第139話 話を聞くわんちゃん
では何があったかを長老こと儂から話させてもらいますゴブ。
あれは儂達が一狼様を送り出して暫く経ったときの事ですゴブ。
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「・・・っごぶ!?」
「どうしたゴブ?ごぶ蔵」
料理中だったごぶ蔵が突然慌てて周りを見回し始めたのですゴブ。
儂はその時丁度調理場近くに居たのでその様子を見ていたのですが、それはもう天変地異でも起こったかのような慌て具合でしたゴブ。
「ごぶっ!?ごぶ!ごぶごぶ!?」
「落ち着くゴブ。ゴ~ブゴブ・・・ゴブ。『沈静』ゴブ」
余りに慌てているので、儂は最近修得したばかりの魔法を使いごぶ蔵を落ち着かせましたゴブ。
「・・・ごぶ。ありがとごぶ。でものんびりしている場合じゃない気がするごぶ!・・・ごぶぶ、ごぶ・・・」
すると見事ごぶ蔵を落ち着かせることに成功したのですが、落ち着いたごぶ蔵の様子は未だおかしいままでしたゴブ。
ごぶ蔵はいきなり作りかけだった料理を収納したかと思ったら、座って目を瞑り唸り始めたのですゴブ。
「ごぶ蔵?・・・何かしている様子ゴブ。もう少し見守るゴブ」
「・・・ごぶごぶ・・・ごぶ」
はた目には唯座って唸っているだけに見えましたが、何となく魔力が動いている気がした儂は見守る事にしましたゴブ。
そうして見守る事2,3分経ったときの事ですゴブ。ごぶ蔵はいきなり立ち上がって儂に詰め寄って来ましたゴブ。
「・・・ごぶっ!長老!今すぐ腕が建つ人を10人程ここに呼ぶごぶ!ごぶはエペシュ様を探してくるごぶ!」
「まさか一狼様に何かあったゴブ!?」
「話は後ごぶ!急ぐごぶ!」
ごぶ蔵の様子に儂も何となくですが察する事がありましたゴブ。
ですが詳しい事が解らなかったのでごぶ蔵に尋ね様とすると突っぱねられたので、儂はとりあえずごぶ蔵の言う通りにしましたゴブ。
やがて時間もそれほどかからずに人数をそろえた時、ごぶ蔵もエペシュ様を伴って最初の調理場付近の場所へと来ましたゴブ。
「ごぶ!集まってるごぶ!なら説明するごぶ!」
「うん」
「頼みますゴブ」
「ごぶは急に嫌な予感を感じたごぶ。そうして慌てていると長老に落ち着かせてもらったごぶ」
「ゴブ」
「その後直ぐに一狼に何かあったと思ったごぶは、外の様子を確認したごぶ。すると・・・一狼が不味い状態だったごぶ」
「え!?ど・・・どれくらい不味かったの!?」
「絞められる一歩手前位ごぶ・・・。だから急いで助けるごぶ!」
「うん!行こう!ごぶ蔵、外への道を開いて!」
儂も不味い状況だとは考えていましたが、やはりそうみたいでしたゴブ。
それを聞いたエペシュ様は直ぐに助けに行こうと言いましたが、そこで儂は一先ず待ったをかけましたゴブ。
「待って下さいゴブ!一狼様が敵わなかった敵に闇雲に向かって行っても意味がないですゴブ!ごぶ蔵、もっと詳しい状況を教えるゴブ!」
儂等からしたら敵わない強さを持ったエペシュ様ですが、一狼様と比べると少し劣る筈ですゴブ。
そんな具合なのに闇雲に突撃するだけでは駄目だと思ったので、策を練る必要があると思ったのですゴブ。
「ごぶ!・・・ごぶっ!?不味いごぶ!一狼が床に沈んでいってるごぶ!」
「なんだとゴブ!?」
「・・・っ!ごぶ蔵!今すぐ外への道を開いて!もう考えている暇はない!」
「ごぶっ!」
しかし状況は予断を許さぬ状況になっていたので、儂等は一か八か、外へと出たのですゴブ。
「ごぶっ!」
「「「ごぶごぶ!」」」
「・・・」
「・・・敵は・・・既に居ないようですなゴブ」
賭けには勝ったみたいで、外に出るとすでに敵はおりませんでしたゴブ。
しかし、ごぶ蔵が言った通り一狼様が床にゆっくりと沈みかけている状態だったのですゴブ。
「一狼っ!」
「「「ごぶっ!?」」」
「いかんゴブ!ごぶ蔵!縄みたいなものは無いゴブ!?」
「ごぶっ!?・・・あったごぶ!」
「それを一狼様の体のどこにでもいいからかけるゴブ!そしてみんなで引っ張り上げるゴブ!」
手で引っ張っても駄目かと思い、そんな方法を使って儂らは何とか一狼様を引っ張り上げようと頑張りましたゴブ。
「んー!」
「「「おーえす!ごぶ!おーえす!ごぶ!」」」
「んー!!・・・引っ張られる!」
「「「おーえす!ごぶ!おーえす!ごぶ!」」」
「補助魔法をかけますゴブ!」
「「「ごーぶごぶ!ごーぶごぶ!」」」
「んー!!ごぶ!ごぶ!」
そうしてなんとかかんとか一狼様を引っ張り上げる事が出来ましたゴブ。
しかし一狼様を引っ張り上げたのはいいのですが、床に置いておくとまた直ぐに沈みそうになるので急いでレモン空間へと運びましたゴブ。
え・・・?だったら未だダンジョンの10階層なのか?とゴブ?
