第137話 回想と謝罪をするわんちゃん

 ゆらゆら・・・ゆらゆら・・・と、俺は体が浮いているかのような浮遊感を感じていた。


 最初は沈みこむ感覚だけがあったのだが、何時の間にか浮上している様な感覚があり、その後はひたすらに上下している感覚になった。


(これはもしかして、ダンジョンの咀嚼運動みたいなものなのだろうか・・・)


 体は動かないものの、思考する事はなんとかできていた為そんな事を考えながら今までの事を振り返る。


 始まりは宝くじが当たった事だった。


 そしてそれに浮かれていたら転んで、不運にも頭をぶつけて死んでしまった。


 だがそこで何故か犬の姿をした神様と出会い、転生をさせてもらったんだよな。けど俺の他にも転生した所謂転生者達、彼ら彼女らは集団であの神様や他の神様に出会ったと言っていたのだが、俺だけ1対1であったのは何か理由があったのだろうか・・・?


 ・・・まぁ今となっては栓無きことか。


 ゴブゴブごぶごぶ。


 えっと・・・それで転生したらごぶ助に食われそうになったんだよな・・・。いや、違った、助けてもらったんだ。


 そこからごぶ助の村で過ごすことになって、ダンジョンを見つけて・・・ポンコツダンジョンコアと出会ったんだよな。

 その過程で色々あったけど、それが無かったら多分俺とごぶ助は死んでたんだよな。


 ・・・あの人間達によって。


 今でも思い出そうとすれば体が震えるあの恐怖・・・今の俺なら打ち勝てるのだろうか?・・・いや、まだ無理な気がする。

 感覚的なモノだが、あの時感じた圧は並大抵じゃなかった。それこそ、エルフの砦村で戦ったオークロードと同等か、それ以上だった気がする。


 ・・・そのオークロードと出会うまでにも色々あったよなぁ。


 俺とごぶ助の仲間になってくれたコボルト達と出会って、コボルト達と出会う原因になったダンジョンを攻略したりもしたな。


 ゴブゴブごぶごぶ。


 そうしたら何故か他のダンジョンに目を付けられて・・・俺以外の転生者に初めて出会ったんだよな。

 敵対してきたそいつには何とか勝った・・・といえるか怪しい闘いだったが、なんとか生き延びれたんだよな。・・・今回もあんなミラクルが起きていれば・・・いや、そんなものに頼る気持ちがあったから今回の様な事になったのかもしれないな。


 死んでから反省とは・・・本当に俺って奴は・・・。


 反省と言えばニア・・・彼女には申し訳ない事をしたな・・・。


 彼女とは転生者と戦った後で行動を共にするようになったが・・・無理を言って鍛えてもらったのに、結局はこの様だ。・・・すまない。


 ・・・すまないついでに、何時も調子の良い事を言って乗せる様にしてすまない。けど、乗せられやすいニアも悪いと思うんだ。それに偶にバブみを感じさせるからつい甘えちゃうんだよな・・・。

 ヤバイ・・・もうおぎゃれ無いかと思ったら急に甘えたくなってきた・・・ニアママン・・・


 仕方のない童なのじゃ・・・ふふ・・・


 ・・・っは!?お前は俺の中に住む『優しくてえっちなニアママお姉ちゃん(勝手に人型ver)』!?


 ・・・死んでまでこんなバカな事を考えるとは・・・俺は変態なのか?


 ゴブゴブごぶごぶ。


 ・・・変態か、それもいいかもしれない。


 だって変態なら女神に何をしても許されるじゃないか。


 エペシュ、彼女は転生者によって離れ離れになったごぶ助達と合流する間に出会った俺の女神。・・・まぁ外見は多少ロリっぽいが女神なのだ。72歳だし。


 俺の女神はエルフだが、ゴブリン達と仲がいい。

 そんな彼女はエルフの砦村がオーク達の襲撃を受けた後からは一緒に暮らしている。・・・まぁゴブリン達も一緒だが。


 そんなゴブリン達、長老やごぶ蔵をごぶ助に合わせてやれると思ったら、既にごぶ助達は移動していて、そんなごぶ助達に追いつくためにダンジョン攻略をする事になったんだよな。


 ・・・まぁ結果は、ご覧の通りで俺の敗北だがな。


 ごぶ蔵達には悪い事をしたな・・・というか、俺が死んだら自動的にレモン空間に居るごぶ蔵達も死ぬんじゃないのか・・・?


 有り得なくはないよな!?俺が死んだことでスキルが解除されて外に放り出されるというならいいんだが、そのまま俺のスキルと共に無へと帰す可能性も十分ある!


 ・・・やはり俺は馬鹿だ。俺の所為で長老やごぶ蔵達、そしてエペシュまでもが。


 ゴブゴブごぶごぶゴブゴブごぶごぶ。


 ふふ・・・俺を恨んでいるんだろうな。だから偶に怨嗟の様にゴブゴブと聞こえるんだろう。


 ゴブゴブごぶごぶ。ゴブゴブごぶごぶ。ゴブゴブごぶごぶ。


 すまない・・・すまない・・・。


 ゴブゴブごぶごぶ。ゴブゴブごぶごぶ。ゴブゴブごぶごぶ。ゴブゴブごぶごぶ。



 すまない・・・。



 すまないはごぶ達の方ごぶ。



 ・・・えっ?



 ごぶ達は力になれなかったごぶ。すまないごぶ・・・。



 いや、十分力にはなっていたさ。だって・・・お前達がいなかったら俺の心はもっと荒んでいたかも知れないんだ。



 ごぶ?



 お前達の明るさが俺の心の力になってくれてたって事さ。



 ごぶ。



 はは・・・最後にこの事が伝えられて満足だ・・・。じゃあな・・・。



 いよいよ終わりを迎えたのだろう。



 何時の間にか上下している感覚はなくなり、俺の思考力も段々薄れ・・・ついに俺の意識はプッツリと途切れてしまった。



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