第116話 卑猥モンスターダンジョンとわんちゃん

 美しき獣ニアからの『卑猥モンスターを討伐せよ!』クエストを受けてから2日程かけ、俺は単独で周りにあるダンジョンの情報を探っていた。


「まぁこんな所か・・・今日はもう休むか」


 おおよそ情報も集まったところで時刻は夕方、ダンジョン攻めは明日に回す事にして、今日はもう休もうとレモン空間へと入った。


「ふぅ・・・おーい帰ったぞー」


「おかえりごぶ。ごはんにするごぶ?おふろにするごぶ?それとも・・・おどるごぶ?」


「ご飯くれ・・・」


 レモン空間の森へと入って声をかけると、ごぶ蔵の妙な挨拶を聞かされた。どうせならばエペシュに言ってほしかったな・・・。


 そんなエペシュは何処に行ったんだとごぶ蔵に尋ねると、どうやら森の状態を見回っているらしい。


「ありがてぇな・・・後でどうだったか聞いておくか」


 何故か持ち運べる家状態になっている『レモンの入れもん』だが、自分以外の人も管理してくれるから助かるなと思いつつご飯を食べていると、何時の間にかニアが横にいた。


「何時の間に・・・おかえり」


「うむ、ただいまなのじゃ。ごぶ蔵よ、妾にも飯を出してくれなのじゃ」


 ニアは俺が周囲の状況を探っているここ2日付いて来ておらず、ラゴウに会いに行っている様だった。

 どうもかなり久しぶりに会ったので話をしているらしい。


「あ、ニア、周囲の偵察終わったから、明日から転生者のダンジョンを攻略し始めようと思う」


「うむ、では明日からは一狼の後を全力で隠れながらついて行くのじゃ。なるべく早く不埒者を討伐するのじゃぞ?」


「お・・・おぅ・・・」


 一応明日からダンジョン攻略を始めると知らせておくと、卑猥モンスターの標的にならない様に全力ステルスはするらしいが付いて来るらしい。

 卑猥モンスターは拘束スキルを持ってはいるが、そもそも見つからなければ問題ないという事だろう。


「あ・・・上手く行けばファーストアタックで大ダメージ入れれるかも・・・?」


 ニアの発想からステルス攻撃という新必殺技を思いついてしまった訳だが、前種族はブラックドックという隠密に向いていそうな種族だったので、俺にぴったりな技かも知れない。


「毛の色もブラックドックから変わらず黒だし、アサシン系わんちゃん目指すか・・・?」


「アサシン?」


 思いついた必殺技の事を考えていたらエペシュも帰って来た様だ。


「おかえり。あ、明日から俺ダンジョンの攻略を始めるな?」


「ただいま・・・ってただいまは一狼だよ?おかえり。明日からダンジョン?解った、頑張ろうね?」


 俺がエペシュにも明日からダンジョンの攻略を始める事を伝えると、エペシュは当然の如く手伝うと言ってくれるのだが・・・俺はストップをかけた。


「あ、いや。今回は俺だけで行く」


「え・・・?なんで?・・・私邪魔?」


「いや!邪魔じゃない!邪魔じゃないけど・・・今回は駄目だ・・・」


 そう・・・今回だけはエペシュは連れて行けない・・・だって・・・



(連れて行ったらえっっ!な展開になっちゃうかもしれないじゃねぇか!)



 相手は卑猥モンスターだ、そんなところにエルフであるエペシュを連れて行ってみろ!・・・解るな?


(俺のメインヒロインにそんな真似させるわけにはいかねぇ!絶対にだっ!)


 エペシュたんは俺の女神、万が一にも穢させる訳にはいかないのだ。

 しかしそんな事情を馬鹿正直に言ってしまうと俺の穢れなき女神が穢れてしまうので、事情をぼかしながら説明をしてみると何とか解ってくれたのだが、女神はこんな事を言ってきた。


「解った・・・じゃあ・・・」



 ・

 ・

 ・



「という事で、頑張ろうなごぶ蔵」


「ごぶ・・・?」


 現在は一夜開けて卑猥モンスターのダンジョン前にいるのだが、俺の隣には包丁とフライパンをもったごぶ蔵がいた。

 何でごぶ蔵が居るかだって?それは昨夜俺の女神が『じゃあ私の代わりにごぶ蔵連れてって。流石に1人じゃ心配』って言うもんだからさ・・・。

 まぁごぶ蔵なら卑猥モンスターも標的にしないだろうから大丈夫だろう。・・・大丈夫だよな?触手×ゴブリンは見たくねぇぞ?


