第125話 ボッシュートとわんちゃん
「ズバリ、敵を弱らせてからレモン空間にボッシュート・・・突っ込めばいいんじゃないかなと!」
【ふむ・・・】
俺が閃いたナイスアイディアとはそれだった。
これならば安全もそこそこ確保出来つつ、レモン空間内だからエペシュの姿が曝されないので手伝いも気兼ねなく頼める。正に天才的発想だ。
そんな俺のアイディアを聞いてニアも成程と思ったのか褒めてくれたのだが、同時に問題点も指摘してくれた。
【確かにいい考えなのじゃ。しかし一狼よ、それだとレモン空間内の者は常に気を張っていなければならないし、レモン空間内で魔物を倒すとなると・・・お主風に言うと経験値か?それが手に入らないかもしれんのじゃ】
「・・・成程。そこら辺考えてなかったな。・・・ふーむ」
俺は地面に座りニアが教えてくれた問題点を考える。
少しの間考え、これかな?という答えが出たのでそれを話してみた。
「・・・うん。経験値の方は全部送らなければいいかなって感じだな。レモン空間内の人がずっと気を張っていなきゃいけないのは・・・後でちょっと確認だな。ってことで、今日はもう少し進んだら休憩する事にするわ」
【解ったのじゃ】
ニアから教えられた問題点の対処を決めたところで、俺はもう少しダンジョンを進む事にした。
再び『索敵』を使い魔物の気配を探り、罠に気をつけながら歩いて行くと・・・いた。
「またキリングドールだな。2体いるがまぁ余裕だろう」
見つけた魔物はまたキリングドールで、早速飛び出そうとしたのだが、ふと思い止まる。
(いや待てよ?倒す目的なら馬鹿正直に真正面から行かなくてもいいよな?)
キリングドールと戦った先程の戦闘を思い出し、奴をスマートに倒すプランを考える。
少し考え込んだところで良さそうな作戦を思いついたので、試してみようと『隠密』と魔力の操作操作を行い気配を隠す。
そして見つからない様に気配を隠したままキリングドールの背後へと近づき・・・
「オラァッ!っともう一丁っっ!」
脆そうな首へと爪を一閃。そのまま反動をつけてもう一体へも攻撃を加える。
結果、見事に瞬殺・・・いや、暗殺出来た。
「いやぁ・・・やっぱり強力だわ『隠密』からの攻撃。ソロで行動する時は暗殺メインで行くかなぁ」
【まぁ卑怯云々言わず、遊ぶ気もなく狩るだけならばそのやり方は強いのじゃ。しかし同格や格上へそれが失敗した時は小細工無しの戦闘能力が必要になってくるのじゃ。それを忘れるでないぞ?】
「う・・・うっす!楽な脳死プレイばっかりしない様にするっす!」
完全な獣ならば脳死で暗殺狩りでもいいだろうが、こちとら最強を目指すわんちゃんである。地道にコツコツ積み上げていかねば・・・。
ニア師匠の有り難いお言葉を胸に、俺は次の気配を探った。
「んー、あっちに反応があるから行ってみるか」
再び罠に気をつけつつ、気配がある方へと進んでみる事にしたのだが・・・マップ把握スキルとか無いだろうか?
正直敵が居る方ばかりに行っても外れる率が高いので、ダンジョンを探索するのに便利なスキるあったらほしいなぁと思ったのだが、下手にニアに聞こうものならまた不思議な修行をさせられて時間をガッツリとられそうなので二の足を踏んでしまう。
やはりここは大人しくマニュアルマップ把握、別名:根性記憶術で頑張るべきか。
そんな事を考えて気配の元へと進んでいると何時の間にか近づいていたので、気配を消して確認してみる事にする。
「ん?キリングドールじゃないな。どれどれ・・・」
名前:
種族:マッドパペット
年齢:-
レベル:6
str:493
vit:115
agi:162
dex:103
int:37
luk:40
スキル:格闘術 腕力強化・中 狂乱
ユニークスキル:
称号:
そこに居たのは『マッドパペット』という魔物で、何か動きがおかしかった。
「ステータスもstrだけ尖ってて不思議な感じだな・・・」
【ふむ?・・・あぁ、『狂乱』というスキルのせいじゃな。あのスキルは常時発動型で、力を増す代わりに他の能力が下がり理性も無くすのじゃ】
「成程な」
ニアにそう聞いたので狂乱を鑑定してみると確かにその様な事が書いてあり、更に死ぬ間際まで暴れまわる様になるらしかった。
しかしだ、暗殺戦法を使うならば結構カモなのでは・・・?
