第121話 閃きのわんちゃん

「飲みこみ切り裂け『黒風』・・・っと、じゃあよろしく皆」


「了解ですゴブ。皆の者聞いたゴブ!?作業開始ゴブ!」


「「「ごぶ!」」」


 ん?何をしているのかって?


 蜂蜜狩りですが・・・何か?


 いやいや聞いてくださいよ。昨日蜂蜜をゲットしたじゃないですか?あれを使って作ったごぶ蔵のスイーツが好評でしてね・・・まぁそういう訳ですわ。

 因みにスイーツ大好き犬系女子ことニア様からも『妾は蜂蜜菓子を所望するのじゃ』とのお達しがありましたので調達しない訳にはいかないんですよ。


【お主も『ウメェェェイジングッ!これは味の産業革命やっ!』とか言って喜んでおったじゃろうに。決して妾だけのせいじゃないのじゃ】


「はい、そうでした。すいません」


【うむ。しかし流石は料理魔法、いつも以上にごぶ蔵の作るモノが美味しく感じたのじゃ。もし他の者が作る蜂蜜菓子じゃったら、ここまで食べたくもならん筈なのじゃ】


「ほう・・・そこまでか・・・」


 元から才能があったごぶ蔵にスキルまで加わった事で鬼に金棒となったわけか。恐ろしい奴になったもんだごぶ蔵・・・


「一狼様、残党の処理及びアイテムの回収が終わりましたゴブ」


「お、ありがとう長老。でも長老はあんまり無理しないでくれよ?怪我はもう大丈夫とはいえ片足なんだし・・・」


「有りがたきお言葉ですゴブ。しかし無理はしていないので大丈夫ですゴブ」


 ニアと話していたら長老から作業が終了したとの報告を受けた。無理はしてほしくないものの、こういう時は頼りにせざるを得ないんだよな。


「うぅむ・・・あ、ニア質問何だが・・・いいか?」


【うむ?まぁ言ってみるのじゃ】


「進化したら長老の足って治ったりするか?」


 俺は長老の足を見ていてふと思いついたことをニアに聞いてみた。・・・進化とは体を作り変えるモノ、そういう事もあるんじゃないかと。


【それは進化してみない事には何とも言えないのじゃ。失った部位が治る例もあれば治らぬ例もある、こればかりは神くらいじゃないと解らぬ事なのじゃ】


「そうか・・・」


 俺は長老を見て鑑定をかける。



 名前:

 種族:ホブゴブリン

 年齢:26

 レベル:9

 str:55

 vit:35

 agi:21

 dex:50

 int:72

 luk:43

 スキル:記憶力増加・中 話術 統率 

 ユニークスキル: 

 称号:ゴブリン族の賢者



 レベルが9なので、後1若しくは6上げれば進化出来るかもしれない。ちょっときついかもしれないが頑張ってあげてもらおう。そうすればもしかしたら・・・


「長老、なるべくトドメを刺す作業に加わってレベルを上げてくれ!」


「ゴブ?解りましたゴブ」


 進化の可能性に賭けてみたかったので長老へとそう頼み、俺は『ワンチャン』も発動させておく。まさに使いどころだろうからな!


 ・・・と、ここでそろそろ突っ込みを入れてみるか。


 長老パネェな!


 実は今初めて長老のステータスを見たのだが、凄い称号をもっていたものだ・・・



『称号:ゴブリン族の賢者

 ・叡智あるゴブリンに送られる称号。知恵に補正が掛かる。』



 称号を鑑定してみるとこのように出た。賢いのに更にブーストが掛かるとか凄い称号だ。だがしかし、長老の賢さを見ると納得ではある。


「だってゴブリンらしからぬ感じなんだもの・・・」


「ゴブ?いえいえ、儂はただのゴブリンですゴブ」


 俺の呟きに長老は謙遜してお辞儀してくるが・・・そういうとこやぞ長老!

 ただのゴブリンはなぁ・・・こういうこと言われてもアホ面で首を傾げるだけなんだよ!


「ふぅ・・・まぁいいや。終わったのなら次にいこう。次に蜂蜜が確保できる機会があるかもわからないから、根こそぎ取らなきゃいかんからな」


「解りましたゴブ。皆の者!アイテム持って住処へ撤収ゴブ!」


「「「ごぶ!」」」


 ここでゴブリンの事をいつまでも考えている訳にもいかないので、俺は移動する事にした。

 長老達がレモン空間へと入ったのを確認すると、『探索』を使いながら猛スピードで走りパラライズビーの巣を探していく。・・・因みにだが、今回はスピード重視でごぶ蔵もレモン空間へと入ってもらっているので、かなりの速度を出している。


 こうして俺はこの日、3階層を隅から隅まで走り回った。


 ・

 ・

 ・


「という事でシェフごぶ蔵、料理を頼むぜ!」


「任せるごぶ!美味しく仕上げるごぶ!」


 3階層を回り終わった後、少々早いがこの日の探索はここまでとして俺はレモン空間へと入っていた。

 まぁ偶にはのんびりするのもいいだろうと思ったのだ。決して蜂蜜をペロペロしたいからではない。多分。いや恐らくきっとメイビー。


「直ぐに出来上がりそうだが、それまでは何をするかな・・・」


 本当に蜂蜜をペロペロしていたらいろんな人から怒られそうだったので流石にそれはしない事にして、俺はごぶ蔵の料理が出来るまで何をしようかと考えた。


 その時・・・俺の頭に天才的な閃きが生まれた。


「うむ。うむうむ」


「如何したのじゃ一狼よ。おかしな顔をして?」


「ナンデモナイデスヨ?あ、そうだにあさん、よければごぶぞうのりょうりをちぇっくしてきてください。ぐるめなにあさんのじょげんがあればぱーふぇくとなしあがりになるはずです」


