第126話 失敗作とわんちゃん
「全くごぶ蔵め・・・」
翌日、俺はダンジョン6層の通路にて愚痴をこぼしていた。原因は勿論、先日のごぶ蔵の発言の所為である。
「まぁ直ぐ誤解は解けたからいいんだけどさ・・・けどもし誤解が解けてなかったら、俺が変態性癖を持ってるみたいじゃないか・・・」
【十分変態だと思うのじゃ。ほれ、いつまでも愚痴を言って腐っておらんでやる事をやるのじゃ。それにごぶ蔵には罰として、強制的に外を確認する作業をさせておるんじゃろ?それでいいではないか】
「まぁ・・・」
俺が先日考えた『敵をレモン空間にボッシュート』、これの問題点の1つであった敵が来るのを見張る作業を、俺は昨日の色々迂闊な事をした罰としてごぶ蔵にやらせる事にした。
元々謎に眷族の力を使い俺のスキルに干渉出来ていたごぶ蔵に協力をしてもらおうとは思っていたのだが、罰という事で強制的にだ。
「ずっと気を張って疲れてしまえごぶ蔵め・・・ふぅ・・・うっし、やるか」
【うむ】
ニアの言う通りいつまでも腐っていてはいけないと思い、最後にごぶ蔵に対して呪詛を吐き捨てた後気持ちを切り替える。
「『索敵』っと・・・えーっと・・・確かこっちは昨日通った道だから・・・」
俺は敵の気配を探った後脳内マップを思い出し気配と照らし合わせ、未だ行っていない方向へと歩を進めた。
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そうして半日ほどサクサクとダンジョンの探索を行い、マッドパペットを見つけては倒し、キリングドールはレモン空間へボッシュートという動きを続けた。
6層目はソコソコ広いらしく、未だボス部屋へと辿り着かないようなので、俺は一旦様子を見にレモン空間へと入る事にした。
「『レモンの入れもん』っと。どれどれ・・・どんな塩梅だろう。かなりガッツリ弱らせてレモン空間へ入れたし、中にはエペシュもいる筈だから問題ない筈だが・・・」
一応最初の3体までは、1体レモン空間に入れる毎に俺もレモン空間へと入って確認はしていたが、そこでは問題なかった。
なのでそれ以降も問題はなかったはずだが・・・
そんな事を思いながらレモン空間へと入ると、多くの視線と一筋の魔力っぽい何かを感じ、俺は慌ててストップをかける。
「・・・おぉっと、俺だ俺」
「あ、一狼だったごぶ」
「おかえり。ごめんね?」
「ああ、別にいいんだが・・・」
手荒い歓迎を受けた訳だが、ごぶ蔵は外の様子を見て俺が入ってくるのを見ていたのではないのだろうか?不思議に思ったのでそれを聞いて見ると・・・
「ごぶ。・・・ごぶごぶ・・・出来たごぶ。エペシュ様、一回出入り頼めるごぶ?」
「うん」
「ん?なんだなんだ?」
ごぶ蔵は何故か『ふふふ・・・』と怪しげに笑いながらエペシュにレモン空間の出入りを頼んでいた。一体何が始まると言うのだろうか?
俺が頭にハテナを飛ばしまくっていると・・・
『ッポーン!』
「!?」
エペシュが外からレモン空間へと入って来た瞬間、空間内に不思議な音が鳴り響いた。
そして俺が吃驚して音の出所を探すためにキョロキョロしていると、ごぶ蔵が俺の体をポンポンと叩いてきた。
「ごぶごぶ」
「ごぶ蔵!?今のは何だ!?」
ごぶ蔵の方を見ると何やら知っていそうな顔だったので尋ねてみたのだが、ごぶ蔵は不敵に笑った後ドヤ顔を決め始めた。
「ごぶぶぶ・・・」
「何だよその顔は・・・」
「今の音はごぶが鳴る様にしたごぶ!」
「は!?」
「本当は外で一狼がスキルを使った時に鳴る様にしていたごぶ!ごっぶっぶっぶ!」
「なん・・・だと・・・!?」
どうやらごぶ蔵、スキルの持ち主の俺よりスキルを使いこなしている模様。これなら確かにドヤ顔を決めたくなる理由も解る。
だがしかし・・・なぐりたい そのえがお。
「っせい!」
「ごぶっひゅ!」
という事で、一発殴っておいた。・・・いや、これはむかつくから殴ったのではないんですよ?
「罰でやらせてたってのに楽してどうするよ!?」
そうです、罰の筈なのに楽していたから怒ったのです。けっしてイラッとしたから殴ったのでは・・・すいません、実は少しイラッとしたからです。
「まぁ・・・ずっと見張ってるのも疲れるし・・・いいや、許す!だけどなごぶ蔵!迂闊な行動は慎むようにしろよ!マジで!下手したら死んでたんだからな?」
「はいごぶ・・・」
「解ったらヨシ!」
一発拳骨ならぬ肉球パンチを食らわせたら溜飲も下がったので、最後に迂闊な行動に注意だけして罰については終わらせる事にした。
しかしだ、便利な機能があると解ったので、俺はこの後も引き続き敵を送り込むことにした。
小休憩をした後それを説明し、俺は再び外へと出ると、再び半日ほど狩りを続けた。
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翌日の朝、俺はレモン空間の外に出ると伸びをした後体を震わせて体をほぐしていた。
「んん~~・・・ブルルルッ。ふはぁ・・・うっし、今日も一日がんばるっずぅぉい!」
どこぞの新人みたいなことを言った後、敵の気配を探り移動していると・・・
「ん?この反応って・・・」
探索を初めて30分もたっていない内に強い反応を捕らえた。
多分ボスじゃないかと思いそちらへと移動をすると案の上、ボス部屋っぽい場所へと辿り着いた。
「ビンゴ!んであそこにいるのがボスだな・・・どれどれ・・・」
名前:
種族:リビングドール・劣
年齢:-
レベル:11
str:217
vit:303
agi:317
dex:201
int:70
luk:20
スキル:腕力強化・中 再生・小
ユニークスキル:
称号:廃棄品
ボスに鑑定を使ったのだが、俺は首を傾げてしまう。
「・・・ん?ボスの癖に弱い?ってああ、数で押すタイプか」
しかしよく見ると敵は複数で、どうやらここのボスは数が厄介なタイプのボスらしい。
だが・・・
「俺にはカモだよっと・・・全てを切り裂け『黒風』。そんでついでに・・・恥ぜよ爆炎、絡みつき燃やしつくせ『ナパーム』」
俺は多数の雑魚が出る戦いは得意なのだ。
俺は『黒風』に『火魔法』で作った魔法を投げ入れる。
すると敵を燃やし尽くす事に重点を置いた想像が良かったのか、新魔法の『ナパーム』は風に混ざり敵に絡みついた。
「上手に綺麗に消失させましたっと・・・」
結果、ボスであるリビングドールは特に見せ場もないまま消滅してしまった。
「あ、何か称号もあったのに確認するの忘れてたな・・・まぁいいか」
あんまりすんなりいったので、称号の事はあまり気にしない事にして、俺はドロップアイテムだけ回収して先へと進む事にした。
「6層に2,3日って事はここからペースが落ちるのかな・・・む、ボロボロの布、外れだ。・・・なるべくなら早くクリアしたいんだが・・・魔石も微妙だな・・・」
しかしこの時、俺はもっと称号の事を気にするべきだったのかもしれない。・・・そうすれば後々もうちょっと慎重に動けただろうから。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
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こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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