第134話 困惑のわんちゃん

 10階層へと降りた俺は、間違いなく強敵が居ることを確信した。


 それというのも、10階層は降りた直ぐに扉という、5階層と同様の作りになっていたからだ。


「さぁてどんなもんだっと・・・っは!?危ない危ない。『鑑定』っと・・・」


 俺は早速ボスの姿を拝見してやろうと扉に近づいたのだが、もしかして罠があるかもと直前で以前の事を思い出し鑑定を使った。

 だが扉には何の仕掛けもなく、唯の破壊不可が着いた扉だったので俺は胸を撫で下ろし息を吐いた。


「ふぃ~・・・っふ、俺は学ぶ犬なのさ」


 言った後に、正にバカ丸出しの発言だと気づいたのだが・・・まぁ気にしないことにしよう。

 そうして俺は扉に手を・・・かける前にユニークスキルも使っておく。


(あぶねっ・・・今日は使って・・・たんだっけ?偶に忘れるんだよなぁ・・・」


 俺って一応子供だよな?おじいちゃんじゃないよな?とこれまたバカ丸出しの考えを頭の中でしつつ、今度こそ準備は整ったと扉をそっと押し開けた。


 すると・・・


「凝った作りだな・・・っと、居た・・・」


 扉を開けた先は広い空間があり、観客席のような物まである円形の部屋になっていて、地球出身の者ならば『ローマのコロッセオ?』と言ってしまうような作りだった。

 そしてそんな闘技場の中央部に、地面をジッと見ながらポツンと立つモノがいた。



 名前:エリカ

 種族:キメラドール

 年齢:-

 レベル:1

 str:408+200

 vit:415+200

 agi:481+200

 dex:559+200

 int:303+200

 luk:208+200

 スキル:剣術 盾術 再生・中 偽装 格闘術 奉仕 物理耐性・小 状態異常耐性・小

 ユニークスキル:

 称号:迷宮『タマ』の守護者 完成品の玩具



「キメラドール・・・?外見はまんま人っぽいし・・・弱くないか?しかも何でメイド服?」


『鑑定』をかけ確認してみると『守護者』となっていたのだが・・・正直弱かった。いや、弱いというよりも、5階層からガチ魔物に変わった事により、『このダンジョンの『守護者』ともなれば俺と同等位のステータスがあるかも知れない・・・』と身構えていたので、拍子抜けと言った方がいいのかもしれない。


 しかもだ・・・


「何でメイド服なんだYO!いやそうじゃなくて・・・はぁ・・・」


 大事な事なので2回言いました。・・・ではなく、俺が問題にしているのは10階層へと入る前に『ニア師匠、俺の成長見ててくれ!』『頑張るのじゃぞ弟子よ!死ぬでないぞ!』とかそんな感じでちょっとエモいやり取りをしていたので、俺としてはちょっと気恥ずかしいというか気まずいというか、そんな感じになっていたのだ。


(まぁいいや・・・もう色々気にしない!・・・っと、俺の今のステータスはどうだったかな?)



 名前:一狼

 種族:人面犬

 年齢:0

 レベル:6(5↑)

 str:1058(95↑)

 vit:886(90↑)

 agi:1136(110↑)

 dex:982(190↑)

 int:1180(205↑)

 luk:754(60↑)

 スキル:雄たけび 咬みつき ひっかき 鑑定 氷魔法 念話 守護の壁 火魔法 集中 調理 統率 教練 黒風 レモンの入れもん 魔導の心得 索敵 隠蔽 シェイプシフト 話術

 ユニークスキル:ワンチャン 神つっこみ

 称号:元最弱犬 転生者 ダンジョン1階層突破 特殊進化体 群れの長 軟派者



 色々な事を取りあえず気にしないことにして、俺は目の前の敵と対峙する為に自分のステータスを確認して相手と比べてみた。

 だがその結果はやはりというか、俺の方が圧倒的優位だった。


(これは楽勝だな・・・すまんニア、俺の雄姿を見せるのはまた今度だ)


