第118話 料理とワンチャン

「ごぶ蔵!お前進化出来るぞっ!」


 鑑定をしたら何気に進化出来る事が解ったので、それをごぶ蔵に伝える。


「ごぶ?しんかってなにごぶ?」


「あー・・・進化って言うのはだな・・・カクカクシカジカ・・・」


 しかしごぶ蔵は進化が何かも解っていなかった様なので、進化とは何ぞやという事を説明してあげる。


「ってことなんだが、解ったか?」


「ごぶごぶ・・・まるまるうまうまごぶ」


「んー・・・」


 流石のゴブリンクオリティだ、イマイチ伝わっていない・・・。もっと簡潔に説明しよう。


「シンカ! ツヨクナル! ゴハンウマウマ! ハダプリプリ!」


「ごはんがぷりぷりになって、しんかがうまうまになるごぶ?」


「んー・・・そうそう、そうなんだ」


 実際に進化させた方が早そうな気がしてきたので、四苦八苦しながら進化方法を説明してみると、何とかわかってくれたみたいだった。


「しんかかのう・・・しんかかのう・・・ごぶごぶ・・・ごぶっ!」


「・・・おっ!」


『カッ!』



 名前:

 種族:ゴブリンシェフ・見習い

 年齢:2

 レベル:1

 str:63(13↑)

 vit:58(20↑)

 agi:55(11↑)

 dex:103(51↑)

 int:33(22↑)

 luk:36(5↑)

 スキル:短剣術 鈍器術

 ユニークスキル:料理魔法 

 称号:ダンジョン1階層突破 特殊進化体 



 無事進化が出来たので鑑定してみると、種族がゴブリンシェフ・見習いとなっていたので、念願の料理系種族みたいだ。


「おぉー・・・って特殊進化体?料理系種族って本来は居ないような種族か?」


 種族名の所を鑑定して見てもそんな感じに書いてあったのでそうなのだろう。だがまぁそんなのはごぶ助という前例があるので今更である。


「まぁいいや、ごぶ蔵、体の調子は大丈夫か?」


「大丈夫ごぶ。しいて言えば頭がスッキリした感じがするごぶ」


「まぁうん、そうね」


 多分進化した事で思考能力が上がったからであろう、話し方も進化前より大分滑らかになっていた。

 更にまだ戦闘していないから解らないが、ステータスも結構上がっていたので戦闘能力も上がっていそうだ。


「他には短剣術に鈍器術・・・それにユニークスキル!?」


 生えて来た2つのスキルは包丁とフライパンを使っていたからだろうが、ごぶ蔵はなんとユニークスキルまで覚えていた!



『ユニークスキル:料理魔法

 ・魔法の様な料理術。料理系の全てのスキルも使える。』



「うぉ・・・何か凄そう」


「ごぶ?」


 料理魔法を鑑定した所鑑定結果に結構凄そうなことが書いてあったので、それをごぶ蔵へと教えてあげると、『へぇ~』みたいな顔をしていた。

 頭が良くなってもやはりゴブリンはゴブリンだった。


「いや、結構凄いと思うんだが・・・まぁいいか。取りあえず先へ進もう」


「解ったごぶ」


 ご飯を作る時にでも見せてもらえばいいかと、俺達は先へと進む事にした。


 ボスの居た場所の奥に階段状になっている道があったので降りて行くと、やがて2階層らしき場所へと辿り着いたのだが・・・


「1階層と変わりが無さそうだな?」


 2階層の様子は一見1階層と変わりなく思えた。出て来る魔物も同じ様な感じなのだろうか?

 まぁ相対して見ればわかるだろうという事で敵の気配がする方へと足を進めると、そこにはフェイクグラスが居た。


「ふむ・・・?少なくとも1階層の魔物も出て来るみたいだな。取りあえずごぶ蔵GO!」


「任せるごぶ!」


 フェイクグラスならば大丈夫だろうとごぶ蔵にゴーサインを出すと、ごぶ蔵は包丁を構えながら突っ込んで行った。


「ごっぶ・・・ごぶりゃ!」


「おぉ~」


 その動きは進化前と比べると軽やかになっており、スキルを習得したからだろうか、包丁の使い方も上手くなっていた。


「お料理完了ごぶ」


 そして1階層の時とは雲泥の差でフェイクグラスを倒すと、決めポーズを取りながら決め台詞を言った。


「か・・・かっこいいたるー!・・・じゃなくて、何だよその決めポーズと台詞!」


「ごぶ?」


「え・・・?無意識なの?かっこいいなの?」


 コイツ無意識にポーズと台詞を・・・!?中2病なのか?と衝撃を受けていると、ごぶ蔵がフェイクグラスのドロップアイテムを俺の方に持ってきた。


「あぁ・・・ありが・・・!?ナニコレ!?」


「お料理ごぶ。さっき言ったごぶ」


「決め台詞じゃなくてただの報告だったのあれ・・・?」


 てっきり中2の心が生まれたのかと思っていたのだが、どうやら本当にお料理が終わっただけらしい。・・・というか何でお料理???

 不思議に思い尋ねてみると・・・


「出来る気がしたからやってみたごぶ」


 との事。・・・何それ?

 意味不明な事象に困惑していると、天の声・・・ではなくニアから説明が入った。


【恐らく料理魔法とやらなのじゃ。妾も実際見たことはなかったのじゃが、そういうモノだと聞いたことがあるのじゃ】


「へぇ・・・?」


【何やら対象を食材に見立てて料理してしまうモノらしいのじゃ。結構凶悪なスキルだと聞いたのじゃ】


「うぇ!?」


(ニアから聞く限りだとかなりヤバ目なスキルに思えるんだが・・・?だって下手したら人間とかも食材に・・・)


 嫌な想像をしてしまい背筋がゾゾゾッとなって毛を逆立てていると、すぐ傍から『シャリシャリ』という音が聞こえて来た。

 何だ?と思いそちらを見てみると、更に毛が逆立ってしまった。


「ご~ぶっぶ・・・お料理たのしいごぶぅ~・・・」


 ごぶ蔵が砥石で包丁を研いでいたのだ。

 更にごぶ蔵は包丁を研いだ後包丁をペロリと舐め、怪しい目で俺を見ていたのだ・・・。


「ご~ぶっぶ・・・たわしみたいで美味しそうなのがいるごぶぅ~・・・レロレロ」


「ひ・・・ひぃぃいい!?」



 俺が悲鳴を上げたその直後・・・意識がごぶ蔵の持つ包丁に引き寄せられ・・・



「ご~っぶっぶっぶ!」



 目の前に光が飛んだ。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ゴブリン×料理魔法=狂気?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が 包丁を良く研ぎます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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