第127話 慢心のわんちゃん

 6層のボスを倒し、俺は7層へと降りていた。


「7層は・・・相変わらず遺跡っぽいな。10層までこんな感じって事かね」


 周りの様子を見て俺は呟き、通路の様子もチェックする。

 すると案の上、微かな違和感を感じる場所があった。きっと罠だ。


「流石に罠の程度はあんまり確認したくないから気を付けるだけにしてっと・・・『索敵』・・・敵の反応も『普通』って感じだな」


 敵の気配を探ってみると反応があり、しかも感じる気配もボスみたいな変わった気配ではないのでボス階層とかでもないのだろう。


 気を取り直して、この階層はどれくらいで行けるかなー等と考えつつ察知した気配の方へと進むと・・・居た!魔物だ!



 名前:

 種族:フレッシュゴーレム

 年齢:-

 レベル:7

 str:316

 vit:303

 agi:248

 dex:101

 int:63

 luk:25

 スキル:再生・中 硬化 屍喰らい

 ユニークスキル:

 称号:



『鑑定』をかけてみると情報が出たのだが・・・


「『新鮮な肉のゴーレムフレッシュゴーレム』か・・・成程な」


 敵は名前の通り肉で作られたゴーレムみたいで、見た目は人型をしているのだが皮が中途半端にしかついてなく、まるで見た目は人体模型みたいだった。

 ステータスは6層目の敵とそう変わらず、相変わらずガチ路線の敵だった。


「けどまぁ余裕だな」


【一狼よ、自分が以前より強くなったからといっても油断は大敵なのじゃ。あまり油断が過ぎると命を落とすのじゃ】


「う・・・うっす!」


 余裕だと思っていたらニア先生に忠告されてしまった・・・気をつけよう。


「ふぅ~~~~・・・すぅ~~~・・・よし」


 一度深呼吸をして気持ちを引き締めると、俺はフレッシュゴーレムの前へと歩いて行った。

 すると俺を見つけたフレッシュゴーレムは即座に動き出し、俺の方へと走って来た。


「ガァァアア!」


「ソコソコ素早いけど・・・隙だらけっと!」


 フレッシュゴーレムは知能が低いのか手を前に出しながら真っ直ぐ向かってくる事しかしなかった。

 俺はそれをヒラリと躱し、隙だらけの足へと攻撃を仕掛けた。


「変な感触・・・スキルか?でもまぁ全然切り裂け・・・うわぁ・・・ぐじゅぐじゅなってる・・・きもっ!」


 強さも6層の敵とそう変わらないなーとフレッシュゴーレムを見ると、俺の切り裂きで千切れ掛けていた足の肉が蠢いていた。

 そして千切れ掛けていた足がすっかり元に戻ったのを見て、俺は恐らく『再生』スキルの効果だろうと考えた。


「つっても再生完了までソコソコ時間があるな。長期戦になったらきついだろうが、短期戦で片付けるならまぁ・・・ってやつかな?」


「ガァァアア!!」


 追撃をせずに敵を観察していると、再生の終わったフレッシュゴーレムが再び攻撃を仕掛けて来た。

 しかしその攻撃は先程と同じでただ手を前に出して走って来るだけ。なので俺は当然それも避ける。


「おっと・・・そんでこうするとどうなる・・・火球よ、敵を燃やせ『ファイアーボール』」


 そして俺は避けると同時に今度は両手両足を切り裂き、そこへ魔法をぶち込んだ。


「ファンタジー小説とかだと、再生する箇所に火で攻撃をするといいってなってることが殆どだけど・・・」


「ガァ!ガァァ!」


「正解っぽいな」


 フレッシュゴーレムは傷口を焼かれたからか、手足をばたつかせるばかりで動く事は出来ないみたいだ。どうやら再生はしているみたいだが、極端に再生スピードが落ちているみたいだ。


