第142話 動き出すわんちゃん

 周囲のダンジョン探索から5日程が経ち、今日も一仕事終えた俺はダンジョンへと戻って来ていたのだが・・・


「未だに慣れないな・・・これ」


「私は唯々面倒に感じる。だけど発想は凄いと思う」


「まぁ・・・」


「うむ。妾もこの様なダンジョンは初めてなのじゃ」


 俺は初日に見た衝撃を未だに受け続けていた。なんせ・・・


「一見唯の洞窟・・・ってか窪みっぽく偽装して、ダンジョンの防衛自体はスカスカとか普通は考えないよなぁ・・・」


 なんせ、変更されたダンジョンの見た目・・・というより中身が唯の窪みみたいになっていたからだ。


 何を言っているかイマイチ解らないと思うのでもう少し詳しく説明すると、だ。

 長老がダンジョンの構造を弄れるようになったのは知っていると思うのだが、長老は何と大胆にもダンジョンの防衛を全カットし、ダンジョンをダンジョンに見せないという偽装工作を行ったのだ。

 そしてその偽装工作を行った末に残ったのが、一見唯の窪みにしか見えないダンジョンという訳だ。・・・因みにだが、窪みの上部の方に解りづらーく転送陣が隠されていて、コアルームへの出入りはソコを通ると出来る様になっている。


「最初出た時は『レモンの入れもん』が窪みの上部に引っ掛けてあったから余計にビビったわ・・・」


「もしも速攻バレたらダンジョンを囮に逃げられる様にしてた・・・だっけ?」


「とか言ってたな。まぁ結局はバレなかったみたいだが」


 何度か近くを他のダンジョンの斥候が通ったらしいが、誰もかれも唯の窪みとしか思わず通り過ぎていったらしい。


「一応長老が隠蔽魔法をかけておったからの。それもあるのじゃろう」


「ふむ。まぁそれにしてもマジでハイリスクハイリターンだと思うがなぁ。まぁ大して思い入れも無いダンジョンだから別にいいんだけどさ」


「『スラミー』にもちょっと優しくしてあげて?」


「善処はする」


 そんな事を言いながら取りあえず俺達はコアルームへと飛んだ。・・・因みにだが『スラミー』と言うのはここのダンジョンコアの名前だ。


「ただいま。一応聞いとくけど、侵入者・・・というか、ダンジョンに入って来た奴はいるか?」


【侵入者は居りません】


「ただいまスラミー」


【おかえりなさいエペシュ】


 解せぬ・・・。いや、解せる。

 スラミーは俺に対しては『おかえり』と言ってくれなかったのだが・・・まぁスラミーに対しての扱いの差という奴であろう。

 ワンチャン、スラミーの奴がエルフスキーだという事もあるかもしれんが、まぁ相手が女神エペシュたんだからショウガナイネ?


【おかえりなさいませニア様】


「うむ」


 唯の女好きだった説?


「・・・まぁいいや、俺達はレモン空間に入ってるから、もしも侵入者があったら教えてくれ」


【了解】


 俺達はスラミーに挨拶してレモン空間へと入ると、取りあえず調理場の方へと向かった。


「ただいまー!おーいごぶ蔵、ご飯を3人分頼む!」


「おかえりごぶ。ちょっと待つごぶ」


 時間的にもそんな時間だったのでごぶ蔵に夕食を頼むと、ごぶ蔵は美味しそうな料理を出してくれたので俺達はそれを食べ始めた。

 そうしてもぐもぐとご飯を食べていると調理場に長老が現れたので、俺は長老に声をかけた。


「あ、長老話があるんだけど」


「ゴブ?解りましたゴブ。ですがその前に・・・おーいごぶ蔵、儂にもご飯を1人前頼むゴブ」


「ごぶごぶー」


「ゴブ。で、話とはゴブ?」


 勿論の事ながら長老もご飯を食べに来たらしく、ごぶ蔵に料理をオーダーしていた。俺はそれが終わった後に続きを話し始め・・・


「ああ、周囲のダンジョンを探し始め「お待たせごぶ」・・・って早いな」


 様と思ったら、ごぶ蔵が料理を運んできた。


「ごぶ。ごぶの料理は早い・美味い・ごぶの3つごぶ」


「・・・最後の何なん「ではごゆっくりごぶ~」・・・まぁいいや」


 余りにも早かったのでそれを言うと、謎の3か条をごぶ蔵は言い出した。・・・まぁ気にしたら負けであろう。

 なので俺は気を取り直し、改めて長老に話しかけた。


「で、だ!周囲のダンジョンは大体探したし体調も程々に良くなったから、そろそろ攻略を進めて行こうと思うんだ」


 俺がそう言うと長老は俺の体をジーッと見た後、ご飯をもぐもぐと食べてから頷いた。


「成程ですゴブ」


「だから俺達以外にレベルを上げる奴らに声をかけておいてほしいんだ」


「ゴブ・・・取りあえず5人程でよいですゴブ?最終的には20人程鍛えたい所ですが、一度に20人は多いと思うのですゴブ」


「そうだな。良いと思う」


「ゴブ。それなら後で声をかけて、明日の朝ですゴブ?行けるように準備させておきますゴブ」


「頼んだ」


「ゴブ。・・・もぐもぐ」


 流石長老、話がはえぇんだわ・・・と俺は少し感動していた。


「・・・長老、これからもよろしく頼むぜ」


「ゴブ?」


 長老だけは何があっても守り抜く。・・・俺はそう心に誓い、ご飯の続きを食べ始めた。


 ・

 ・

 ・


「うっし!んじゃあこれから目を付けていたダンジョンに移動する!皆はそこでレモン空間から出すから、ちょっとだけ待っていてくれ!」


「「「ごぶ!」」」


「解りましたゴブ」


 そして翌朝、準備が出来た俺は今日ダンジョン探索に選ばれたゴブリン達の前で話をしていた。


「じゃ、出発っと。あ、エペシュも直ぐ着くからここで待っててくれ」


「うん」


 と言っても長々話す事もないので必要な事だけサラッと話し、俺はレモン空間の外へと飛び出した。


「うっし、行くか。あ、おはようスラミー。今日はダンジョン探索行って来るから、何かあったら・・・頑張れ」


【おはようございます。頑張りますので、迷宮核の確保お願いいたします】


「あ・・・あぁ」


「一狼、いつまでも迷宮核と喋っておらんで行くのじゃ」


【行ってらっしゃいませニア様】


「うむ」


 ・・・スラミー、ポンコツ化してきてない?大丈夫?


 俺は一抹の不安を抱えつつも、目を付けたダンジョンに向けて出発する事にした。


 そうして走る事小一時間・・・


「到着っと」



 俺は目を付けていたダンジョン、仮称『トレントダンジョン』へと辿り着いた。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!

 これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「長老ヒロイン説?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 長老が ロリババア枠に進化します。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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