第128話 復活のゴブリンとわんちゃん
「よっ・・・ほっ・・・そんでこいつだけは収納っと・・・」
7層を探索し始めてから3日目になるのだが、探索はそれほど進んでいなかった。
それというのもこの階層、敵と罠が多いのだ。
まぁ敵の方はフレッシュゴーレムしか出てこず、途中から暗殺戦法に切り替えたのだが兎に角数が多く、罠の方も頻繁に違和感を感じることがあるので多いのだろう。
「んー・・・いっそのこと敵は無視していくかなぁ・・・」
そして探索を進めるために隠れながら進もうかなとも考え、今日の探索も微妙な成果に終わるならそうしようと決める。
「うし・・・まぁ今日頑張れるだけ頑張ってみよう。・・・っと、また敵だな。『隠密』」
探索の事を考えていたらまた敵の気配を察知したので『隠密』使い、俺は敵の元へと走った。
・
・
・
「たでーま・・・」
「あ、おかえり一狼」
「おかえりごぶ」
そして結局この日の探索結果も振るわなかった俺は、少し低くなってしまったテンションのままレモン空間へと帰って来た。
「はぁ・・・ん?」
『まじ萎えぽよー・・・』とため息を吐いていたのだが、周りにいた皆は何故か俺とは逆にテンションが高めだったのでエペシュに理由を聞いてみた。
すると「ん」と指を指したのでそちらを見ると・・・
「んん?・・・ん!?長老!?」
「おお、一狼様ゴブ。おかえりなさいゴブ」
「長老・・・進化した?」
「はいですゴブ」
長老の姿が変わっていた!進化した様だ!
どうやらみんなのテンションが高い理由はそれらしく、聞いて見ると、俺がボッシュートしていた敵を長老も倒していたらしい。
「一応儂以外も攻撃を加えてレベルアップをしてますゴブ。なのでその内他の者も進化するかもしれませんゴブ」
「おぉ!イイネ!」
敵が多くて探索が進まず『マジ卍!』ってなっていたが、やっていた事の成果が解った事で俺のテンションは『アゲアゲポヨポヨ!フジヤーマボルケーノ!』になった。
「っふっふぅぅぅ!ウルトラマウンテンゴリラッパー!」
なので思わず叫んだら、その場にいた全員に「?」みたいな顔をされた。
「しーましぇん・・・」
俺・・・疲れてるんだろうか?
「ちょっと長めに休むか・・・っと、その前に・・・」
今日はこの後いつもより長めに休むことに決めた俺だが、取りあえず長老のステータス確認だけはする事にしようと『鑑定』をかける。
名前:
種族:ゴブリンセージ
年齢:26
レベル:1
str:114(59↑)
vit:101(66↑)
agi:94(73↑)
dex:103(53↑)
int:174(102↑)
luk:57(14↑)
スキル:記憶力増加・中 話術 統率
ユニークスキル:修魔
称号:ゴブリン族の賢者 特殊進化体
「お・・・おおぉぅ・・・」
長老のステータスを見た俺は思わず唸ってしまった。
だがそれも仕方ないだろう・・・なんせ内容が凄かったのだから!
「これもワンチャン効果か・・・?」
今日も探索前にユニークスキルは発動させていたので、長老の進化はその効果が出た結果なのかもしれない。・・・なんて思っていたのだが、俺はそれより注目すべき点を見つけてしまった。
「そういえば長老1人で歩いている・・・ってことは・・・おぉ!足治ってる!!」
以前ニアが『進化したらもしかしたら治るかも』とは言っていたが、どうやら長老の足は無事に治った様だ!・・・というか、微妙に肌もツヤツヤになってる?