「こうなれば後は余裕だな。・・・首を落としたら流石に死ぬよな?」


 敵の強さも解ったし後は倒すだけだったのだが、ゴーレムだし首を落としても死ななかったらどうしようと考えてしまった。

 少し考えたが、まぁその時は燃やすかという結論に達し、早速試してみるかと未だもがいているフレッシュゴーレムに近寄った。


「素直に死んでくれよー?そ「ガァァアアア!」んあっ!?」


 首を落とそうと前足を振り上げたらいきなり後ろから衝撃が来て俺は地面へと倒れてしまった。

 一体何がと思っていると、何か体にされている気がしたので首を回してみると・・・


「ガァ!ガァァ!」


「うえっ!?何時の間に!?」


 どうやら新手が来ていたらしく、俺はそれに押し倒された様だ。

 しかもその新手のフレッシュゴーレムは俺の体を掴みながら噛みついていた。何かされている感触はどうやらこれの様だった。


【油断は大敵だと言った傍からやらかしておるのじゃ。能力差があるから大丈夫なものの、同等位の敵だったら今頃致命傷なのじゃ】


「うぐっ・・・はい・・・すいません・・・っおらっ!」


 フレッシュゴーレムの奇襲を見事に食らってしまった俺に、ニア先生からの説教が入るが、まさにその通りだったので俺は素直に謝った後にフレッシュゴーレムを跳ね除けた。


「『索敵』!・・・っぐ・・・いつの間にか近くに反応がいっぱいだ・・・」


 そして直ぐに『索敵』を使って周囲を警戒すると、何時の間にか『索敵』の範囲内に先程まで無かった敵の反応が大量にあった。・・・本当に油断しまくっていたらしい。

 取りあえず俺はその場にいた2体のゴーレムの首を手早く刎ねて倒し、体勢を整える。


「・・・ふぅ、次は油断しねぇ・・・」


 そして気配を大量に察知した方向へと歩いて行った。


 ・

 ・

 ・


「ふぅ・・・取りあえず終わりっと」


【うむ。今回は油断せずにやれたようじゃの」


「うっす」


 先程の失敗を反省して今回は油断せずに敵と戦ったので、俺は無傷の勝利を収めていた。

 真面目やればやはり俺の敵ではなかっ・・・いや、『慢心 ダメ 絶対』だな。


 気を引き締めろー気を引き締めろーと考えながらドロップ品を拾っていると、またしても大量の敵の気配を察知した。


「またか?んー・・・この階層は大量に敵が出て来るコンセプトなのか?」


 1~4階層は欲望が詰まり切った階層だったが、5階層以降はここの主の本気度と実力が伺え、思ったより手ごわい敵なのかもしれないと薄々感じて来た。


「けどここまで来たら行くしかないよな。敵さんも攻撃を仕掛けて来たり、結構アグレッシブな性格っぽいし」


【だが無理だと思ったら一旦引くのも手なのじゃ】


 俺が転生者について呟いているとニアがそんな事を言ってきた。あんなに卑猥野郎をぶっ殺せ!と言っていたのに、気が変わったのだろうか?


「まぁヤバそうなら逃げようと思うが・・・どうしたんだ?変態転生者はやらなくてもいいのか?」


【いや、不埒者は抹殺せよ】


 うん、全然変わっていませんでした。

 まぁ要するに『期限は設けていないからその内やればいい』という事だろう。


【それにじゃ、ここ以外の迷宮を回るとなると迷宮核の力が足りぬかもしれぬのじゃ。じゃからお主は結局不埒者を倒さざるをえないのじゃ】


「成程」


『生理的に無理。だから抹殺』というだけでなく、俺の迷宮核集めにも関わってくるので、結局はここをクリアせよという事らしい。

 まぁ俺としてもエペシュたんを狙われたらたまったものではないので必ずヤるつもりではあった。なのできついと思ったらレベルを上げて再挑戦といこう。


「ま、やれるだけやるわ」


【うむ】



 取りあえず進めるところまで進もう。俺はそう思い、敵の気配がする場所へと向かった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「フゥ~ハハハハ!慢心してこそわんちゃんなのだ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が 慢心の王になります。


 お詫び:ニアの台詞を微修正 最後の方の『ここ以外の迷宮を回るとなると力が足りぬかもしれぬのじゃ』→『ここ以外の迷宮を回るとなると迷宮核の力が足りぬかもしれぬのじゃ』   2022/5/26


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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