第117話 ぬるぬるゴブリンとわんちゃん

 ちょっとした誰得イベントが起こってしまったが・・・俺とごぶ蔵はダンジョン攻略を再開した。

 因みにだが、姿を隠して付いて来ているニアが『妾も見た事ない魔物なのじゃ。他にもいるかもしれんから気を付けるのじゃぞ』と言ってきたので警戒を怠らない様にしようと思う。・・・いやマジで。


「また誰得イベントおこってもあれだしな!」


「ごぶ?」


「あぁ・・・こっちの話。気にしないでくれ」


「ごぶ」


 ヌルヌルになったのをもう忘れたのか能天気なごぶ蔵にため息を吐きつつ、俺達はダンジョンを進んで行く。

 先程であった草むらに擬態する魔物『フェイクグラス』がチョコチョコと出て来るので、そいつをごぶ蔵に倒してもらいながら進んでいると、『索敵』で動く反応を察知した。


「ん・・・?動いている気配があるな。ごぶ蔵、気を付けてくれ」


「ごぶごぶ」


 念の為にごぶ蔵に注意を促しつつ、俺も注意して進む。またぞろおかしなモンスターだったら俺も危険(精神的に)かもしれないからだ。


「近いぞ・・・この通路を進んだ先の分岐点、その左にいる」


 いよいよ目視できそうな位置にまで来たので再度警告し、恐る恐る進む。こんなにも警戒して進むのはポンコのダンジョンで転移罠でピンチに陥った時以来かも知れない・・・。


「いた・・・!けど・・・あれは何だ?芋虫?ミミズ?」


 動く気配の主はまるで芋虫かミミズの様な姿をしていた。取りあえず鑑定してみる事にしよう。



 名前:

 種族:吸血蟲

 年齢:-

 レベル:3

 str:41

 vit:36

 agi:8

 dex:34

 int:7

 luk:11

 スキル:吸血 麻痺毒 

 ユニークスキル:

 称号:



「吸血蟲か・・・名前、スキル、見た目からして蛭みたいな感じの魔物か?」


【あやつは既存の魔物なのじゃ。沼地とかにおるのじゃ】


「ふむ・・・」


 鑑定して所感を呟いたところ、ニアから情報がもたらされた。どうやらオリジナル卑猥モンスターではないらしいが、微妙に卑猥に感じてしまう。


「まぁいいや、ごぶ蔵いけるか?」


「まかせるごぶ」


「飛びかかってきて咬みつかれるかも知れないから注意な?」


 まぁ強くはなさそうなので、こいつもごぶ蔵に任せてしまおうと注意点を話して後ろに下がる。


「ごぶ」


 するとごぶ蔵はフライパンを盾の様に構えて進み、吸血蟲の近くまで行くとそのままフライパンを振り下ろした。


「ごぶっ!」


「ぎぃ!」


 先制攻撃を受けた吸血蟲は直ぐに反撃に移り、ごぶ蔵目掛けて飛びかかって来た!

 しかしその動きは緩慢なモノで、ごぶ蔵でも余裕をもって避けれるモノだった。


「ごっぶ!」


 ごぶ蔵は吸血蟲の攻撃をひらりと躱した後包丁で攻撃を仕掛け、吸血蟲を深く切り裂いた。

 その攻撃が致命傷になったのか吸血蟲は声を上げる事も無く消滅し、後には小さな魔石だけが残った。


「ナイスな戦いだったなごぶ蔵」


「よゆうごぶ!」


 俺がドロップした魔石を拾いつつごぶ蔵をねぎらうと、ごぶ蔵はポーズをつけながら余裕だと言ってきた。

 そんなに油断しているとまたやられるぞ・・・と思いつつも、それは言わないでおく。・・・どうせ言ってもすぐ忘れるだろうからな。


「まぁ・・・進もうか」


「ごぶ!」


 またやばそうだったら助けようと、いつでも飛び出せる心構えをしつつダンジョンを進んで行く。

 しかし以外にもごぶ蔵は出て来る魔物を順調に倒していったので、その機会は訪れる事がなかった。


 そんな風に進んでいると、やがてボス部屋らしき場所に辿り着いた。


「お、やっぱりボス部屋だったか。どれどれ・・・ボスの能力はっと・・・」


『索敵』で探っていた限りボス部屋だとあたりをつけてはいたが正解だった様で、デーンと部屋の中央にいたボスの能力を鑑定してみる。



 名前:

