第115話 えっっ!なあれとわんちゃん
「えっ・・・!?転生者!?」
「ええ、転生者ですな」
俺はラゴウの口から出た言葉が信じられず、聞き返してしまう。
しかしラゴウから出た言葉は変わらず、それが事実である事を知らせて来たのだが、それでもそれを否定する材料がほしくて再びラゴウへと尋ねた。
「な・・・なんで転生者だと思うんだ!?」
「転生者によくある『強さに見合わないスキル』を持っていたのが一点と、後は言動ですな。そ奴も儂の事を『ゴリラ?』と言っておりましたぞ」
「それは・・・確かに転生者だな・・・」
この世界の者なら、ラゴウの事を『ラゴウラゴウラゴウ』若しくはただ知らない魔物と言うだろうが、『ゴリラ?』と言ったのなら地球から転生して来た者であろう。
そして転生者と聞いて、俺以外に反応を示したものがいた。
「おお、転生者か、見ごたえがある奴だといいのじゃ」
御存じ、転生者観察するウーマンのニアだ。
「チラッとだけ見て来るかの・・・」
転生者観察するウーマンは早速見て来るかなと呟いていたのだが、それにラゴウがストップをかけた。
「それは駄目ですぞ姫様!あぁいや・・・ニア様。奴は危険ですぞ!」
「む?」
「危険・・・?ニアが?」
ラゴウの制止は嫌に力強く、危険とまで言い切った。・・・あのニアにだ。
しかしおかしい・・・ラゴウは先程その転生者に対してあまり強くないと言っていた気がしたのだが?
「そんなにスキルがやばいのか?それにしてはラゴウ、あんた無傷だよな?」
「妾から見ても怪我を負っている様には見えんのじゃ。魔力や精神に乱れもなさそうじゃし・・・お主以上に強い妾に害はなせんじゃろ?」
「それがですな・・・」
俺とニアが何の問題があるんだと問いかけると、ラゴウは口をもごもごさせて何かを言おうとしていたのだが、中々言葉を発さなかった。
その様子に俺達は『?』となっていたのだが、ラゴウは心を決めたのか、1つ頷いた。
「実はですな・・・そ奴、こんな事を言っていたのです・・・」
「何を言っていたんだ?」
「・・・・・・・よなぁ・・・いいや・・・と・・・」
「んん?聞こえなかったんだが?」
「うむ、もうちょっとはっきり喋るのじゃ」
ラゴウの声はあまりに小さく、俺どころかニアにも聞こえていなかった。
なので聞き返したのだが、今度は聞こえたのに聞こえないと言う不思議な現象が起こった。
「そやつ・・・『ゴリラにも穴はあるんだよなぁ・・・。あぁ、でも雄か。ならいいや』と・・・そう言っておったのです」
「んん?」
「うむ?」
「儂も転生者を甘く見ておりましたぞ。まさか儂を性の対象として見て来るとは・・・『ゴリラにも穴はあるんだよなぁ・・・。あぁ、でも雄か。ならいいや』ですぞ?『ゴリラにも穴はあるんだよなぁ・・・。あぁ、でも雄か。ならいいや』!そ奴の物理的攻撃は効かなかったのですが、精神的にガツンとやられた気分でしたぞ」
「・・・っふぁ?・・・っふぁああぁぁ!?」
流石に何回も言われたら解らざるを得ないのだが・・・なんだそれはっ!?HENTAIかっ!?
俺が慄いてる横で、気軽に転生者を見に行こうかなと言っていたニアも何故ラゴウが止めたのかが解り、嫌ぁ~な顔をしていた。
「つまりそ奴を見に行くと、そ奴は妾の体を狙うという事か。気持ちが悪いのじゃ」
しかもラゴウが追加情報を出してくると、ニアの顔はますます険しくなっていった。
「しかもそ奴の姿がまた奇妙でしてな、ゲイザーみたいなのですが、もっとうねうねしており、表面がねとねとしておりましたぞ。動きを止められたのも麻痺視線みたいなものかもしれませんな」
「ふむ・・・見に行くのはやめるのじゃ。見ても楽しそうではないのじゃ」
暇つぶしで転生者を観察していると言っていたニアだが、流石に見たくなかったのかそんな事を言っていた。
ゲイザーという魔物はそんなに不快な魔物なのだろうか?
