第119話 慢心サイコシェフとわんちゃん

【間が抜けた面を何時まで晒しておるのじゃ、しっかりせい】


「あだっ!」


 目の前に光が飛んだと同時に後頭部へと痛みが走った。


「え?あれ?サイコシェフごぶ蔵は?」


「ごぶ?」


【何を言うておるのじゃ・・・。もう一発必要かえ?】


「あだっ!」


 姿は見えないのだがニアが俺の後頭部を殴ったらしく、後頭部に再び痛みが来た。


「え・・・?あ~・・・まさか俺の妄想だったのか・・・?」


 どうやらサイコシェフごぶ蔵が包丁を研いでいた辺りからは全て俺の妄想だったらしく、そこら辺から俺は宙を見てぽやぁ~っとしていたらしい。

 だがニアが説明してくれた『料理魔法』の説明は現実だったらしく、本当に使い方によっては凶悪なスキルらしい。


「まぁわざわざユニークスキルの枠に入っているしな・・・それくらいの性能はあるのか」


【うむ】


「しかしあれだな、その割にはステータス自体は微妙なんだな?」


【あくまで料理用のスキルじゃしの、戦闘能力はおまけなんじゃないかや?】


「成程・・・納得と言えば納得だ」


 要は使い方次第という訳だろうとごぶ蔵を見る。


「今なら前以上に千切りがうまくできそうごぶ」


 こんな事を言っているごぶ蔵だ、あの妄想通りの様なやばい事にはならないだろう。


「ははっ・・・あ、そういえばごぶ蔵から料理受け取ってたな」


 俺はここで漸くごぶ蔵から渡された料理?の方へと気が向いた。

 その料理?は丁寧にも大きな葉っぱで包んであったのだが・・・何処から出してきたんだこの葉っぱ。


「ごぶ?一狼の収納から出したごぶ」


 ごぶ蔵に聞いて見るとそんな事を言われたのだが、こいつ・・・俺の収納を使いこなしてやがる・・・!?何て恐ろしい眷族だ・・・。

 とまぁそれは置いておき、料理?が包まれている葉っぱを開いてみる。


「草」


【知っておるのじゃ。それは確か面白いの別表現なのじゃ】


「いやまじで・・・これ見てみてよ」


【草 なのじゃ】


「だろ」


 いや、別に草生やしている訳じゃなく・・・大きな葉っぱを開いたら『草』が入っていたんだ。


「ごぶ蔵・・・ナニコレ?」


「食べてみたら解るごぶ」


「これをか・・・まぁ・・・うん」


 ごぶ蔵は少し自信ありげな顔をしながら食べてみてくれと言ってきた。

 あまり気は乗らないのだが、その妙な自信ありげな顔が少しだけ気になったので食べてみる事にした。


「どれ・・・モグモグ・・・」


「どうごぶ?」


「・・・」


【やっぱり草かや?】


「いや・・・」


【草でなければなんなのじゃ?】



「・・・肉だっ!」



【肉???】


 俺の答えにニアは不思議そうにしていたが、俺はそれを無視して草みたいな肉を再び口に放り込む。


「んぴゃぁぁんんまぁぁぁいいい!!」


 それがあまりに美味く、俺はついつい叫んでしまった。

 その顔を見てごぶ蔵の顔が満足げに変わり、どや顔に変わった。


「ごぶごぶ。名付けて『偽草肉』ごぶ。フェイクグラスの草に見える部分は実の所はお肉ごぶ。それを生かして料理したごぶ」


 そして頭も良くなったからか料理の解説もし始めた。


「成程なぁ・・・『偽草肉』。確かに名前通りの料理だわ・・・しかも美味い!」


【本当なのじゃ。一見草なのに肉、しかも美味いのじゃ】


 ニアも『偽草肉』を食べたのか、美味いと言ってきた。


「本当にな・・・草だと思ったら鶏肉の様なさっぱりした肉の味、しかも柔らかく食べやすいからパクパクイケちゃう感じだ・・・まさに・・・味のイリュージョンやっ!頭バグるでしかしっ!」


「そんなに褒められたら照れるごぶ・・・」


「褒めとっ・・・るな、うん。奇妙な料理だが確かに美味かった。褒めるしかないわ」


 俺がごぶ蔵に向けて前足を叩き合わせて拍手をしていると、『索敵』に反応があった為意識を切り替えた。


「ちょっとはしゃぎ過ぎたか・・・ごぶ蔵、食材が来たぞ」


 どうやら『偽草肉』を食べてはしゃいでいたので敵を引き付けてしまったらしく、複数の敵が向かってきている様だった。

 しかしそれが今の俺には食材にしか感じられず、ごぶ蔵にそんな風に言ってしまった。


「ごぶ?・・・ごぶ!」


 するとごぶ蔵は真に受けたのかやる気を見せ、包丁を構えだした。


「やる気満々やん・・・よし、ごぶ蔵GO!」


「ごぶっ!」


 ごぶ蔵のお料理教室、はっじま~るよ~!