「はいゴブ。おかげさまで治りましたゴブ」
「よかった!よかったぜ長老!」
「ありがとうございますゴブ。これも一狼様のおかげゴブ」
「いやいやそんな・・・っていうかさ長老?なんかこう・・・若返った?」
「どうでしょうゴブ。確かに体に力が入った気はしますが・・・ゴブ・・・」
「ふむ・・・」
長老のステータスは歳か怪我の所為なのかは解らなかったが微妙に低い気がしていた。
だが体に力が入ったという事はそれが進化によって治り、更に進化したことによるステータス上昇が合わさってこのステータス強化になったのかもしれない。
「ごぶごぶ」
「ん?どうしたごぶ蔵?」
そんな事を考えていたら、ごぶ蔵が近くに寄って来てツンツンと俺をつついてきた。
「長老のお祝いも兼ねて豪勢なご飯にするごぶ?」
「あー、そうだな。それもいいかも。収納してある奴を適当に使って豪華にやっちゃってくれ!」
「ごぶ」
どうやらごぶ蔵も長老の足が治った事が嬉しいらしく、お祝いしようと言ってきた。俺もそれに賛成だったので了承し、ごぶ蔵に豪華な料理を作るように言って食事場へと送り出した。
するとそれを見ていた長老は畏まってしまった。
「儂の為にそんな・・・」
「まぁまぁ・・・いいじゃないか長老。それだけ長老が慕われてるって事なんだぜ?」
「ですがゴブ・・・」
「それにだ、俺も疲れてるから豪華な料理が食べたいんだ。だからいいだろ?」
「ゴブ・・・解りましたゴブ。有り難く皆の気持ちを受け取る事にしますゴブ」
「おうよ!」
適当に理由をつけて長老を説得すると解ってくれたみたいなので、この後ごぶ蔵の料理で『祝!長老快気祝いの会』が開催されることとなった。
俺も実際ちょっと疲れ気味だったので、その会で美味しい料理を食べて英気を養おう。
「楽しみだなぁ・・・あ、そういえば・・・」
どんな料理がでるかなーとワクワクしながら森の方へ行こうとしたのだが、そう言えば長老もユニークスキルゲットしていたなと思い出し、それを鑑定してみた。
『ユニークスキル:修魔
・魔力や魔法に関するスキルが習得しやすくなる。常時発動型。』
「何そのユニークスキル・・・地味だけど、やばない?」
長老のユニークスキルの効果は大変地味なのだが・・・内容はヤバかった。下手をすればチート級かもしれないスキルだ。
「うむ?おぉ、確かに物凄いのじゃ。しかもユニークスキルじゃから、恐らく全ての魔に関する事が覚えられよう」
「・・・やばば」
それは世界最強格のニアも認めるほどで、未だ効果を発揮していないにもかかわらずやばい匂いがプンプンしていた。
(しかしこのスキル、持っているだけだと宝の持ち腐れになるよな)
長老の持つユニークスキルは魔力や魔法が習得しやすくなるが、それらを学ぶ事がないと意味がないスキルだ。
なので俺も勿論知っている限りは教えるのだが、俺の知識は所詮自己流のスカスカ知識なので、ちゃんとした人に教えを受けさせたい。
(・・・ということはだ)
俺はそのちゃんとした人であるニアの方をチラリと見る。
(ニアに教えてもらえばベスト!・・・なんだけど、普通にダメって言われそうなんだよな)
案の上、俺の視線を受けたニアはその意味を察したのか『教えんぞ』みたいな顔をしていた。
だがそこで諦める俺ではないのだ!俺は必殺技を繰り出した!
「ニアお姉ちゃん・・・」
「む・・・?」
俺は当社比200%増のウルウルした目でニアの目を見つめながら、体を摺り寄せ囁いた。
「俺・・・魔法の知識が足りなくて・・・ニアお姉ちゃんに教えてほしいんだ」
「ふむ・・・?」
「賢くて美人なお姉ちゃんに教えてもらったら・・・物凄く助かるなぁ・・・」
「ふむ」
俺が『クゥ~ン』と悲しげに鳴きつつ顔をニアの体に擦り付けると、微妙にまんざらでもなさそうな雰囲気を感じた。
なので連続で『クゥ~ン・・・キュゥ~ン・・・』と鳴きまくり、畳みかける。
すると・・・
「仕方ない童なのじゃ・・・」
(かかったなチョロニアさんめっ!)
見事にニアは俺の演技に騙され、魔法について教えると口に出した。
これで後はついでに長老にも聞かせる許可を取れば完璧!俺はそう信じて疑わなかった・・・のだが・・・
「あ、じゃあ長老には私が教えてあげる」
「ゴブ?おぉ、ありがとうございますゴブ。エペシュ様」
(・・・えぇ?)
傍で話を聞いていたエペシュと長老がそんな会話をし出した。
「ご飯食べた後で教える」
「解りましたゴブ」
(ちょちょちょ・・・えぺしゅたん?)
そしてその話はあれよあれよと進んで行き・・・
「じゃあそういう事で。あ、そろそろ食事場行こう」
「そうですゴブな」
(ちょっと!ちょっとちょっと!)
話がまとまったのか、エペシュと長老は森の方へと歩いて行ってしまった。
そうなると後に残ったのは、『クゥ~ン』と情けない声を上げているショタ(前世では成人)と、それにすり寄られて満更でもない雰囲気を出しているお姉さん(恐らくウン万歳)の2人となり、今更この空気で『やっぱ教えてくれなくていいです』とは言えなかったので・・・
「じゃ・・・じゃあよろしくね?ニアお姉ちゃん」
「うむ」
こうして俺は食事後に、特に受けたくもない魔法の授業を受ける事が決定してしまった。
・
・
・
因みにだが・・・
「でじゃ、本来魔法というのは・・・」
「あ・・・あの、ニアお姉ちゃん?何で俺は毛づくろいをされながら話を聞いているの?」
「ん?嫌なのかや?」
「いや・・・そういう訳ではないんだけど・・・」
「ならよいではないかや?あぁ、次は逆に一狼が妾の毛づくろいをするのじゃ。・・・全身な?」
「・・・え?あ、うん」
「尻尾の付け根付近や耳の先は優しくするのじゃぞ・・・?」
「・・・う・・・うん」
「ふふふ・・・」
こんな感じの、一狼少年とニアお姉さんのオネショタ展開があったとかなかったとか・・・
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「流石長老ゴブ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼と長老が ショタゴブ展開になります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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