第104話 アピールをするわんちゃん

「ぶるっ・・・ぶるあぁぁあうぅっ!めすぅっ!おれのめす!なれっ!」


「な・・・なるわけねぇだろおおおぉぉっ!」


 今俺は、ぜえぇぇぇっったいに!負けられない戦いをしている。


 もしも俺が負けたなら、恐らくジャンルが違う話になってしまうだろう。


「ぶるるぅぅっ!まて!おまえ!おれのもの!」


「ちがっ・・・あぶなっ!」


 だがそのお陰か、オークロードは俺を捕まえる為に素手となり、それで何とか時間稼ぎが出来ていた。

 そのお陰でエルフ達の体勢が立て直され・・・


「弓隊!魔法隊!構え!・・・放てっ!」


 エルダーであるエペシュの号令の下、一斉攻撃が仕掛けられた。


 だが標的は俺達が来るまで暴威を振るっていたオークロード、一般エルフの攻撃が有効かと言われれば・・・


「ぶるあぅっ!!おれのめすぅぅ!」


 矢はオークロードの表皮に痕を残すだけ、魔法も同じくだった。

 しかし・・・しかしだ!


「痕が残るってことは全くの無傷じゃないって事だっ!エペシュ!そのまま続けてくれっ!」


「解った!近接隊も弓か魔法に切り替えてっ!あれに近づくのは無謀!弓隊と魔法隊はタイミングを合わせて攻撃を続けてっ!」


「「「了解!」」」


 オークロードも追いかけっこをしながら攻撃を受け続けていればいつか疲れが見えて来る筈、そこに俺とエペシュが協力して攻撃を加えれば何とかなるかも知れない。

 塵も積もれば山となる、だ!


「けどっ・・・おわっ!それまでぇぇ!避け続けれるのかぁぁあ俺ぇぇえ!?」


「ぶるっ・・・ぶるっ・・・ぶるあぁぁあうぅっ!」


 エペシュの補助+黒風を身に纏う事で何とかオークロードの捕獲攻撃を避けられてはいるが、それはあくまでオークロードに正常な判断力と動きが出来ていないからだ。

 もしオークロードが俺を殺す事にシフトしたならば、長くない時間の内に俺はバラバラになっているだろう。


 だから相手の体力が落ちるまでこの状態をキープしておきたい所なのだが・・・そう簡単には行かないみたいだった。


「「「ぷごおおおぉぉ!」」」


「・・・っ!一狼!少し援護を薄くする!頑張って!」


「うぉっと!・・・わかっ・・・・った!!」


 未だ戦場に残っている通常のオーク達がボスの登場に勢いづいたのか、攻勢が激しくなったのだ。

 その為エペシュは俺への援護を少し緩め、そちらへと人と力を割かざるを得なくなってしまった。


 更に・・・


「ぶるっ・・・ぶるあぁぁあうぅっ!なぜ!おれの、めすに、ならない!?ぶるあぁぁあうぅっ!!!」


 中々捕まらない獲物に苛立ち、オークロードが地面に突き刺していた武器を取ろうとしていた。


(やばいっ!切れやがった!こらえ性なさすぎだろぉぉ!)


 力は強くとも理性はそうではないらしく、オークロードは俺を殺す事にシフトしようとしたらしい。

 多少は体力を削ったと思われるが恐らく10%も削ってはいないだろう。このまま攻撃を仕掛けられたなら、俺は直ぐに・・・


(くそっ!何とかして時間稼ぎをしなくちゃ!そうすればエペシュ達の援護が戻ってくるはずだ!)


 先程の様に体力を削り、弱らせたならまだ勝機はあるのだ!ここは何としてでも時間を稼がなくてはいけない!


