した。
「ここが目を付けていたダンジョンだ!チラッとだけ覗いた感じだと植物系の魔物が居たダンジョンだ」
「ゴブ。植物系ならエペシュ様の力が役立ちそうですゴブ」
「ああ、それにトレント・・・木の魔物なら火に弱いかなってな。火だったら松明持たしたり、火矢を打ち込んだり出来るからさ」
「成程ですゴブ」
長老が言った通りエペシュの力でサポートが効きそうだし、更に弱点が火っぽいので攻略が楽かもと思いこのダンジョンを選んだのだが、はてさて・・・計画通りにいくだろうか。
「・・・いかんいかん。敗北してから一発目だから弱気になってるみたいだな俺。イケルイケル・・・俺はイケワン・・・絶対イケル・・・ッフォオオオオ!」
未だ敗北の記憶が新しい俺の心は弱気になっていたのでそれを払拭すべく、俺は自己暗示をかける様に呟いた後に雄たけびを上げた。
「ここは私の独壇場ふぉおおお」
「ごぶふぉおおおお!」
『『『ごぶふぉおおお!』』』
すると何故か皆も叫び出したのだが・・・まぁ気合を入れる意味では丁度イイだろう。
「・・・何もないとゴブリン達ゆるゆるだしな」
「・・・すいませんですゴブ」
俺がついついポロッと呟いた言葉に長老が反応してしまったのだが、長老が悪い訳ではない。ゴブリンが悪いのだ。
・・・長老もゴブリンだったわ。
「あ・・・いや・・・まぁ・・・がんばろ?」
何と言っていいか解らなくなった俺は取りあえずそんな言葉をかけた後、空気を入れ替える様に出発の合図をかける事にした。
「う・・・うっし!そろそろ出発しよう!長老!一応罠が見える魔法をかけてくれ!」
それで長老の意識も変わったのか、先程の事を忘れたかのような顔になり準備をし始めた。
俺はホッと息を吐いた後、続けて皆に声をかける。
「中に入ったら初めの内は俺とエペシュはサポートに回る。だから長老とごぶ蔵が皆を指示してやってくれ」
「解りましたゴブ」
「ごぶ!」
「敵が強くなってきたら手を出す感じ?」
「そうだな。まぁいけそうならゴブリン達に最後までいってもらうつもりだが、『守護者』が出て来たら確実に戦わなくちゃならないから心構えはしといてくれ」
「解った」
その後も少しだけ諸注意や作戦を説明した後、いよいよダンジョン内へと足を踏みいれる事とした。
「さぁ!俺達の冒険はここからだっ!」
・
・
・
作者の次回作をご期待ください。 fin・・・
とはならない。が、次回の探索に向けて考える余裕は十分に出来るほどに、今回の探索は順調に進んでいた。
「『拘束』ゴブ。今ゴブ、各自松明で火をつけるゴブ。ごぶ蔵はそのまま捌いてしまうゴブ」
「「「ごぶ!」」」
「解ったごぶ!」
「本当に、長老様様やでぇ・・・」
「私達出番ないね?」
何故なら、長老が無双しているからだ。
長老は指示は勿論の事、俺達がする予定だったサポートもこなしていて、俺とエペシュはただ見ているだけ状態となっていた。
「といってもまぁ、まだ序盤だからな。このダンジョンがあの転生者が居た場所並のダンジョンレベルなら、流石に進むにつれて厳しくなってくるはずだ。それにダンジョンへ入る前に言った通り、『守護者』は俺達が出なきゃならない筈だからな、出番は強制的に来るさ」
「そうなんだ?解った」
このダンジョンの規模がどれくらいかまだ分からない為何とも言えないが、俺達にも出番が絶対に来る。
しかしそれまでは長老に引き続き無双してもらって、俺達は楽をさせてもらう事にしよう。・・・といってもまぁ、敵の傾向から次の敵を予想したり、今のうちにダンジョンの癖みたいなものを読み取ったりと色々やる事はあるのでそこまでのんびりもしていられないのだが。
(ってことで、皆が戦っている敵のステータスとか調べていきますかねー)
その後俺は長老達の後ろでセコセコと色々な事をし始めた。
・
・
・
「・・・ゴブ。一狼様、流石に皆へばってきましたし、時間も結構経ちましたゴブ。なので今日の探索はここまでとさせてもらってもよろしいですゴブ?」
「あ、すまんすまん。そうしようか」
「ありがとうございますゴブ。・・・皆の者、そのアイテムだけ拾ったら今日は終了ゴブ!急いで集めるゴブ!」
「「「ごーぶ!」」」
自分で進めていないから気づかなかったが、大分時間も経っていたらしい。
「そういえばエペシュもさっきから静かだな・・・って・・・」
「うむ。そ奴は1時間ほど前からお主の背中の上で寝ておったのじゃ」
「え・・・えぺしゅたん・・・」
「・・・むにゃむにゃ」
考え事をしていたのでこれも気づかなかったが、どうやら女神は夢の女神へと進化を遂げていた様だ。・・・まぁ今はさほどやる事もないし可愛いから許す!