「やってみるか」
俺は気配を消しマッドパペットの背後に回る。
しかし奴はおかしな動きはしているものの俺に気付いている様子はなかった。
(ほいさっ!)
なのでキリングドールにしたのと同じ様に首へ一閃、頭と胴体を切り離した。
するとマッドパペットはドッと地面に倒れ動かなくなり、そのまま消滅した。
「うん、思った通りだな。死ぬ間際まで動く厄介な奴だが、まともに戦わなければ余裕だ」
【しかしああいう敵と戦っておくのもいい経験になるのじゃぞ?】
「まぁそうだな。次は普通に戦ってみるわ」
まぁ今回のは実験みたいなものだ、次からは助言通りに普通に戦ってみる事にしよう。
俺はドロップアイテムを拾うと、『索敵』を使い次の獲物を探し始めた。
・
・
・
そうしてしばらく敵を狩っていたのだが、この階層にいるのは2種類の敵だけみたいで、他の敵は出てこなかった。
「まぁ今日はこのくらいにしておくか。『レモンの入れもん』」
時間もそこそこ経ち、脳内で作ったマニュアルマップもそれなりに埋まったので、今日はこのくらいにして休むことにした。
そうして俺がレモン空間へと入ると、長老が出迎えてくれた。
「い・・・一狼様、お・・・おかえりなさいゴブ」
「お・・・おぉ?ただいま」
しかし長老の様子は何かおかしく、俺の事を変な目でチラチラと見て来た。何かあったのだろうか?
俺は心配になり長老に何があったのかを聞いてみた。
すると長老は、スッとある方向へと指を指した。
「ん?・・・あ、ごぶ蔵」
そこには俺がボッシュートしたごぶ蔵が、未だに毒が抜けきっていないのかピクピクした状態で倒れていた。
どうやら長老は倒れているごぶ蔵に何があったのか心配だった様だ。なので俺はそれを説明しようと口を開こうとした・・・のだが、その前に長老がペコリと頭を下げた。
「一狼様・・・特殊なプレイをするのは構わないゴブ。ですが後始末を丸投げするのはどうかと思いますゴブ・・・」
「・・・は?」
「ましてやここには女性もいますゴブ。なのであまりアレな事は・・・ゴブ・・・。それにエペシュ様があれを見られたら・・・ゴブブブ・・・」
どうやら長老、ごぶ蔵をヌチョヌチョのビチャビチャ、ラメェェゴブゥゥ状態にしたのが俺だと思っている模様だが・・・そんなわけないだろう!?
なので・・・つい叫んでしまった。
「俺はやってねぇぇええ!!」
するとだ、そんな大声を出したものだからナンダナンダ?と人が集まってしまい・・・
「あ、お帰り一狼。どうしたの?」
エペシュも来てしまった。
エペシュは集まっている人だかり・・・ゴブだかり?に疑問を感じて尋ねて来たが、特に何にもないのだ。唯あるのは長老の誤解だけ。
なのでそれを説明しようとする。
「ただいま・・・。いや、実は・・・」
「ご・・・ご・・・ぶ・・・」
「「「・・・!?」」」
「ごぶ蔵・・・?どうしたの!?」
「ら・・・らめごぶぅ・・・い・・・ちろ・・・」
「「「・・・!?」」」
「い・・・一狼・・・」
説明しようとしたのだが・・・タイミング悪く変な事を呟くごぶ蔵のせいで、場が騒然としてしまい、俺は全員から変な目で見られてしまう。
「ご・・・誤解だぁぁあぁぁあ!!!」
俺は心の底から魂の叫びを発した。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「らめぇぇごぶぅぅ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 女騎士になります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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