第122話 真面目に探索するわんちゃん

【さぁ、キリキリ目標に向かって動くのじゃ助平】


「うっす」


「ごぶ?」


 俺の天才的発想をニアに見咎められた翌日、俺達は第4層へと降り立っていた。


「4層目も洞窟タイプか。また敵だけ変わるパターンか?」


【ここを管理しておる変態は、魔物は卑猥なモノを創るくせに戦法は堅実っぽいようじゃな】


「あー、っぽいかもだな?となると、そろそろ罠とかも出て来るかもだな」


 数々の卑猥モンスターを製作したと思われる転生者、彼は変態っぽいが戦法等の考え自体はステレオタイプらしく、前世のゲームであった様なダンジョンを作っている様だ。

 この考え、一般的には間違っていないのだろうが・・・


(正直人も来ないような魔境地帯でこんな戦法取る意味ないよな?害になる様な敵しか来ないんだから、最初から殺しに来ればいいのに・・・)


 前にポンコにチラッと聞いた事があるのだが、ダンジョンは人や魔物を養分にすると成長が促されるらしい。

 その為一般的なダンジョンだと、最初は緩い設定にして獲物を誘い込む戦法を取る事は確かに多いらしい。・・・だがしかし、この魔境地帯の様なほぼダンジョンから出て来たモンスターしか居ない地帯ではそれは悪手だと思うのだ。


(なんせダンジョンから出て来たモンスターは栄養にならないらしいからな・・・)


 理由は定かではないのだがどうやらそうらしく、ダンジョンモンスターをダンジョン内で倒してもただドロップが出るだけらしい。


(それ狙いなのかもしれないか。・・・っとまぁそこらの事情はどうでもいいか)


 少しダンジョンについて考えていたが、こちらが簡単に攻略できるならどうでもいい事だろう。

 俺はそこら辺の事を頭から追い出し、魔物の気配を探った。


「んーまだ俺の探索範囲には敵がかからないな。って事で罠に気をつけながら道を進もうか」


「解ったごぶ」


「・・・ごぶ蔵は俺の上に乗っておいてくれ」


「解ったごぶ?」


 罠+ゴブリン=大成功。という図式しか見えなかったので、ごぶ蔵は取りあえず俺の背中に乗せることにした。これなら大丈夫だろう・・・多分。


「いいか!?ぜぇ~ったいっっ!俺の背中の上で大人しくしてるんだぞ!?降りるのは敵を倒すときだけだからな!?」


「・・・ごぶ?・・・任せるごぶ!」


 振りじゃねぇからな・・・ごぶ蔵。


「・・・なら出発だ。ほれ、乗れごぶ蔵」


「ごぶ」


 俺はごぶ蔵を背中に乗せるとダンジョンを進み始めた。


 そうして『探索』も使いつつ普段より注意しながら歩いていると、ふと前方の床に違和感を覚えたので立ち止まる。


「ん・・・?んー・・・」


「どうしたごぶ?」


「もしかしたら罠があったかもしれん。出でよ氷塊」


『・・・ズーン』


 違和感があった場所へ魔法を使い氷塊を落とすと、地面で止まらずにそのまま下へと落ちて言った。

 注意しながら近づき、その場所を見てみると・・・


「落とし穴だな」


「ごぶ。しかも底には液体があるごぶ」


 どうやら違和感を感じた場所には落とし穴があったみたいで、氷塊は落とし穴の底へと落ちていた。

 しかも底には液体があり、鑑定をしてみると媚薬効果と麻痺効果がある液体だった。


「・・・ってことは・・・来たか」


「ごぶ?」


 殺傷目的でなく捕獲目的の罠っぽいので、もしかしたら?と思っていたら案の上、獲物を回収しに魔物がやって来た。


「うじゅるじゅる・・・じゅる?」


「・・・」



 名前:

 種族:ローパー

 年齢:-

 レベル:5

 str:31

 vit:40

 agi:25

 dex:108

 int:35

 luk:8

 スキル:巻き付き 媚毒粘液 麻痺粘液 拘束 マッサージ

 ユニークスキル:

 称号:



 コイツは転生者の眷族に違いない・・・!だって、スキル構成と見た目がなんかあれなんだもの。


「うじゅる!」


「ごぶ!?」


 そして何やらこの卑猥眷族、ごぶ蔵に興味津々な気がするのだが・・・人型ならなんでもいいのか?


