第138話 地獄?の子鬼とわんちゃん

「ん・・・?ここは・・・?」


 目が覚める?と目の前は真っ白だったのだが、ココは覚えがあった。


「ここはワンコ神様が居た場所だな・・・そうか、俺また死んだんだったな」


 どうやら再び死んだ事により、転生の間みたいな場所へと飛ばされた様だ。


「未だ1歳にもなってなかったのに・・・短い犬生だったなぁ。まぁ、内容は物凄く濃かったが」


 自分の犬生を思い出し、次は何になるのだろう?虫?樹?なるべくなら動物系がいいなぁなんて思いながら目を閉じて考えていたのだが、一向に次のアクションが起きなかった。


(んん?あー、ワンコ神様に直接拾ってもらうとかじゃないと待ち時間とかが出るとかなのか?いや、もしかしたら地獄というか刑罰的なあれで反省とか浄化されるまでこのまま待機とかかもしれないな。・・・自分の生を延々と見つめ直す、か・・・)


 自分の生で感じた全てを見つめ直す事は苦痛だ。苦しい事は勿論だが、楽しい事も二度と感じる事が出来ないと解っていると、それはそれで苦痛だからだ。


「っふ・・・だから生物は本能的に死を避けるのかもしれないな。・・・っは!?死して悟りを得てしまったか。何という無駄なんだ俺の頭脳は!・・・そんな事を今更考えても仕方ないか、甘んじて罰を受ける為に犬生を見つめ直そう」


 悟りの一狼へと進化した俺は犬生を振り返り始めた。ダンジョンに吸収される際も考えていたが、もっと細かいところまで思い出す事にしよう。


「初めて食べた焼き芋虫・・・あれはあれで美味かった。オークも良かったなぁ・・・。そういやコボルト達と料理も作ったなぁ。あ、料理と言えばごぶ蔵か。あいつのご飯美味いんだよなぁ・・・」


 細かい思い出を思い浮かべていると、どうも食べ物の事ばかりが浮かんできてしまった。

 そしてそれらももう二度と食べれないと考えると、まさにそれは拷問の様で・・・


『グゥゥ~~・・・』


「・・・ック!なんて事だ・・・いっそ殺してくれ。・・・あぁ、匂いまでしてきた気がするぅ」


『ググゥゥ・・・グゥゥ~~・・・』


 何かこういう地獄もあったなぁ・・・なんてことを考えていると、なにやら目の前に気配を感じた。


「・・・ん?」


「ごぶ」


 目を開けると、そこに居たのは鬼だった。・・・いや、子鬼だった。


「ごぶ」


「うっ・・・こ・・・これ見よがしに見せつけて来て・・・!・・・っは!?まさかくれるのか?」


「ノーごぶ」


 子鬼は俺の鼻先にいい匂いがする食べ物を近づけて来たのだが、それはくれないと言う。

 これはまさしく、地獄の子鬼による拷問なのだろう。


「・・・ック!去れっ!マーラよっ!」


 耐えなきゃいけない系の拷問だと思い、俺は目をぎゅっと閉じてどこかで聞いた様なフレーズを子鬼に向かって叫んだ。


 すると・・・


「消えた・・・」


 再び目を開けると、子鬼の姿は消えていた。・・・どうやら拷問刑に打ち勝ったらしい。


「・・・ふぅ。・・・っは!?」


「ごぶ」


 安堵した俺は目を瞑り息を吐いたのだが、再び気配を感じたので目を開いた。


 するとそこにはまた子鬼が居たのだ!今度は両手に料理を持って!


「ごぶ」


「うっ・・・うぅ・・・去れ・・・去るのだマーラよ・・・」


「ごぶごぶ」


「うっ・・・うぅ・・・すまない・・・すまない・・・反省しているんだ・・・だから去ってくれマーラよ・・・」


「反省してるごぶ?」


「している・・・しているんだ・・・だから去れっ!マーラよ!」


 俺はこの罰を受けきって見せる!


 そう思い必死で耐えていると・・・


「じゃああげるごぶ」


 子鬼は料理をくれるというのだ。


「・・・え?いいのか?・・・い、いや!駄目だ!俺は反省中なんだ!そんな甘い誘惑に乗ってはいけないんだ!」


 俺はついつい涎を垂らし喜びの声を上げてしまったのだが、ここで食べてしまってはきっとこの場所に縛られる時間が長くなる筈だと思い、拒否の声を上げた。


 するとだ・・・



「反省したのなら食べていいごぶ。というかごぶも反省ごぶ。次はごぶ達も手伝うごぶ」



「・・・へ?」



「そしてマーラって何ごぶ?ごぶはごぶ蔵ごぶよ?」



「ご・・・ごぶ蔵?」



「ごぶ」



 確かに何処かで見た様なとぼけた顔の子鬼だとは思っていたが、子鬼の正体はごぶ蔵だった様だ!


 ・・・という事は?


 俺は動かない体を無理矢理動かし、今まで視界に入れていなかった部分を見た。


「あ・・・ここ・・・レモン空間だったのね?」


「そうごぶよ?」


 俺は自分が死んで転生の間にいるとばかり思いこんでいたが違った様だ。


「え?俺って死んでなかったのか?」


「・・・死にかけてたごぶ」


「・・・そうだよ一狼。・・・半分くらい迷宮に沈んでたんだから」


 キメラドールにやられたとばかり思っていたのだが、ギリギリのところで生きていたらしい。まぁ聞いた感じ、ダンジョンに飲みこまれかけていたのなら本当に死の一歩手前だった様だが。


 ・・・というかだ、


「・・・こ・・・この声は!」


「うん。私だよ一狼」


 俺は地獄の中で菩薩を見た。・・・いや、ここは現世だったな!


「現世に降り立ちし女神!」


「エペシュだよ?」


 サラッと会話に混ざって来ていたがどうやらエペシュもいた様で、彼女は俺の近くへ寄って来て体を撫でてくれた。


「心配したんだよ?」


「あぁ・・・すまないな・・・しかし一体?」


「それは儂がお答えしましょうゴブ」


「・・・っ!?ちょ・・・長老も居たのか!吃驚したなぁ」


 何時の間にか長老も傍にいて俺は吃驚してしまったが、この状況についての話が聞きたかったので俺は心を落ち着かせ長老へと話しかけた。


「・・・ふぅ。よし、話してくれ長老。一体どうやって俺が助かったのか、何があったのかを」


「解りましたゴブ」



 俺が長老へと話してくれるように頼むと、長老は頷いた後話し始めた。


 俺がキメラドールにやられた後に何があったかを・・・。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。皆様のおかげでなんと・・・合計2万PVいきました!

 これからも頑張って行くので「面白い」「続きが気になる」「地獄の子鬼シェフ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 地獄の料理人へと進化します。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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