第141話 これからの事を話し合うわんちゃん

 俺は今、レモン空間内の住人を集めて話をしていた。


「え~・・・皆様の助けもあり、無事に動けるようになりました。本当にありがとう!」


「「「ごぶごぶ」」」


 話とはこの数日間の事で、俺は改めて皆に礼を言っていたのだ。・・・因みにだが、最初は全員の所へ俺の方から行って挨拶していこうかと思っていたのだが、長老がそれをすると時間が掛かるだろうからと皆を集めてくれたので、集会風に演説することとなった。


「と言っても、特段何かお返しが出来るわけでもないので、これからも皆が無事に暮らせるように頑張るのでそれで許してほしい」


「「「ごぶごぶ」」」


「以上で俺の話は終わりだ。本当に皆ありがとなー!って事で解散!」


 まぁ演説と言ってもそこまで話す内容も無かったので速攻終了にはなったのだが、重要だった礼は言えたのでヨシだ。


「あ、エペシュと長老、それにごぶ蔵だけは残ってくれ」


 そしてこれからの事を相談しなくてはと思い出したので、3人だけ残る様に言ってそのまま話を続けることにした。


「3人にはこれからの事について相談があるんだが・・・いいか?」


「どんとこいごぶ!」


「ん!どんとこい!」


「微力ながら手助けいたしますゴブ」


 俺の言葉に三者三様で意気込んで了承をしてくれたのを見て俺は頷き、続きを話していく。


「ありがとう。で、だ。相談と言うのはダンジョン攻略の話だ」


 俺はダンジョン攻略を諦めていなかった。・・・というより、諦めると明るい未来が見えてこない為、是が非でもやるしかないのだ。


「今度からは長老とエペシュにもレモン空間外へと出て手伝ってもらいたいんだ。勿論、ごぶ蔵もまた手伝ってほしい」


 そして今度からはダンジョン攻略を積極的に皆に手伝ってもらおうかと思っていた。正直エペシュ以外は実力不足が否めなかったが、それでも俺一人ではどうにもならないと解ったので手伝ってもらうしかないと思ったのだ。


「ごぶ!勿論ごぶ!」


「うん。任せて」


「解りましたゴブ」


 3人は俺の頼みに迷うことなく返事をしてくれたので、俺は嬉しくなった。


「次はぜってぇ負けねぇ・・・」


 なのでつい呟いてしまったが・・・


(いかんいかん、その負けない為にどうするかを考えなくては・・・)


 どうにも気が昂っていると感じた俺は頭を振り、一旦嬉しい気持ちや怒り、やる気などを頭から追い出して冷静になろうと息を吐いた。


「ふぅ~・・・よし、それでだ、取りあえず強い3人に声をかけてみたんだが、他にも何人か連れて行った方がいいと思うか?」


 そして冷静になったところでいよいよ具体体な相談を始める事にした俺は、まず最初に人員をどうするかという事を相談してみた。


「ゴブ・・・あのダンジョンに行くならばそれは止めておいた方がいいかと思いますゴブ」


「やっぱそうか?」


「ゴブ。正直儂とごぶ蔵でも厳しいですゴブ。それなのにそれ以下の者がワラワラと居ると、かえって邪魔になりますゴブ」


 何となくはそう考えていたが長老の考えもどうやらそうらしく、最低でもごぶ蔵クラスの強さが無い物は連れて行かない方がいいと言う。

 これは『数は力』、この原理があまり役に立たないからだ。


「この世界は力の差が出るからなぁ・・・」


 地球だと蟻が人間を持ち上げるなんてことは出来ないが、この世界だと力の差次第ではそのような事も有り得るので数ばかりいても役に立たない事が多々ある。要は量より質な世界なのだ。