 オークロードが武器を持つまでには極々僅かな時間しかないが、それでもその時間で考えるしかない。

 新たなスキルでも芽生えるかもしれない程に思考を加速させ俺は考える。


 そして導き出された答えは・・・



「グボル!・・・いや、グボル様っ!」


「ぶるあっ!?」


「ね・・・ねぇ、・・・触ってみたくない?」



 色仕掛けだった。



「ほ・・・ほらぁ・・・すっごいんだよぉ?・・・」


 自分の発言に少しサブいぼを立てつつ、俺は変身したことにより自分に着いた大きな胸を両手で持ち上げてオークロードにアピールを仕掛ける。


 勿論効果のほどは・・・


「ぶるっ!?ぶるあああうっ!うぉっぱいぷるんぷるーん!」


 ヤバいほど抜群で、治まっていたはずのオークロードの下半身が怒りに打ち震え始めた。


「う・・・うふふぅー、つかまえてごらんなさーい」


 追撃とばかりに、誇張しまくった感じの女の子走りをしながらオークロードに背を向けると、オークロードの視線は俺の尻にロックオンされ・・・


「ぶるあぁぁぁぅっ!!!おれの!めすううぅぅ!!」


 全力で俺を追ってきた。


(かかったっ!このままにげ・・・・ってぇぇぇ!さっきよりちょっと動きが早くなってるぅぅぅ!?)


 全力以上の全力でも出しているのか、先程より凄い勢いで追ってきたので、俺も100%中の100%を出し全力で逃げる。


 そうして『ドキッ☆周りには女の子だけなのに☆男2人でする追いかけっこ!』が始まった。


 ・

 ・

 ・


「うふふーこっちよーわたしをつかまえてごらんなさーい」


「ぶるぁぁぁっぁぁぁあぅっ!!!おれの、めすぅぅ!うぉっぱいぷるんぷるーん!うぉしぃりぷりんぷりーん!」


「うふふー・・・」


「一狼!だいじょう・・・ぶそう?もしかして楽しい?」


 どれくらいしていたのかは解らないが、俺とオークロードはひたすらに追いかけっこをしていた。

 この追いかけっこで一番疲れるのは、時々オークロードが俺を捕まえらない事にイライラしそうになるたびにセクシーアピールをしなくてはならない事だった。これによりただでさえ体力も削られるのに精神力まで削られるので、俺の体はボロボロだった。


「んなわけあるかい!オデノカラダハボドボドダ!」


「???」


「ナズェミデルンディス!?・・・げほっげほっ・・・早く援護をたのむぅぅ!」


「・・・!解った!通常オークと戦っている、またその予備戦力を残して残りはボスへ一斉攻撃!」


「「「了解!」」」


 疲れと焦り、それに精神的ダメージにより俺の滑舌は最高に悪くなり、何を言っているのか解らなかったみたいだが、それでもなんとか援護を要請すると伝わったのかオークロードへの攻撃が始まった。

 その攻撃を受けると再びオークロードは切れそうになってしまうのだが、俺が今まで以上にセクシーアピールをする事により誘引に成功。何とかエルフ達に意識を向かわせずに引き付け状況を維持する。


 そうやって何とかじりじりとオークロードの体力を削っていっていたのだが、状況に変化が起きる。


 先に俺の体力が尽きたのだ・・・


「はぁはぁ・・・っぐ・・・」


「ぶるぁぁぁっぁぁぁあぅっ!!!ぶるっ!?つかまえた!おれの、めすぅ!」


 一瞬だが動きが鈍り、そこをオークロードに突かれ細いエルフの胴体を片手でガッチリと掴まれてしまう。何とか抜け出せないかともがいてみるもののびくともせず、ピンチに追い込まれてしまった。


「がっ!?く・・・くそ・・・!はなせっ!」


「ぶるっ!ぶるっ!だめだ。おまえ、おれのこ、うむ。いっしょう、いっしょに、いてくれや」


「誰がお前と・・・!」


 オークロードの子供を一生生み続けるとか!?っていうか俺男ぉぉおお!!

