第124話 ガチ階層とわんちゃん

「ご・・・ごぶ蔵ぉぉおおおお・・・ぉおお?」


「ら・・・らめぇぇごぶうぅぅ!」


「・・・」


 少し前のフラグを見事回収して罠にかかってしまったごぶ蔵を襲った物は・・・触手だった。



『迷宮罠:触手

 ・力強い触手で獲物を絡めとる罠。粘液に媚毒、麻痺毒有。』



「ご・・・ごぶぅぅん・・・」


「・・・ボッシュート」


 俺は何かクネクネし始めたごぶ蔵を触手から引っぺがし、水をぶっかけてからレモン空間へと突っ込んだ。


【なんじゃ、ごぶ蔵は一緒に行かさんのかえ?】


「ああ。取りあえず今日はいいや」


 あの状態のごぶ蔵を連れて歩くと俺の精神が持たないんだ。解ってくれたまへ。


 という事で、6層は俺がソロで行く事にした。

 まぁ途中まで偵察代わりに進んで、ごぶ蔵を連れて来て大丈夫そうなら、明日途中からごぶ蔵を連れて再開しようかなとは考えている。

 それをニアに説明すると・・・


【うむ。好きにするが良いのじゃ】


 との事だった。


「おう。って事で出発っと」


 俺は偵察を進めるために奥へと進む事にして『索敵』を使う。

 すると即反応があったので、そちらの方向へと向かうついでにダンジョンの様子を確認していく。


「何か妙に壁や天井、床が綺麗だな」


 6層は1~5層と違い、妙に壁等が綺麗だった。

 その為洞窟というより、遺跡といった方が良さそうな感じになっていた。


「5層でガチの魔物出してきたし、これは本気出してきたっぽいな」


【なら一発目の罠はどう見るのじゃ?】


「本気の中の一滴のユーモア的な・・・?」


 気を引き締めたところで突っ込まれてしまったが、俺にも解らんよ!

 まぁそれはこれから出て来る魔物で解るだろう・・・という事で、俺は反応があった方へと歩を進める。


 すると・・・


「居たな。『鑑定』」



 名前:

 種族:キリングドール

 年齢:-

 レベル:6

 str:190

 vit:283

 agi:319

 dex:288

 int:105

 luk:33

 スキル:格闘術 硬化 地魔術

 ユニークスキル:

 称号:



 居たのは顔が無く関節もボールジョイントになっている人型の魔物で、名前は『キリングドール』らしい。


「そしてやっぱりガチだな。5層のボスほどではないけど大分強いわ」


【うむ。しかし何故全てこの感じで来ぬのじゃ・・・。ここで出せるという事は1層目からイケた筈じゃろうに・・・】


 それはきっと男の浪漫なんですよニアさん・・・と、流石に口には出せなかったので心の中でだけそう思っておく。


「とまぁ・・・普通に戦ってみるか」


 敵の戦闘能力を知りたかったので俺はわざと自分の存在をアピールし、戦闘態勢を取らせてみた。


『カタタ・・・カタッ・・・キュィ・・・』


 するとキリングドールの全身を土が覆って鎧みたいになった。恐らく土魔術であろう。


「けど発動遅いな・・・どれどれ・・・」


 相手の体勢が整ったところで俺は接近する事にし、ゆっくりと歩いて行く。

 しかし向こうもヤル気なのか、こちらへと走って来た。


「ふむ・・・ほいさ」


 キリングドールは槍の様に変化させた両手を突き出してきたが、俺はそれを叩き落とす様に手で払った。

 するとスキルも使っていたのか・・・


『バギィッ』


「ソコソコ硬いな・・・」


 槍の様な両手は壊れたのだが、それにはそこそこの力を入れなければならなかった。

 ならば体の方も同じかと思い、手を払われてバランスを崩しているキリングドールへと攻撃を加えた。


『バギギィッ』


「体もか・・・スキルがあるからかステータス以上に強く感じるな」


 俺は消滅したキリングドールを見てぽつりと呟いた。

 倒す事自体は簡単だったが、中々強力な敵であったように感じられたのだ。


「んー・・・ごぶ蔵のレベリングは出来ない事もないが、少し危険かもしれんなぁ・・・」


 ごぶ蔵のレベリングはここまでかなと考えていると、ニアが念話で話しかけて来る。


【ごぶ蔵のレベリングならばエルフの小娘に守らせればよいのではないのかや?】


「エペシュをこのダンジョン内で出したくない・・・なので却下だ」


【この階層からは阿呆な罠も魔物もなさそうなのじゃ、それでもかや?】


「おう・・・万が一に備えてだ。それに俺達の様子を見ているかもしれない転生者に目を付けられてもあれだしな。ニアだってそう思ってるから未だ隠れてるんだろ?」


【うむ。きっと卑猥な奴は妾を見たら真っ先に目を付ける筈じゃからの。一狼もそう思うじゃろ?】


「そうっすね」


 俺は自分の美貌に自信満々ネキのニアに対して適当に返事をするが・・・ゴリラですらいけそうな変態野郎だからな、有り得ないとも言い切れない。

 そんな変態上級ケモナーの転生者の居る場所に女神を出せるかっ!女神は俺のレモン空間に匿わせてもらうっ!と心の中で硬く決意したわけだが、ふと思った。


「ふむ・・・んー・・・ありかもしれんな・・・」


【ん?どうしたのじゃ?】


「いや、ちょっとナイスアイディアかも知れない事を閃いてな?」


 最近も悪魔的発想を思いついたわけだが、ここで再び俺の中に凄い発想が生まれてしまった。

 なのでフフフと笑っていると、ニアが声?を震わせて念話を伝えて来た。


【ま・・・まさかお主・・・妾にも蜂蜜をかけて舐め回す気かやっ!?】


「・・・え?」


【ど・・・どどど・・・ど助平めっ!恥をしれい!】


「・・・え?いや、そんなこと思ってないんすけど・・・」


【よ・・・よくよく見れば助平な事を考えておる目なのじゃ!やはり幼くても雄は雄なのじゃ!いくら妾が美しいからといってじゃな・・・・・・】


 ニアさんは俺が思いついたことがニアさんに対するドスケベなアイディアだと思っているようだが・・・俺そんなケモナーじゃねぇっすよ!?

 確かに前にバブみを感じてオギャリかけた時はあったが、決してニアの体を狙った事は無いのだ。

 なのだが・・・


(流石に『お前の体に何か興味ないわ』とか言ったらガチ切れされそうだな)


 自分の美しさに自信があり、プライドも高いニア様である。そんなこと言おうものならボコボコじゃ済まなさそうだ。

 なので俺は、今にだ俺の事を『助平助平』と言っているニアの念話が途切れたところで、久しぶりの必殺技を使う事にした。


「すまなかった麗しのレディー、だが聞いてくれ。確かに『ニアの鼻先に蜂蜜を塗り付け、その後鼻をこすり合わせてぬちょぬちょした後なめ合う』事は妄想したが、俺が今回思いついたのはそうじゃないんだ」


【やっ・・・やはりそんな事を考えていたのじゃな・・・ん?だが今回思いついたことは違うとな?】


「ああ、違う。今回考えたのは真面目な事だ。だから俺が妄想した事は一旦忘れてくれ。それは後々考えようじゃないか、な?」


【す・・・助平め・・・まぁよいじゃろう・・・。で、お主が考えた事とはなんなのじゃ?】


「ああ、それはだな・・・」



 今回考えた俺の天才的発想・・・それは・・・



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「鼻に蜂蜜ぬちょぬちょ・・・」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 蜂蜜まみれになります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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