「それにあのダンジョンには罠も沢山ありますゴブ。なのでゾロゾロと群れていくと危険ですゴブ」


「あー、それもあるな」


「ゴブ。特に儂等ゴブリンはごぶ蔵の様なモノが一般的ですので、恐らく罠にかかりまくりますゴブ・・・」


「あー・・・」


「ごぶ?」


 当のごぶ蔵は『なに?』みたいな顔をしていたが、そう言えばダンジョンを脱出する時にごぶ蔵は罠にかかりまくっていたんだっけ。

 それを思うと確かに人数を増やすのは絶対駄目だな。


「うん。じゃあ基本的にはこの4人で攻略だな」


「ゴブ。唯、あのダンジョンに行く前に儂等含め一狼様も強くなる必要がありますゴブ」


「うん?まぁそうだな?」


「そのために他のダンジョンを攻める際は数人連れて行った方がいいかもしれませんゴブ。所謂先行投資の為ですゴブ」


「成程。今は間に合わなくても、何時かの為にか」


「ゴブ」


 いきなり何を言い出すのかと思えばこのゴブリン・・・冴えまくりである。やはり長老はゴブリンの皮を被った別種族なのかもしれない。


「っとまぁさらりと出たが・・・やっぱり違うダンジョンを攻めてレベル上げを行うべき?」


「それがいいと思いますゴブ」


 話を戻すが・・・長老はあの転生者がいたダンジョンではなく違うダンジョンへと行き、レベルを上げるべきだと言う。

 それは恐らくあのダンジョンでレベル上げを行っていると、あの転生者に見られるから、もしくは強襲されるかも知れないからであろう。一応長老に聞いてみると『そうですゴブ』と頷かれた。


「それらはサッと仕入れた情報ですので一狼様の方が詳しい筈ですが・・・本当にそういう事も出来るのですゴブ?」


「出来ると思う。やるかやらないかは解らないがな」


 現に普通に攻略していた分にはあの転生者は強襲はしてこなかった。しかし俺はポンコのダンジョンに居た時にそういう事も出来ると知ったので、油断する事が出来ないのは確かだ。


「後それですと、やはりエペシュ様を連れていく訳にはいかないのでは・・・?現に今回のダンジョン攻略でエペシュ様を連れて行かなかったのは、そういう理由たったはずですゴブ?」


「あー・・・そうだった・・・」


 ガチられて死にかけた事で忘れていたが、そうだった。

 恐らく薄っすらと覚えている転生者の最後の態度からも、恐らくエペシュをそのまま連れて行くとちょっと面倒なことになるだろう。


「どうしたものか・・・」


「変装でもさせて見ますかゴブ?」


「それだっ!」


「変装?仮面被って槍持って一狼に乗る?」


「それ、も○○け姫や・・・」


「駄目なの?」


「駄目や!」


 エペシュをどうしようかと思った時長老からナイスアイディアが飛び出してきたが、直ぐ後にエペシュから危険なアイディアが飛び出してきた。・・・というか、それだと女の子が獣に乗っているだけだからあまり変装している意味がない。


「まぁどう変装するかは追々考えるか」


「ごぶの一押し変装は白い仮面に黒い布で全身を覆う変装ごぶ」


「それも駄目や・・・。って言うか取りあえず変装はいいねん!次!次の議題へ行くんや!」


 このまま変装の事を考えていると『どこかの神様』に宇宙を消滅させられるかもしれないので話題を変える事にした。

 と言っても後考える事と言えば・・・


「後はレベルアップする為のダンジョンをどうするか、くらいですゴブ?」


「だな。まぁでもそれは外に出て直接探してみなきゃわからんか」


「ゴブ・・・。何かいい魔法でもないか頑張ってみますゴブ」


 長老が何か凄い事を言っているが・・・そんな魔法を生み出せたらミラクルだと思うんだ。まぁそれは期待せずに待つとしよう。


 ということで・・・


「うし、んじゃあこの後ちょっと外に出て探してみるかな」


「一狼、まだ動けるようになっただけで完全に治ってないよ?無理しちゃ駄目」


「あ、いや。ダンジョンを探すだけで入りはしないから大丈夫」


 早速ダンジョンでも探しに行くかと思ったら、エペシュに怒られてしまった。しかし俺も流石に未だダンジョンに突っ込む元気は無いので、探すだけだと言っておく。・・・というかプリプリ怒るエペシュたん、可愛いです。


「そう。でもそれも無理しちゃ駄目。というか私も付いてく」


「あーうん、解った」


 俺が無理をしないのを監視する為だろうか、エペシュも俺と一緒にダンジョンを探しに行くと言ってきたので俺は頷いておく。

 まぁ俺としても体調が万全でない状態なので、俺並に強いエペシュに付いて来てもらうのは心強いので助かる所だ。


「うっし、んじゃぁ軽く何か食べたら外へ行こうか」


「うん」


「ごぶ。じゃあ何か作るごぶ」


「おう、サンキューごぶ蔵」


 丁度昼前位だったので先ずは何か食べる事にした俺達は、ごぶ蔵を先頭にして調理場へと向かう事にした。



 そしてご飯を食べて一休みした後、俺とエペシュはダンジョン探索をする為にレモン空間から外へと出たのだが・・・俺は外へと出た瞬間に驚いてしまった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!

 これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「変装のネタが危ないやで!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると エペシュが 着ぐるみを来て怪獣に変装します。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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