 くっ・・・このままメス堕ちさせられるならいっその事俺をこr・・・


「一狼!?全隊合わせて!風よっ!我が矢に宿りて敵を滅せ!!風の矢っ!!」


「「「風の矢っ!」」」


「追加!暴風よ!必滅の風をもたらせ!暴風嵐!」


 薄い本みたいなことを考えてしまっていたら、エペシュが援護の為に今までにないほどの攻撃を仕掛けてくれる。

 女騎士みたいな台詞を吐いている場合ではないと気づき、エペシュ達の援護に合わせて脱出を図ってみる。


(しかしどうするべきだっ!?黒風で怯ませてみるか・・・?いや・・・ここは!!)


「ぶるあぅっ!おれたちの、こうび、じゃまするか!?」


「そんなものはしねぇからっ!『守護の壁』っ!」


「ぶるあぅっ!?」


 俺はエペシュ達の攻撃が当たった瞬間に『守護の壁』を使い、少しだけ緩んだ手と体の間に障壁を作り、広げ、出来た隙間からするりと抜け出す。


「ふぅ・・・何とか助かったぜ・・・」


「ぶるぁぁぁっぁぁぁあぅっ!!にげるな!おれの、めすぅ!」


 オークロードはせっかく捕まえた俺に逃げられて大変ご立腹だったようだが、俺は冷や汗がダラダラ流れていた。

 今回はなんとか逃げれたが、次に捕まったら同じ手は通用しないだろう。なので次捕まった時が終わりとなるかも知れないのだが、俺の体力はほぼ空、つまりそう長くは逃げれないのだ。


(くっそ・・・オークロードの体力も削れてそうなのに・・・)


 ここまでチクチクチクチク削って来た結果、オークロードの体には少しずつ傷が刻まれ、心なしか息も荒くなっていた。

 このまま後2,3時間でも続けていたなら希望が見えてきそうだったのだが、今の俺には到底そこまで逃げ切れる自信はなかった。

 かと言って誰かに任せたとバトンタッチできる事も出来ないこの状況・・・ほぼ詰みである。


 しかも、更に状況が悪くなる事態が起こる。


「ぶるぅぅ・・・。まわり、じゃま、さきに、つぶす」


「なっ・・・」


 オークロードの心変わりだ。


「な・・・なーにいってるのーぐぼるさまー。ほらほらー、わたしとあそびたいんでしょー?」


 エルフ達の方へオークロードを行かせたならば酷い結果になるのは目に見えている。なので何とか引き留めようとセクシーアピールをしてみるのだが、学んでしまったのかオークロードは乗ってこなかった。


「ぶるぅぅ。おれのおんな、おれと、こうびしたい、のは、わかるが、まて。まわり、うるさい、さきに、つぶしてくる」


「・・・っ!そんなこといわずにー、ほらー、ぷるぷるでやわらかいよー?」


「ぶるふっ!あわてる、な。あとで、いっぱい、こうび、してやる。ぶるっ!ぶるぅっ!」


 体をくねらせてアピールするも、全く取り合わず武器を取りに行こうとしてしまう。考えていた状況とは違うが、ここで全力攻撃を仕掛けて見るべきなのだろうか?


「ぶるぁぁぁっぁぁぁあぅっ!!ぶち、つぶすっ!」


「しまっ・・・!」


 俺が迷っている間にオークロードは武器を引き抜きぬいていた。


 そして一瞬の後には姿が掻き消え、エペシュの目の前に現れて武器を振りかぶり・・・


「つぶ、れろ!ぶるぁぁぁっぁぁぁあぅっ!!」


「や・・・やめっ」



 武器を振り下ろした。



「エペシュゥゥゥゥ!」


 俺の目には世界がスローモーションに映っていた。


 オークロードの振り下ろされる武器、その先にいるそんな状況でもあまり表情が変わらないエペシュ、近づく武器・・・そして・・・



『ガギィィィン』



 いきなり現れた1人のエルフ。



「ぎりぎり間に合いましたわね。大丈夫ですの?」



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「おぅ・・・いちろうせくしーね」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が セクシーダイナマイツになります。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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