 種族:コシギンチャク

 年齢:-

 レベル:4

 str:48

 vit:51

 agi:18

 dex:62

 int:9

 luk:11

 スキル:巻き付き 媚毒粘液 麻痺毒粘液 

 ユニークスキル: 

 称号:階層主



「オリジナル卑猥モンスター2か・・・?」


【少なくとも妾は見たことがないのじゃ】


「じゃあそうっぽいな・・・っていうか、コシギンチャクって・・・」


 名前がダジャレっぽい魔物はどうやらオリジナル卑猥モンスター2で間違いないらしい。

 見た目は完璧イソギンチャクみたいな感じだったので、普通に居そうな魔物だと思ったのだが・・・


「まぁいいや・・・けどあれだな、階層主だけあってちょっと強いから、予め弱らせて・・・「ごぶっ!」・・・あ、ちょ!」


 そのまま戦わせるのはごぶ蔵には少し荷が重いかと感じたので、ちょっと弱らせてから任せようかなと思っていたら、いきなりごぶ蔵が飛び出していった。

 前に同じような事があったなぁと一瞬呆けてしまったが、慌てて『守護の壁』を発動させる。


「ご・・・ごぶぅぅぅうううん!」


 間一髪の所で『守護の壁』が間に合い、ゴブリンの触手プレイは難を逃れた。といっても、毒系が防御出来ているだけで触手自体には巻き付かれているのだが・・・。


「ずぅぇぇい!・・・ふぅ」


「たすかったごぶ!でもぬるぬるごぶ」


「ほれ・・・水だ・・・」


「ありがとごぶ!」


 ごぶ蔵の力では脱出が不可能そうだったので触手を爪で切り裂いて拘束を解き、そのままごぶ蔵を咥えて離脱、その後水魔法を使いごぶ蔵にぬめぬめを洗い流す様に促した。


「すっきりごぶ!」


「おう、ついでに水魔法の応用で水分を飛ばしてっと・・・よし」


「ごぶごぶ!もういっちょいくごぶ!」


「まてぃ!」


 ごぶ蔵は体を洗い終えると再びボスに突っ込んで行こうとした。しかし俺はそれを引き留める。


「もうちょっと慎重に行こうぜごぶ蔵!というかお前単体だときついから、俺が手伝う!」


「ごぶ?わかったごぶ」


 解ったと言っているが本当かコイツ・・・?と訝しがるが、ゴブリンの思考を深く考えても無駄だと思い、気にしないことにして行動を起こす事にする。


「取りあえずあの触手を落としておけば大丈夫だろう・・・ホイホイ・・・ホイっと」


 ごぶ蔵が相対するのに厄介そうな触手部分を爪で切り裂き、スパスパと切り落としていく。

 俺とボスはステータス差が激しいので、ものの数秒でその作業は終わってしまい、コシギンチャクは攻撃手段を無くしたただの案山子状態になってしまった。


「あ、やり過ぎた・・・まぁいいか!ごぶ蔵GO!」


「まかせるごぶ!りょうりしてやるごぶ!」


 安全だしまぁいいかとごぶ蔵を嗾けると、流石に余裕だったのか2,3分もしたらボスは消滅した。それを見てごぶ蔵は『やってやったぜ!』みたいな感じを出しているが、それ殆ど俺がやったんだよ?


「まぁいいか・・・ドロップアイテムはっと・・・まぁこんなもんだよな・・・」


 折角喜んでいるのに水を差すのも無粋だなと思い、何も言わずにドロップアイテムを回収する。

 落ちていたのは少々大きい魔石と討伐証、それに・・・触手が一本?


「なんじゃこりゃ・・・って食用ってマ?」


 鑑定してみると、どうやら食べれるらしいが・・・見なかったことにしよう。

 全部適当に収納すると、討伐証のみがごぶ蔵に吸い込まれていった。恐らく例のあれだろう。


「どれ、一応見ておくか『鑑定』」


 念の為に鑑定でごぶ蔵のステータスを確認すると・・・



 名前:

 種族:ゴブリン

 年齢:2

 レベル:10≪進化可能≫

 str:50

 vit:38

 agi:44

 dex:52

 int:11

 luk:31

 スキル:調理

 ユニークスキル: 

 称号:ダンジョン1階層突破 



「進化出来るじゃないか!?」



 ごぶ蔵は進化可能となっていた。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ゴブリン×ぬるぬる=ゴブリンマニア得?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ぬるぬる相撲を始めます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る