と、すやすやえぺしゅたんを見ている内にドロップアイテムを拾い終わったのか、俺の前にゴブリン達が集合していた。
「お、んじゃレモン空間へと行くか」
「はいゴブ」
「オープン・・・ってそんなに急いで入らなくても・・・」
俺が『レモンの入れもん』を出すと、ゴブリン達は我先にとレモン空間へ入って行った。
その様子を見て長老は苦笑いをし、皆のフォローをし出した。
「慣れない事をしたので疲れたのでしょうゴブ。早くご飯を食べて寝ると言っていましたからゴブ」
「成程。それなら仕方ないか」
「まぁごぶ蔵だけは早く料理がしたいからと言っていましたがゴブ」
「美味いご飯をいつも作ってくれるからそれも仕方ない!」
料理担当は他にもいるのだが、ごぶ蔵の作る料理は格別だからな・・・。
「・・・ごぶ蔵の料理の事考えてたら腹減って来たわ。俺達も行こうぜ長老。それにニア」
「はいゴブ」
「うむ」
今日は大して動いていないが、ごぶ蔵の料理に調教されてしまった俺の腹が訴えかけて来たので、俺達もレモン空間へと入りご飯を食べる事にした。
調理場へと着くと早速ごぶ蔵がせかせかと料理をしていたので人数分ご飯を頼んで食べ始めたのだが、その最中に俺は今日の探索の事を話し始めた。
「一応聞いておくけど長老、今日の探索どうだった?」
「どう・・・とは、敵の強さですゴブ?」
「そうそう。後は道とか。今日は口出さないで任せてたからさ、どうだったかなって」
「ゴブ・・・」
長老は考えをまとめる様に料理をもぐもぐと食べながら、考えがまとまったのか飲み物をグイと飲んだ後に口を開いた。
「敵の強さはまだまだ余裕ですゴブ。幸いにも儂の魔法もまだ効きますし、一狼様の言った通り火が効果的ですゴブ。このペースなら後2層ほどは儂等だけで行けますゴブ」
「ふむふむ・・・」
実は今日の探索で俺達は3層まで進んでいた。
ゴブリン達だけでここまですんなり進めたのは、先程長老が言った様に魔法と火のおかげというのが大きかったのと・・・
「後は道ですがゴブ・・・」
そう、それに道だ。
今日の探索ではそれほど迷うことなくスルスルと進めていたので、俺が思ったより進めたのだ。・・・何か秘訣でもあったのだろうか?
「実はある魔法を開発したのですゴブ。今日はそれを試していたのですが、ソコソコに使える様ですゴブ」
「へぇ?そんな魔法を・・・」
「ゴブ。ダンジョンの魔力の流れとでも言いましょうか・・・そういうモノを感知する魔法ですゴブ。これによって奥へと続く道が大体解りますゴブ。後は副次効果として、敵が居るかどうかも何となくですが解りますゴブ」
「お・・・おぉ・・・」
俺は長老の話を聞いて、再度こんな思いを強くしたね。
長老だけは何があっても守り抜く!と。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!
これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「やっぱり長老ヒロインなの?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 長老が インテリ眼鏡お姉さん枠に進化します。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532
2022/6/24 誤字修正
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます