第120話 普通の魔物?とわんちゃん
「ご・・・ごぶ・・・もうお嫁に行けないごぶ・・・」
「うんうん、そーね」
綺麗なフラグ建設からの見事な回収を見せたごぶ蔵を助け出したのだが、以外にもショックを受けていたごぶ蔵は地面に蹲っていた。
だが俺的には「はいはい、たいへんだったねー」と棒読みしてしまう位に興味がなかった。
「さて・・・ボスも倒したし次に行こう」
「ごぶ・・・そうごぶな」
だってこの種族ってば能天気だからすぐに立ち直るんだもの・・・心配する甲斐がないわ。
という事で、俺達は3層へとつながる通路を進み、3層目へと辿り着いた。
「見た目的には変化があまりないな。1,2層と同じく洞窟タイプだな」
3層目まで降りて来たがダンジョンのタイプに変化はなく、このダンジョンを仕切っているであろう転生者は魔物だけを重視するタイプなんだろうか?
「まぁ注意はして進もう。・・・解ったよなごぶ蔵?」
「ごぶ?大丈夫ごぶ?」
「うん、そーね」
大丈夫ではなさそうなので俺が注意しよう・・・。
ごぶ蔵の大丈夫という言葉が信用ならなかったので、俺の背中にごぶ蔵を乗せながら進んでいると、早速敵の気配を察知した。
念の為に慎重に進み、遠くから敵の姿を確認する。
「ん、見た事ない奴だな『鑑定』」
名前:
種族:パラライズビー
年齢:-
レベル:3
str:33
vit:18
agi:52
dex:19
int:14
luk:10
スキル:麻痺毒針 警報
ユニークスキル:
称号:
「普通の魔物だ・・・」
鑑定した魔物はこの卑猥ダンジョンには珍しい普通の魔物だったので、俺は驚いたのだが・・・
【ふむ・・・あの種か・・・】
ニアの微妙な言い方で普通の魔物ではないのだなと悟った。
「あのパラライズビーって奴なんかあるのか?」
【あの種事態には何もないのじゃ。唯、あの種によく寄生しておる種がおっての、この迷宮の特色から言ってその種が寄生しておるんじゃないかと思ったのじゃ】
「ほぉ・・・?何て奴なんだ?」
【『パラサイトビー』というのじゃ。パラライズビーが麻痺させて運んできた獲物に卵を産み付けて苗床とする魔物なのじゃ】
「成程・・・いるだろうなソレ・・・」
だってなんか卑猥っぽい魔物なんだもの・・・絶対いるわこれ・・・と、ある意味このダンジョンの主を信用している俺は思った。いなかったら嘘だね、うん。
とはいえ、別に強い魔物でもないらしいので、そこまで気にする事もないだろう。
しかしこいつら、群れで生息する魔物らしく、ごぶ蔵だけでやらすのは危険と判断し俺も手を出す事にした。
取りあえずあの働き蜂っぽいのは仲間を呼ばない様にサクッと倒そう。
「っちょいやっ」
俺も強くなったもので、前足で軽く叩いただけだったのだが・・・
「ぺちゃんこごぶ。あ、消えたごぶ」
敵は壁に叩きつけられて『Oh...』と言いたくなるような状態になり、やがてドロップアイテムへと変わっていった。
「まぁこんなもんよ。でもこの先もごぶ蔵でもヤレそうならヤッてもらうぜ?いいよな?」
「勿論ごぶ!料理の腕を磨くごぶ!」
先程の様に俺が敵を倒していってもいいのだが、ごぶ蔵のレベルアップもしてほしかったのでそう提案をすると、幸いにもごぶ蔵はノリ気みたいだった。
なので、いけそうなら俺が弱らせて、ごぶ蔵にとどめでも刺してもらおうか。
そんな事を考えながら進んでいると、あの働き蜂の巣らしき気配を察知した。ナイスタイミングである。
俺達は極力静かに巣らしき気配の方へと進み、気配の元へと近づくとこっそりと様子を伺った。
「おおぅ・・・何となく解っていたがパネェな・・・」
「ブンブン五月蠅いごぶ・・・」
【虫型魔物によくある、1匹1匹のステータスの弱さを数で補う、そんなタイプの魔物なのじゃ。まぁ一狼からするとカモなのじゃ】
「あー・・・確かにそうか・・・」
パラライズビーの巣は小部屋になっている場所にあり、部屋の中を蜂がブンブンブンブンと凄い数飛び回っていたのだが、ニアの言う通り俺にはカモっぽい敵だった。
何故なら・・・
「んじゃま・・・切り裂け黒き風よ!」
『ビュゴォォォォオオオオ!!』
俺は多数の範囲攻撃を持っているからだ。
今回は『黒風』を使ったが、他にも『火魔法』や『氷魔法』もあるので、雑魚を殲滅する手には事欠かないのだ。
そして今回『黒風』で一気に攻撃をしたわけだが・・・
「ん、良い感じになったな。ごぶ蔵、地面に落ちてるやつらにとどめを刺していってくれ」
「任せるごぶ」
実は威力は抑え目で撃っていた。何故かって?それはごぶ蔵の経験値稼ぎに丁度イイと思ったからだ。