「うむ?まぁよいのじゃが・・・頭でも打ったのかや?」


「いいえ?だいじょうぶです。さぁおはやく!」


「うむ、ならばそうするのじゃ。出て来る料理を楽しみにしておくが良いのじゃ」


「はい」


 ニアは俺の言う通りごぶ蔵の所へ行ったが・・・俺の天才的閃きは『ニア監修ごぶ蔵シェフの料理』等ではなく、もっと素晴らしいものである。


「ぐふっ・・・うへへ・・・」


 俺はその閃きを実行する為にとある場所へと向かうのだが、これから起こる事を考えると自然と笑みがこぼれてしまう。


「ぐひひ・・・おっと・・・いかんいかん、心を抑えるんだ俺・・・ぐへへ・・・」


 完全不審者みたいな笑いを浮かべながら歩いていると、俺は今回の目的である1人の人物の元へと辿り着いた。


「やぁエペシュ」


「一狼?どうかした?」


 一体エペシュと俺の天才的閃きに何の関連があるのかって?それは黙って見ていればその内解るだろう。


「今さ、蜂蜜を取り終わって帰って来た所なんだ」


「今日も一杯取れた!?」


「勿論さ」


 エペシュも昨日蜂蜜を美味しそうに食べていたので大好物なのだろう、彼女は嬉しそうに笑った。

 それに返す様に俺も笑いかけながら喋る。


「それでさ、実は俺、蜂蜜の凄い裏技を知ってるんだ」


「裏技?」


「うん。実はさ・・・蜂蜜って・・・美容にとってもいいんだ」


「うん?そういう効果も確かにある。でもそれが裏技?」


「いやいやそんなまさか!裏技って言うのは、食べる以外の美容にいい方法の事なんだ」


「そうなんだ?でもあんまり興味ない」


「ふむ」


 まぁナチュラルビューティー種族のエルフであるエペシュがそう言うとは思っていたが、ここで下がっては俺の計画に狂いがでる。押せ押せだ俺!


「でも試してみてもいいんじゃないか?美容にいいって事は体にいい。つまりは強く健康になる!という事はご飯もより一層美味しく食べられるって事だ!」


「なるほど?」


「って事はつまり!蜂蜜もより一層美味しく食べられるって事だ!」


「なるほど」


「更に快眠で寝起き爽やか!息スッキリ!日々の食事も最高に美味い!俺の毛並みもモッフモフ!」


「なるほど!」


「って事で試してみない?」


「うん!」



 かかったっ!このままイクッ!



「で、やり方なんだけど、超簡単なんだよねー」


「そうなんだ?」


「うん、先ずはこうやって蜂蜜用意するじゃん?」


「うん」


「んで、腕出して?」


「こう?」


「そうそう・・・んでこうやって・・・」


 俺は取り出した蜂蜜をエペシュの腕にとろ~りと垂らした。


「これで?」


「これで・・・次はこう!ペロペロ!」


「舐めるんだ?」


「犬系魔物の蜂蜜を合わせると特殊な効果があって・・・ペロペロ。こうアレな粒子があれであれな効果が合わさってあれになるんだ・・・ペロペロ」


「ふぅっ・・・っん?・・・ちょっとっ・・・んっ・・・くすぐったい・・・」


「我慢我慢・・・ペロペロ」



 う・・・UMEEEEEEEE!エペシュたんの蜂蜜掛けUMEEEEEEE!



 そうです、俺の天才的発想とは『エペシュたんに蜂蜜掛けてペロペロしちゃおう』です。


「ペロペロペロペロ・・・・・」


「んっ・・・んんっ・・・」


「ペロペロペロロロロロロ」


「あうっ・・・んっ・・・んふっ・・・」



 UMEEEEEEEEよおおおおお!・・・しかしだ、これはまだ序盤である。



「ふぅ・・・さて次は本番だ」


「ふぅふぅ・・・ほんばん?」


「ああ、体全体にやった方が効果があるからネ」


 そうです、本番は腕だけじゃなく・・・体全体を味わおうという作戦です。うへへ・・・


「さぁ・・・全身に蜂蜜を塗る為に服を・・・・・・」


「服を?どうするのじゃ?」


「それは勿論・・・・・・・着ます」


 いざ黄金郷へ!と思っていると、俺の全身が危険を訴えてきたため慌てて答えると・・・目の前にニアがスッと出て来た。


「料理が出来たのじゃ」


「う・・・うっす・・・」


「蜂蜜料理!先行ってる!」


「うっす・・・」


 ニアが料理が出来たと言うと、エペシュはわーい!といった感じですっ飛んでいった。

 俺は迂闊に動けず固まっていたら、ニアがニッコリと笑いかけて来た。


「行くぞ助平」


「うっす・・・」



 許された・・・のだろうか?


 俺にはそれを確かめる事はできず、無言で歩くニアの後をトボトボとついて行く事しかできなかった。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

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 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

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