第140話 話を聞いたわんちゃんと仲間達

「そうか・・・ありがとうな皆・・・」


 長老から話を聞き終わった俺は、その場にいた全員に向けて礼を言った。

 どうにも体が動かないのでお辞儀をしたり、ここに居ない皆に礼を言いに行く事はまだ出来ないが、体が動かせる様になったら改めて全員に礼を言いに行こうと思う。


「しかしよく無事だったな・・・。あの意外と堅実な面も見せていた転生者なら追撃をかけそうなものだが・・・」


 礼を言った後に先程の話を聞いた感想を述べたのだが、それについては長老も・・・


「さて・・・それは儂にも解らんですゴブ。エペシュ様とも一応追ってきた場合については相談していたのですが、無駄になって良かったですゴブ」


 との事だった。

 今回の転生者は色々特殊だから、考えても仕方がないか・・・なんて考えたところで、俺のお腹が再び音を立てた。


「ゴブ。一狼様、食べれるだけ食べて再びお休みくださいゴブ。体の傷もまだ完全には癒えていませんゴブ」


「ご飯は食べさせてもらう。けど、休んでても大丈夫なのか?レモン空間へと繋げた場所って安全な所なのか?」


 ご飯は食べるがゆっくりもしていられないんじゃないか?と長老に問いかけると、どうやらここの場所自体は恐らく安全だという。


「そうなのか?」


「ゴブ。ここは一狼様が手に入れたダンジョンですゴブ。そこに儂が少し手を加えたのですゴブ」


「へぇ・・・?」


 どうやら長老達はあの元スライムダンジョンにまで戻って来ていたらしく、ニアの手を借りてコアで登録を行ったらしい。

 これによりダンジョンに手を加える権限を得た長老は早速それを行使し、安全になる様に手を加えたのだという。


「ってことは、長老は名前持ちネームドになったのか?コアに登録する為には名前を取得しなきゃいけない筈だよな?」


「はいですゴブ。儂とごぶ蔵の2名だけが名前を取得できましたゴブ。・・・まぁ、ごぶ蔵にはダンジョンに手を加える権限を与えませんでしたが・・・ゴブゴブ・・・」


「それは英断だと思うな。うん。・・・で?何て名前にしたんだ?」


「ゴブ?」


「名前だよ名前。自分で新しくつけたんだろ?」


 ダンジョンコアを通じて名前持ちネームドになる場合、名前は自分の好きに決めれる筈だ。

 なので俺は長老が自分に何という名前を付けたのか気になったのだ。


「カッコいい系にしたのか?それともゴブリンの伝統的な名前?・・・まさかキラキラネームとかじゃないよな?」



「ゴブ?儂の名前は『長老』ですゴブ。一狼様がつけてくれた名前ですゴブ」



「え゛っ!?」


「ちゃんと『長老』とダンジョンコアに登録しましたゴブ。勿論、ごぶ蔵も『ごぶ蔵』で登録してありますゴブ」


「ごぶ!」


 いやいや、『ごぶ蔵』はまだいいと思うよ?名前っぽいもん。


 でも『長老』ってあーたね・・・。


「名は鯛のあら汁なのじゃな。妾はいいと思うのじゃぞ?」


「どういうこっちゃねん。『名は体を表す』だ!・・・ってニアも居たのか?・・・ん?何処にいるんだ?」


 長老の名前に『オィイ?正気カぁ!?』と思っていると、何処からかニアの間違っている諺シリーズが聞こえて来た。姿が見えないのだが、俺の真後ろにでもいるのだろうか?


「む?ずっと居ったではないかや?何故気づかんのじゃ?」


「え?何処だ?俺、今体が動かないから周囲も見れないんだよ」


「真下を見るくらいできるじゃろ?」


「真下?」


 真下を見ると、レモン空間の白と同化する様にクッションの様なモノがあったのだが・・・え?まさか?


「え?俺ってまさかニアの上に居るの?」


「うむ」


 どうやら俺はずっとニアの上に居た様だ。


「そう言われてみれば安心できるいい匂いが・・・ってん゛ん゛っ!あー・・・まぁあれな?他の人の目線的にてっきり床の上かと思っていたけど、気づかなかったわ」


「他の者が一狼の様子を見るのに不便かと思い、地面を掘ったのじゃ」


 レモン空間の床をどうやって掘ったんだYO!相変わらず訳が解んNEーYO!そして俺の失言ごまかしOKチェケラッチョッ!


「・・・ふぅ。とりあえず何か気も抜けた事だし、ご飯食べて寝させてもらうわ・・・」


「解りましたゴブ。ごぶ蔵、何か優しくて美味しくてお腹に溜まるモノを一狼様にだすゴブ」


 取りあえず誤魔化しOK&状況は大丈夫そうという事が解ったので、ご飯だけもらって休ませてもらうと言うと・・・長老がごぶ蔵に無茶ぶりオーダーをかましだした。


「ごぶ。・・・ごぶぶぶっぶぶ~、フェイクグラスのトロケタお肉ソースがけ~薬草を添えて~ごぶー」


 しかしごぶ蔵、文句も言わずにそのオーダーをこなしてみた。・・・いや、こなせているのかこの料理?


「まぁ謎料理だが美味そうではあるな・・・じゃあそれを貰おうか」


「少し待つのじゃ。流石に妾の上で飯を食べられるのは敵わんのじゃ。一狼も気を取り戻した事だし、そろそろ森の方へと移動するのじゃ」


「あーそうだな。でも俺、自分では動けないぞ?」


「うむ。そこは妾が移動させてやるのじゃ」


 ニアの言う事ももっともだったので移動する事を承諾すると、ニアが魔法を使ったのか俺の体がふわりと宙に浮きあがった。

 俺の体はそのままふわふわとニアの魔法で森の方へと連れて行かれ・・・俺は森の中で唯寝ると食べるを繰り返す日々を過ごす事となった。



 そして数日後、俺は漸く動けるまでに回復する事が出来た。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!

 これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「ニア様はクッションにもなるお方!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ニアが 優しく抱擁してくれる長馴染み系ツンデレクールお姉ちゃんママになります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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