まんまと目論見通りになりごぶ蔵が落ちている蜂にトドメを刺していると、残っていた巣の方から音が聞こえて来た。
『ブゥゥゥンン』
「まぁ当然だよな」
元々巣まで壊すつもりで撃っていなかったので、巣の中に居た奴らは無傷だったみたいだ。そいつらは元気に巣を飛び出してくると猛スピードで俺達へと向かってきた。
「けどまぁ・・・無駄無駄っと・・・あ、ごぶ蔵は頑張って落ちてる敵にトドメさしてくれよ?今から追加がいくからな?」
「ごぶっ!?ごぶっ!ごぶっ!」
猛スピードと言ったが、俺からしたら遅い動きなので前足でペシペシと地面へ落としていく。
正直範囲魔法等使わなくてもステータス差があるので楽勝なのである。・・・まぁ数が多いと面倒なので結局は使うのだが。
「という事で・・・出番です先生」
『ビュゴゥッ!』
黒風先生に出番を乞い次々と巣から出て来る新手を落としていくと、ごぶ蔵はトドメを刺すのが間に合わなくなってきたのか・・・
「二刀流ごぶ!ごぶぶぶぶ!」
それまで片手に持った包丁でとどめを刺していたのだが、逆の手に持ったフライパンも振るい出した。
その甲斐あってかドンドンと処理が進んでいき、俺が『黒風』を止めるころには地面がドロップアイテムまみれになっていた。
「うわぁ・・・後で拾うのが面倒くさそう・・・。っと、その前にあれの処理だな」
俺は未だにドーンと小部屋の片隅を占領する巨大な巣を見やる。
もう新手は出てこないみたいだが、未だに反応があるので油断はできない。
「といっても、残ってるのは女王蜂、若しくは・・・っとあれがそうっぽいな」
待っていても多分出てこないだろうから爪を振るって巣を切り裂くと、中からパラライズビーと少し違う魔物が出て来た。
恐らくあれがパラサイトビーだろう。
名前:
種族:パラサイトビー
年齢:-
レベル:5
str:52
vit:63
agi:25
dex:38
int:24
luk:16
スキル:偽装 産卵 催眠
ユニークスキル:
称号:
名前:
種族:パラライズビー
年齢:-
レベル:7
str:61
vit:68
agi:18
dex:62
int:19
luk:25
スキル:産卵 統率 フェロモン
ユニークスキル:
称号:
『鑑定』をかけるとやはりパラライズビーとやらで、他にも女王蜂っぽいのも見つけた。
漸く地面に落ちた敵を片付けたごぶ蔵にやらせるのもあれかなと思ったし、また変なことになってもあれかなと思ったので、俺はそいつらをサクッと倒しておく。
「終了っと。ごぶ蔵、ドロップアイテム拾おうぜ」
「ごぶ」
「・・・ん?」
戦闘が終了したので、後はドロップアイテムを拾って終了だー!と思いごぶ蔵に声をかけたのだが、ごぶ蔵が何やら巣の方を指さしていた。
「巣に何かあるのか?」
「あれ、蜂蜜ごぶ?」
「え?あ、本当だ」
言われて気が付いたのだが、確かに割れた巣の中に蜂蜜らしきものがあった。正直巣は放置していく気だったのだが、蜂蜜があるのなら収納していくとしよう。
その後、巣とドロップアイテムを拾い集めて収納していたのだが、途中でごぶ蔵のお腹が『ぐぅ~』と音を立てた。
「お腹減ったごぶ」
「あー、そろそろ夜くらいか?」
【うむ、お主達が迷宮に入って既に半日ほど経ったのじゃ。時間的には夜なのじゃ】
「そっか、んじゃあドロップアイテム拾い終わったらそろそろ休むか」
「ごぶ」
何でも知ってるニアさん曰く夜らしいので、俺達はレモン空間へと入って休むことにした。
「早速今日の成果を皆に食べてもらうごぶ」
ごぶ蔵は今日作ったあの妙な料理たちを皆に振る舞いたいらしく、森の中へと走って行く。
そんなごぶ蔵を見送る俺だが、俺も最初の『偽草肉』以外は食っていないので、ごぶ蔵の他の料理に少しだけ興味があった。
「そんなに慌てなくても・・・まぁいいか、俺達も行こうぜニア」
「うむ、ごぶ蔵会心の料理を頂くとするのじゃ」
ニアもごぶ蔵の料理に興味があったらしく、俺達は連れたって森の方へと歩いて行った。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「先生出番です」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 黒風が ダブルピューします。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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