 卑猥モンスターが超絶特殊性癖出ない事を願いつつ、いよいよ俺達はダンジョン内へと足を踏み込むことにした。


「ごぶ蔵、取りあえず俺の後ろに付いて来てくれ」


「ごぶ」


「っていうかいきなりダンジョン行くぞって言ったのに、もう受け入れているのか・・・」


「ごぶ?」


「まぁいいか・・・ごぶ蔵、頑張ってレベリングしような?」


「ごぶ!」


 先ずは様子見の為に俺が先頭に立つと言うと、素直なごぶ蔵は頷いて俺の後ろに着いた。

 そして今回ごぶ蔵を連れて来た訳だが、俺はついでにレベリングをしてごぶ蔵を進化させようと考えていた。上手く行けば料理系の種族に進化出来るかもしれないので、俺は『ワンチャン』を発動させた。


『索敵』も発動させて進んでいると、反応が近くなったのでそーっと敵の姿を見てみる。


「ふむ・・・?」


 反応があった場所には草むらっぽいものがあったのだが、肝心の敵の姿が見えなかった。

 なので魔力を使い反応を探ると・・・


「んん?草むらに反応?鑑定してみるか・・・『鑑定』」



 名前:

 種族:フェイクグラス

 年齢:-

 レベル:5

 str:35

 vit:33

 agi:13

 dex:42

 int:6

 luk:24

 スキル:巻き付き 媚毒粘液

 ユニークスキル:

 称号:



『鑑定』は魔境地帯に着いたことにより使用して良しとニアに許可をもらっていた。

 なので怪しい草むらを鑑定してみると、どうやら草むらは魔物だったようだ。


「よく見るとあれ・・・触手か?っていうかスキルもなんか・・・」



『スキル:媚毒粘液

 ・媚薬効果がある毒粘液。効果時間は短い。』



「・・・こいつも卑猥モンスターやんけ!」


 転生者が卑猥モンスターなら、奴の手が入ったダンジョンも卑猥モンスターがいるらしい。というかこんなモンスターだらけではないだろうな!?

 少し嫌な予感を覚えつつ、強さ的にはあまり強くないのでごぶ蔵に倒させる事にした。


「ごぶ蔵、あいつ倒してみ?捕まらない様に気をつければ危険じゃないと思うから」


「わかったごぶ」


 ごぶ蔵に注意点を説明し、俺はごぶ蔵を応援する事にした。


(一応だが・・・『守護の壁』っと)


 ステータス的にもあまり強くないので大丈夫だとは思うが、念の為に『守護の壁

 』をかけて見守っていると・・・この時の判断がナイスだったと俺は後々思い知った。


「くらうごぶ!」


 ごぶ蔵が持っていた包丁を振り回すと、触手はあっけなく切れた。それにごぶ蔵は気を良くしたのか、迂闊にも触手の海へと突っ込んで行った。


「ごぶぶー!・・・ごぶっ!?」


「あ・・・」


「ご・・・ごぶぅぅぅううう!」


「う・・・うわぁ・・・って駄目だ!『黒風』!」


 結果、ごぶ蔵は見事に触手に捕まり、誰得状態になってしまった。

 その光景に暫くポカーンとしてしまったのだが、やばいと思い慌てて助け出す。


「ごぶっ!」


「ふぅ・・・ってごぶ蔵くんさぁ・・・もうちょっと気を付け・・・うわぁ・・・」


「ぬるぬるごぶ・・・」


 無事助かったごぶ蔵に、もうちょっと注意して戦いなさいよと言おうとしたのだが・・・ごぶ蔵のこれまた誰得状態を見て声が出てしまった。

 まぁ幸いにも『守護の壁』をかけていたので毒状態には陥らなかったのだが・・・かけていなかったら今頃・・・



 俺は自分の中で『守護の壁』を神スキルに認定した。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「ゴブリン×触手=誰得」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が らめごぶっ!といいます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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