いいえ、そこからがまた大変だったのですゴブ。
取りあえず儂が選んだ10人のゴブリン達に一狼様をレモン空間へと運ばせたのですが、儂とごぶ蔵、それにエペシュ様はレモン空間へは一緒に入らなかったのですゴブ。
それは、このダンジョンから脱出する為だったのですゴブ。
「安全を期する為にはこのダンジョンから脱出しなければなりませんゴブ」
「うん」
「ごぶ!」
「一狼様はエペシュ様をこのダンジョンに挑ませるのには反対だった様ですが、今となってはエペシュ様に頼るしかありませんゴブ。よろしいですゴブ?」
「勿論。まかせて」
「ごぶもがんばるごぶ!」
「ゴブ。ごぶ蔵は一狼様と共に途中までは攻略してたから頼りにしているゴブ。そして・・・ニア様」
儂はここで初めてニア様へと声をかけましたゴブ。あのお方の事は本人からも一狼様からも聞いていたので、力を貸してもらう訳にはいかないとは思っていましたが、一狼様の様子を見ていてもらう位なら大丈夫かと思い、それを頼むことにしましたゴブ。
【なんじゃ】
「どうか一狼様の様子だけでも見ていてくれませんゴブ?何もしなくてもいいのですゴブ。唯様子を見ているだけでいいのですゴブ」
【ふむ】
「ニア様に見ていてもらうだけで儂等も、そして一狼様も安心できると思うのですゴブ。何卒・・・」
【うむ。そこまで言われたのなら仕方がなのじゃ。じゃが、妾はお主達について行くとするのじゃ】
しかしニア様はそれを承諾する事はせず、儂等に付いて来ると仰いましたゴブ。
「・・・解りましたゴブ」
儂はそれならば仕方がないかと諦め、出発しようかと思いましたゴブ。
ですが、そうしようと思った時・・・
【一狼の方は既に見てあるから・・・いや、何でもないのじゃ。まぁあれなのじゃ、一狼が更に安心できるように、妾はお主達を見守っていてやるのじゃ】
「成程・・・解りましたゴブ」
何とニア様はそんな事を仰ってくれましたゴブ。
儂はこの時また1つ学びましたゴブ。・・・これが一狼様から聞いた事のある『ツンデレ』という奴なのだと!ゴブ!
・・・先ほどの話は聞かなかったことにしてほしいですゴブ。
まぁともあれ、儂等はダンジョンから脱出する為に動き出したのですゴブ。
それはもう大変でしたゴブ。
主に、ごぶ蔵が罠に掛かったり。ごぶ蔵が罠を作動させたり。ごぶ蔵が罠にかかってビクビクしたりと。
まぁ大体の所は儂の罠発見の魔法とエペシュ様のお力でどうにかなったのですが、何故かごぶ蔵は罠にかかるのですゴブ。
まぁそれはともかく、儂等は寝る時間も最小限にしてダンジョンを進み、何とか脱出する事が出来ましたゴブ。
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以上が、事のあらましですゴブ。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!
これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「ニア様は本当に属性の多いお方」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ニアが 長馴染み系ツンデレクールお姉ちゃんママになります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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