「まぁうん。汚物は消毒じゃね?・・・燃え上がれ、フレイムスロワー」


「じゅばぶぅぅぅ!?」


 ヒャッハー!卑猥モンスターは消毒だぁー!と心の中で叫びつつローパーに魔法で攻撃を仕掛ける。

 ローパーの体はぬめぬめてかてかした粘液に塗れていたので効果が薄いかなと思い、『ならば燃えるまで燃やせばよかろうもん』といつもより多めに燃やしてやった。


「っふ。ヒワイ コレデ コンガリィ」


 ステータス差があったので敵はあっさりと燃え尽き、正直『弱ファイアー!』とかでも良さそうだったが・・・まぁいいだろう。


「まぁこれで罠があるって解ったから気を付けて進もう」


「ごぶ」


 今回は非殺傷の捕獲罠だったが、もしかしたら殺傷用の罠もあるかもしれないので、俺達は罠に気をつけながら進む事にした。


 ・

 ・

 ・


「あっさりだな」


「ごぶ」


 4階層は罠もあるからか、それほど魔物が配置されていなかった。居たとしても1~3階層の魔物で、少しレベルが高くなっているくらいだったので楽勝だった。

 そしてボスはロローパーというローパーの進化版が1体と普通のローパーが3体いたのだが、速攻燃やして終わらせた。・・・だって、ほっといたらごぶ蔵が捕まって『らめぇごぶぅ!』とか言う未来が見えたんだもの。


「んじゃ5層へ行くか」


「ごぶ」


 という事で俺達はサッサと5層へと歩を進めたのだが、5層に降りたところで少し顔を顰めてしまった。


「扉・・・」


 この階層を降りてすぐ扉という光景に、俺はスライムダンジョンであったことを思い出してしまう。


(あの時は転移罠が仕掛けてあって、飛ばされた先で酷い目にあったんだよなぁ・・・)


 それはつい最近起きた事だったので、未だありありとあの臭さが思い出されてしまった。


「げろげろだわまじで・・・って事で、細心の注意を払ってっと・・・」


 また罠が仕掛けられているかもしれないので、それを調べるために扉を鑑定してみる事にした。



『迷宮施設:扉

 ・両開きの扉。破壊不可。』



「うん。それは知ってる」


 罠の有無を教えてくれるかと思ったが期待外れの結果だった。

 なので次は魔法をぶち込んでみたのだが・・・


「何も起こらんな」


 氷の弾丸を扉にぶち当てても何も起こらなかった。これは罠が無いという事だろうか?

 俺は何が起きてもいいように身構えながら扉に近づき、恐る恐る扉へと触れてみる。


「・・・ふぅ。罠は無いっぽいな」


 どうやら問題なさそうなので、そのまま扉を押し開けて中へと入る。

 すると・・・


『ポッポッポッポッポッポッ・・・』


 何故か壁に掛けられた燭台に火が灯り、部屋を明るく照らし出した。


「・・・RPGゲームの演出かよ・・・」


 等と思っていたら、上から何かが降って来た。


「なんっ・・・!?って・・・まじでRPGゲームチック!っていうかあれ!?」


 上から降って来たのは多分ボスであろう魔物だった。

 その魔物はトカゲの様な外見をしており、とても大きな体をしていた。それはまるで・・・


「と・・・取りあえず鑑定だ!」



 名前:

 種族:ドラゴンモドキ

 年齢:-

 レベル:13

 str:413

 vit:406

 agi:229

 dex:261

 int:171

 luk:84

 スキル:腕力強化・小 物理耐性・小 咬みつき 雄たけび

 ユニークスキル:

 称号:



 その一見『ドラゴン』の様な魔物を鑑定してみると、ドラゴンモドキとなっていた。

 俺はふぅ・・・と息を吐きホッと胸を撫で下ろす。


「ビビった・・・マジでドラゴンかと思った・・・。っていうかさ・・・」


 俺はチラリと部屋の中央でこちらを見下ろすドラゴンモドキを見やり呟いた。



「いきなりガチになりすぎじゃね?」



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ガチで卑猥って事?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ドラゴンが 出ます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る