「因みになんだが・・・ゲイザーってどんなの何だ?」
「ふむ・・・こんな感じですな。因みにこちらはその転生者の姿ですぞ」
俺がゲイザーとやらについて聞いて見ると、ラゴウもアイテムボックスのスキルを持っているのか、何処からか木の板を取り出し炭でゲイザーとその転生者の絵を描いてくれた。
「・・・」
「どうしましたかな?」
「・・・いや、その姿・・・」
俺はラゴウが書いてくれたその絵の姿に少し見覚えがあった。
それは何処で見たかは忘れたのだが、どのような魔物かはよく覚えていた。
「その魔物・・・」
「その魔物?」
「えっっっなゲームに出て来る触手モンスターじゃねぇかっっ!!」
その姿は正に、大人のゲームに出て来る様な触手モンスターであった。
更にラゴウが言うにはねとねとして麻痺視線で体の動きを止めて来ると言う・・・それも相まって完全にそういう魔物であった。
「更に言動もそんなこと言ってきたとか、完璧アウトだわ!アウトッ!アウトぉぉぉ!」
・
・
・
3アウトでチェンジを宣言した後俺はすっかり魂が抜けていたのだが、いい匂いがしたことで魂が現実へと戻って来た。
「あ、落ち着いた?ラゴウがご飯持ってきてくれたよ?食べよ?」
「おぅ・・・」
昼くらいからダンジョンへと入り、怒涛の進撃をしてダンジョン最下層まで来た現在の時間はもう朝に近いらしく、ラゴウが気を利かせて食べ物を持ってきてくれた様だ。
「あー・・・ごめんなエペシュ。俺達魔物だから空腹とか眠気には結構強くてさ、配慮が足りてなかったわ」
「ううん、エルフもやろうと思えば三日三晩動き続けれるし空腹も耐えられるから大丈夫だよ」
魔物の俺達に付き合わせて済まないと謝ると、エルフも強い種族なので割と空腹等には強いと言う事実が解った。・・・流石バーサーカー種族?
とはいえ、規則正しくご飯を食べて眠るにこした事は無いだろうから、俺はもう一度謝っておき、謝り終わるとご飯を準備してくれているラゴウの元へと近づいて行った。
「すまんラゴウ・・・魂抜けてたわ・・・。それと食事ありがとな」
「まぁ儂もあ奴に会った後は気分が悪くなっていたので、気持ちは解りますぞ。なのでそんなに気にしないでいいですぞ」
「しょくしゅって言うのがそんなに衝撃を受けるモノなの?後、ラゴウに穴が開いてるの?大丈夫?」
「あー・・・えーっと・・・」
「さぁこれが美味しいんですぞ。食べるとよろしい」
「うん・・・?」
いきなりエペシュが『しょくしゅぷれいってなーに?あなってなーに?』と聞いてきたのだが、素直に言えるはずもなくどうしようと悩んでいると、ラゴウがナイスフォローで俺を救ってくれた。・・・これからは心の中でラゴウ兄貴と呼ぶことにしておこう。
それはさておき、俺はご飯を食べながら卑猥モンスター・・・またの名を転生者、奴の事をもう少し聞くことにした。
「そう言えばラゴウ、その転生者についてもうちょっと聞きたいんだがいいか?」
「儂に解る範囲ならいいですぞ」
「そいつって強さ的にはどんなものなんだ?ラゴウに比べたら弱いとは言っていたが、俺より強い感じだったか?」
「ふむ・・・同じくらいか少し弱いといった所ですかな?儂はニア様みたいに相手のステータスを見るという事は出来ないので、儂の勘ですがな」
「ふむふむ・・・ってことは、スキルとかも解らない?」
「ですな。唯一解っているのは、動きを止めるようなスキルを持っているという事ですな」
念の為卑猥モンスターの情報を聞いて見ると、俺でも勝てなくはなさそうという事が解った。
しかしスキルが解らないか・・・実は性転換させて発情させるスキルを持っている!とかならんよな・・・?いや、フラグとかではないからな?
これ以上考えると本当にフラグになりかねないので考えを切り替え、続けて質問をする。
「因みにそいつってここら辺で暴れまわってたりするのか?俺、ここら辺でダンジョンコアを回収するつもりなんだがかち合ったりする?」
「そうですな・・・あ奴も最近来た奴ですが、割と積極的に動いておりますからな、障害になる事は間違いないでしょうな」
「ふむ・・・」
転生者は厄介な能力を持っていたりするので、出来る事なら避けたいところだなと思っていたのだが・・・
「一狼よ、そんな不埒な奴やってしまうのじゃ。そうすれば不埒者の持つ育った迷宮核も手に入るし、妾が穢される心配もなくなるので一挙両得なのじゃ。お主も妾が穢される所を万が一でも見たくないじゃろ?そうじゃよな?」
「そ・・・そうっすね」
美しいニア様の命により、卑猥モンスターを倒す事が決定されてしまった。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「触手・・・ぬるぬる・・・っは!?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が ぬるぬるてかてかになります。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます