第114話 怒りと悲しみのわんちゃん
「バナッ・・・バナナッ・・・バナナゴリラッ!バナメイゴリラァァァアア!」
俺の頭は怒りで沸騰してまともな思考をしていなかった。
それというのもラゴウが謝って来た内容にあったのだが、その内容とはこうだ。
『ポンコのダンジョンが襲われ消えた』
それを聞いた瞬間に俺はラゴウを罵倒したという訳だ。・・・もちろん今もなぁ!!
「お前なんぞラゴウラゴウラゴウじゃなくてゴリラゴリラゴリラだっ!この筋肉森盛り森の賢者野郎がぁぁあ!」
「すまぬ」
「すまぬで済んだら俺は警察にならずにすむんじゃあぁぁああ!ワンワンワワーン!ワンワンワワーン!」
「落ち着くのじゃ一狼」
「ウポッ!?」
ラゴウに怒りをぶちまけているとニアが物理と魔法を使い俺を諫めた。
「ゴンッと来てスッとした・・・」
「うむ。少しは落ち着いたかや?」
「ああ、だがっ・・・!!」
「ラゴウはあくまで妾やお主の頼みを無償で聞いてくれたのじゃ。礼を言う事はあっても唾を吐きかける事があってはならぬのじゃ」
「・・・っぐ、だけど・・・それじゃあ俺のこの怒りや悲しみはどうしたら・・・クソォォオオオオオ!ウォォォオオオオ!!!」
「一狼・・・」
「ウガァァァアアア!グッゾオオオオオオオ!」
一度は落ち着いたものの、後から後から感情が押し寄せて来て再び俺の心は荒れ、エペシュが気にかけて体を撫でてくれるが、俺の心は軽くならなかった。
そんな俺の荒れた心をニアはラゴウのせいにしてはいけないというが、そんな事本当は俺も解っていた。解っていたが・・・どうしようもないのだ・・・。
「あああああああぁぁぁぁ・・・・うぁぁぁ・・・・」
その内俺の怒りは悲しみに変わり、声は怒号より鳴き声に変わっていった。
そんな俺の泣いている横では、ニアとラゴウが会話を続けていたのだが・・・
「ラゴウよ、何があったのじゃ?頼んであった迷宮が消滅するところをただ見ているなぞ、お主らしくないのじゃ。何か理由があるのじゃろ?」
「ああ、少し言い方が悪かったですな。迷宮ポンコは消滅したのではなく、移動して消えてしまったのです」
「ふむ・・・?」
どうやらポンコダンジョンは消滅したのではなかったらしく、移動して消えたらしかった。
「一狼!ポンコ消滅してないって!だから泣き止んで話し聞こ?」
「う・・・・うぅぅ・・・・・ぅ?」
それを聞いたエペシュはその小さな体で俺を支えてラゴウの近くまで連れて行ってくれた。そして俺を撫でながら話を聞こうと言ってくれる。
「うぅ・・・一体・・・どういうことなんだよぉ・・・」
「すまぬ一狼、最初からもう少し詳しく言うべきでしたな・・・。改めて、事の経緯を話すとしますぞ」
「あぁ・・・たのむ・・・」
「始まりは5日程前の事です・・・」
そこからラゴウの話が始まったのだが、長いため要約すると・・・
それまでも争いはあったのだが、5日程前にこれまでと一線を画す魔物達が現れた。
それでもなんとか勝ち続けていたので大丈夫だろうと見ていたのだが、3日前、そいつらのボスらしきモノが現れ猛威を振るった。
流石に不味いとラゴウも参戦したのだが、ボスらしきモノのスキルか魔法により動きを止められ、『不味い!何とか抜け出さなくては!』と思っている内にポンコへと続く入口が消えたらしい。
そんな話だったのだが、少し疑問があったので聞いてみる事にした。
「なぁ・・・ここに来たダンジョンは移動できないんじゃないのか?」
「正確にはここに来た『若く力のない迷宮』ですな。成長し力を付けた迷宮なら移動は出来るのです。迷宮ポンコはここに来てから結構激しく戦っていましたので、成長したのでしょうな。まぁそれにしても成長が早いので、当たりのコアなんでしょうな」
ダンジョンコアに当たりがあるとかは初めて聞いたが、どうやら力をつけて移動したらしい。
続けて俺は疑問を口にする。
「移動先に・・・心当たりはないか・・・?」
消滅しておらず、移動しただけならば追いかけなくてはいけないので、この疑問は俺にとって重要な事だった。
しかし恐らく解らないだろうなとは思っていたのだが、意外な事にラゴウの口からは違う答えが帰って来た。
「一応ありますぞ」
「・・・本当か!?」
「ええ、魔力でメッセージが残してありましたぞ」
「ふむ?」
「実は迷宮ポンコの面々には事情を話す為に会った事がありましてな。それで儂の存在を知っておったので移動した事を伝えておいてくれという事でしょうな。移動する寸前に恐らくコアが残したのでしょうが、若いのに大分優秀なコアですな」
「お・・・おう?そうだな?」
ポンコが優秀とかおかしな事が聞こえた気がするが気のせいだろう。っと、それは置いておき、そのメッセージとやらの内容を聞いて見る。
「で・・・なんてメッセージが残っていたんだ?」
「短く『東大陸 南 草原』と残っておりましたな」
「んん?」
メッセージの内容は場所を示しているのだろうが、俺にはさっぱりわからなかったので質問をしてみる事にすると、ラゴウは軽く地理について説明してくれた。
この世界は中央の大きな大陸を囲む様に東西南北に大陸があるらしく、今いるのが西大陸らしい。
中央南北に比べ東西の大陸は比較的安全らしく、その為東大陸に移動しただろうという事だった。
「因みにラゴウは東大陸の南の草原は知っている場所か?」
「儂は知りませんな。しかしニア様なら知っておるのでは?」
「うむ。東大陸の南には確かに草原があった気がするのじゃ。しかし結構広かった気がするので、行ってみて探すしかないのじゃ。因みに危険な場所ではないので安心するのじゃ」
「成程、取りあえず危険はなさそうで良かったな・・・」
当てもなく探すことになるとまず見つからなかったかもしれないし、どうやら聞く限り安全そうな場所なのでナイスポンコと言わざるを得ない。が、遠いので、何でそんなところへとも思ってしまう。
「しかし他大陸か・・・行くの大変そうだな・・・。飛行機か船って出てるのか?」
「飛行機ってあれかや?空を飛ぶ鉄の塊?」
「空を飛ぶ鉄の塊って・・・まぁそうだけどさ・・・って、そんなものないか」
「うむ」
どうやって行くかなと思い乗り物が出てるか聞いて見るが、そりゃ飛行機なんぞないわな!
なら船か?と聞いて見るが・・・
「なら船だよな?乗り継ぎで行けるか?」
「いや、船も出とらんのじゃ。出てても年に数回、力を持った商人が出す位だと思うのじゃ」
「・・・マ?」
「マ、なのじゃ。海にも魔物が居るからの、あまり行く奴はおらんのじゃ」
「おおぅ・・・異世界あるあるぅ・・・」
どうやら異世界ファンタジーに良くありがちな、『海はヤバい魔物がうようよしてる』ってやつらしいく、めったに出会わないがニアより強い奴もいるとの事。
「え・・・ならどうやって行けばいいんだっ!?」
「まぁ、妾なら飛ぶか走るのじゃが、一狼だと迷宮で移動なのじゃな」
「成程。それもそうだな!」
先程ポンコも移動したという事を聞いたばかりだが忘れていたが、ダンジョンだと星に繋がっている龍脈で移動するので、他大陸でもそこまで関係ないらしい。精々距離が延びるのでその分力がいるくらいだとか。
「ってことはこのダンジョンコアで行けるかな?」
善は急げという事で、すぐ傍にあったダンジョンコアをぺシぺシと叩きながら行けるか聞いて見るのだが・・・
【不可。力不足です】
と言われてしまった。
「まぁそりゃそうか。移動できるならさっさとするだろうしな・・・。なら周りのダンジョンコアを集めて強化するしかないのか?」
【肯定します。それ以外の方法だと、直接一狼様が龍脈操作を行い移動すると言う方法もありますが、難易度が高い為非推奨です】
それ以外の方法も教えてもらうが、恐らくニアに行ってもやってはくれないだろうから大人しくコアを集める方法を取るべきだろう。
「ならぼちぼちとコアを集めるか・・・。聞く限りポンコ達がいるのは安全そうな場所ってことだし、焦る必要はないのが救いだな」
早く再会したくはあるが、前回みたく『危ない地域に飛ばされた!急がなきゃ!』とはなっていないので、焦りはしなくてもよさそうだった。
なのでちょっと余裕な気分でいたのだが、そういえばもう1つ疑問がある事を思い出したので聞いてみる事にした。
「そう言えばラゴウ、もう1つ疑問があったんだ。ラゴウの動きを止められるほどの奴って・・・まだこの辺にいるのか?」
それは今の状況だととても重要な疑問『ポンコに襲撃をかけて来た奴らの動向』だった。
見た感じラゴウは無傷っぽいが、それでも恐らく俺より大分各上のラゴウの動きを止める敵なので、相対するには危険極まりないだろう。
ニアもちょっと興味があったのか、うむ。と頷きながらラゴウの答えを待っていた。
「割と近くにおりますな」
「げぇ・・・まじかぁ・・・」
「ふむ」
居てほしくはなかったが、どうやらいるらしい。しかもラゴウは追加情報を出してきたのだが、それは少し聞きたくない、だが知っておいてよかった情報だった。
「そしてそ奴・・・恐らく『転生者』ですな」
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「無事だった・・・」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ラゴウが ここは儂に任せて先に行けと言ってくれます。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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