 敵も確認した事だしやるかと、心の中でニアへと謝りながら俺は闘技場の中へと歩を進めた。

 するとそれに気付いたのか、それまで地面を見つめながらポツンと立っていたキメラドールが俺へと視線を合わせて来た。・・・どうやら俺を敵と認識したらしい。


「すまんが倒させてもらうぜキメラドールのエリカさんよ!恨み言は・・・変態転生者にでも言ってくれ!」


 多分色々あるんだろうなと気の毒に思いながら叫ぶと、キメラドールも本格的に動き出した。


「敵を確認しましタ。排除を実行しまス」


 キメラドールは手に持っていた剣と盾を構えながら俺の方へと走って来た。

 なのでそれに対して俺は軽いジャブとして魔法を放ち様子を見る事にした。


「氷の散弾!」


「防御を実行しまス」


「・・・む?」


 キメラドールは俺が放った魔法を盾で防御したのだが、俺の攻撃の方が強かったのか盾を構えたまま後ろへ吹き飛んで倒れてしまった。

 やはりステータスの差が大きいのでこうなるのだろうかと思い、これならやはり楽勝だなと追撃をかけるためにキメラドールの吹き飛んだ先へと近づいて行った。


 するとその時だ・・・



『ゴゴォ~ン・・・』



 なにやら大きなものが落ちる音が後方から響いた。


「何だっ!?」


 一応キメラドールを警戒しつつ音のした方を見ると、そこには大きな鉄の塊みたいなものが出現していた。・・・というか、あの場所は・・・


「入口が塞がれた・・・?」


 どうやら鉄の塊は入口の真ん前に置かれ、入口を封鎖している様だった。

 しかし『鑑定』で鉄の塊を調べてみるが、唯の鉄の塊で壊す事は難しくなさそうだった。


「ならば何の為に・・・?」


 そんな事を考えていると、キメラドールの方にも変化が見られた。


「罠発動を確認しましタ。これより本格的な戦闘行動をはじめまス。椀部、脚部の偽装を解除しまス」


 キメラドールはケロリとした様子を見せながら立ち上がり、そんな事を言った。・・・その直後、手と足が変化を見せた。


「うお・・・なんじゃありゃ・・・」


 俺は思わず唸ってしまったが仕方のない事だと思う。

 何故ならキメラドールの脚がまるで獣の脚の様に、腕にいたっては思わず『ナイスバルクっ!今にも筋肉が弾けそうだよっ!』と言ってしまいそうなムキムキの腕に変わっていたのだ。


「攻撃開始」


「なっ・・・うぉっ!?『守護の壁』っ!・・・わっ!?っちょ!?」


 そんな風に変化したキメラドールを見ていると、奴は攻撃開始と呟いた後に攻撃を仕掛けて来たのだが・・・その速度は先程までとは比べ物にならないほど早かった。

 俺は慌ててスキルを使ったモノの、『守護の壁』で作った結界の様なモノは直ぐに壊されてしまった。


「くそっ!氷の散弾!」


 なのでこちらからも攻撃だと思い、再び魔法を使うも・・・


「防御実行。反撃しまス」


「うがっ!」


 持っていた盾で全て防がれてしまい、そのついでに盾でぶん殴られてしまった。


「く・・・くそっ!コイツ実力を隠してやがったのか!?」


 盾でぶん殴られた後に体勢を立て直し、俺は再びキメラドールに『鑑定』を使った。・・・しかし、その数値等に変化は無く、ステータス上は変わりがなく見えた。


「い・・・一体どうなってるんだっ!?」


「攻撃実行しまス」


 俺の頭は困惑したままだったが、キメラドールが攻撃を仕掛けてきたのでそのまま対応せざるを得なかった。


「うっ・・・ぐがぁっ!」



 こうして計らずとも望んでいた強敵との戦いが幕を開けた。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「大事な事は2回言うYO!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵の衣装が メイド服へと変わります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532


 お詫び:誤字修正 2022/9/8

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