 ・

 ・

 ・


「『偽草肉』に『吸血蟲のソテー~魔石粉ソース~』、それに『発情獣のタタキ』に『お尻蟲のポタージュ』ごぶ」


「うん」


 ちょっとしたノリでごぶ蔵のお料理教室とか言ったのだが、本当にそんな感じになってしまった。

 ごぶ蔵は出て来た敵を片っ端から料理していったのだ。


 因みにだが・・・『発情獣』と『お尻蟲』は2階層から出て来た新たな魔物だ。



 名前:

 種族:発情獣

 年齢:-

 レベル:5

 str:56

 vit:41

 agi:48

 dex:33

 int:3

 luk:15

 スキル:絶倫 穴を掘る 

 ユニークスキル: 

 称号:


 名前:

 種族:お尻蟲

 年齢:-

 レベル:4

 str:36

 vit:31

 agi:30

 dex:55

 int:7

 luk:13

 スキル:寄生 媚毒粘液 単性生殖

 ユニークスキル: 

 称号:



 この様にステータス的には弱いのだが・・・卑猥モンスター達だった。

 どのような魔物達だったか詳しくは語る事はやめておく事にするが、ごぶ蔵に鑑定結果を教えたら、片方はボコボコにされてタタキに、もう片方はすり潰されてポタージュの材料になった。


「まぁ今日の夜ご飯にでも皆と食べようか」


「ならもうちょっと作るごぶ」


「だな。あっちに反応があるから行ってみよう」


 これらの料理はどうせならばレモン空間内にいる皆と食べたかったので、俺達はもう少し卑猥モンスター達を狩ることにした。

 俺が『索敵』で魔物の位置を特定し、ごぶ蔵がそれを料理、そのパターンでゴリゴリと狩りを進めていると、ボス部屋っぽい所に辿り着いてしまった。


「あ、ボスっぽいのいるな『鑑定』」



 名前:

 種族:パペットホース

 年齢:-

 レベル:6

 str:41

 vit:78

 agi:73

 dex:35

 int:16

 luk:11

 スキル:硬化 拘束 振動

 ユニークスキル: 

 称号:階層主



「うーん・・・卑猥モンスター・・・」


【ただの馬みたいなゴーレムじゃないのかや?】


「あー・・・まぁ・・・淑女は知らなくていいと思います。はい」


 雌であるニアにSでMな道具っぽいあれを説明するのも気が引けたので言わないでおいた。まぁワンチャン拷問器具かも知れないが、それでも言わなくていいだろう。


 それはさておきだ、敵のステータスを確認して思ったが、ここら辺からごぶ蔵単体ではきつくなってくるかもしれない。

 ましてこの敵はスピード型っぽいので、下手をしたら一方的にやられるかも知れない。

 なのでここら辺から俺も参戦していく事にした。


「ごぶ蔵、コイツの足を俺がやるからトドメ頼む」


「ごぶ」


 しかしまだコイツ位ならば俺が足をやればごぶ蔵でもいけそうだったので、トドメは任せることにした。


「って事で頼んます『黒風』先生」


「ひっひぃぃん!」


 頼りになる『黒風』を起動させると瞬く間にパペットホースの足はズタズタになり、動きがヨロヨロになった。

 これなら大丈夫だろうと思いごぶ蔵に声をかける。


「ヨシ、あれなら行ける筈だ。それでも一応気を付けてくれよごぶ蔵?」


「解ってるごぶ。でも進化したごぶなら余裕ごぶよ」


「いや・・・油断は禁物だぞごぶ蔵?万が一という言葉があってだな・・・」


「大丈夫ごぶ、大丈夫ごぶ。ごぶが料理してやるごぶ。ごっぶぶぅー!」


「あっおい!本当に気をつけろよ!?」


 ごぶ蔵は包丁とフライパンを両手に走っていった。だが超絶慢心しているのか、その動きは隙だらけだった。


「ごっぶぶぅー!」


「ひん・・・ひっひぃぃん!」


「ごぶっ!?らっ・・・らめごぶぅぅぅ!」


「・・・」



 盛大にフラグを建てただけはあったのか、ごぶ蔵はパペットホースの拘束攻撃を受け、拘束+硬化+振動のトリプルコンボ攻撃を食らっていた。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「三角な木馬なの?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ダブルピースします。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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