第105話 エルダーエルフとワンチャン

お詫び:オークロードが死んだ描写がイマイチだった為微修正。

------------------------------------


「こいつがボスでいいんですのよね?」


 いきなり現れたエルフは、オークロードの攻撃を受け止めたのに信じられないほど軽い感じでエペシュへ質問していた。

 エペシュも少しは吃驚していたのだろう、ちょっとだけ言葉を詰まらせて返事をしていた。


 そしてそんな中、攻撃を止められたオークロードと言えば・・・



「ぶるぅあぅ!じゃま、するな!ぶるぁぁぁぁぁっっっぁぁぁぁあああぅっ!!!!」



 それまでずっと焦らされ溜まっていたフラストレーションと、自分の攻撃があっさりと受けられたという屈辱が合わさり、怒りに怒っていた。


「うるさい豚ですわねぇ。もうちょっと静かに出来ませんの?」


 だがその怒りを受けている側は相変わらず軽い感じで、それがまたオークロードの怒りを煽り、遂にはプッツンさせてしまった。


「ぶるぁぁぁぁぁっっっぁぁぁぁあああぅっ!!!!くだけちれぇぇぇえええ!」


「ちょ!やばっ!」


 ブチ切れてしまったオークロードは両手で武器を振りかぶり、今日一番の威力とスピードがこもった攻撃を繰り出した。

 スキルも使っていそうだし流石にあれはヤバいと思って声を上げてしまったのだが、当のエルフはヤレヤレと言った表情を見せた後・・・消えた。


 しかし直ぐにオークロードの攻撃が地面に振り下ろされた為、戦闘現場は土煙が舞い上がり確認が出来なくなった。

 しかし土煙はあっさりと消え・・・オークロードも消滅していた。


「うるさい上に土埃を舞い上げるなんて・・・嫌になりますわ!」


「えぇ・・・」


 土煙を消したのはあのいきなり現れたエルフ・・・恐らくエルダーの・・・


「エメちゃん」


「エメちゃんはよしなさいと・・・はぁ・・・言っても無駄ですわね・・・。それで、大丈夫ですのエペシュ?」


「うん」


 やはり彼女の正体はもう1人のエルダー、この砦村のまとめ役でもある『エメラダ・エルダー・イーストウッド』の様だ。



 名前:エメラダ・エルダー・イーストウッド

 種族:エルフ種エルダー

 年齢:??

 レベル:??

 str:???

 vit:???

 agi:???

 dex:???

 int:???

 luk:???

 スキル:??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? ???

     ??? ??? ??? ??? ??? ??? ??? ???

 ユニークスキル:

 称号:??? ??? ??? ???



 俺より各上でステータスが見れなかったが、間違いなくエルダーのエメラダだった。・・・まぁオークロードをあっさりと倒したので解ってはいたのだが。


 そのエメラダだが見えるステータスだけでなく見えないところも優れている様で、彼女はオークロードを倒した後直ぐにエペシュからこの場の指揮権を譲り受け、瞬く間に場を鎮圧して見せた。

 あっという間に終わってしまったので俺はこっそりと抜け出すタイミングを失ってしまい、エメラダに捕まってしまった。


「ふぅ・・・終わりましたわね。こんなに大規模な襲撃は初めてでしたわ。さて・・・随分エペシュと仲が良さそうですけど、貴女は何処の何方?この砦村の住人じゃありませんわよね?」


「あ・・・あの~、俺はですねぇ~」


 オークロードとの戦闘で疲れ切っていた俺とエペシュが一緒に休んでいると、エメラダはジロジロとこちらを探る様な目つきで質問をしてきた。

 同族には割と寛容だと聞いていたが、不審者だからか態度がキツイ。俺は少しビビりつつ、どう言い訳しようかと考える。


(通りすがりの旅のエルフで通すべきか!?っていうかそれしかないよな!エペシュも確か偶にいるって言ってたし!)


 エメラダがかけて来る威圧にテンパりながら、事前に聞いた話を思い出しそれで説明しようとするのだが、テンパりすぎたのか・・・


「お・・・おりは!旅のエリュフ!エペシュたんと恋人になっちゃので貰い受けようと思いまっしゅ!」


「・・・は?」


「お・・・俺は旅のエルフなので!この後も旅に出るのですぎゃ!恋人になったエペシュさんを置いて行くのが嫌だったのでもらい受けようとぉっ!でも!事前にオーックの襲撃を予期していたのでぇ!それが終わってから旅に出ようとぉしてましてですねぇ!」


(・・・ん?俺、言ってる事不味くね?)


 この段になって漸く自分が何を言っているのか解ったのだが、俺は確実におかしな事を言っていた気がする。

 しかし言ってしまった言葉は取り消せず、上手い具合に何とか調整してくれという意味を込めてエペシュに目配せをすると、任せろと言わんばかりに頷いてくれたのでほっとして息を吐き出した・・・


「その通り、私と一狼はラブラブ。だから一狼に着いて行くから村から出ていく」


「・・・っぼ!?ぶえっふ・・・げっふ・・・ちょ・・・」


 ・・・と思ったら、エペシュが口にした予想外の回答を聞いて咽てしまう。


「襲撃も鎮圧できたし、いいよね?」


「え、あ、ええ?」


 咽てしまっている間に話はどんどん進んで行き・・・


「引き継ぎの為にしてくれてた勉強は無駄になっちゃったのだけはごめん。でも決めたんだ」


「まぁそれは気にしてないですわ?え?決めた?」


「うん。決めた。あー・・・うん、そうそう、ラブラブだから一緒に行くって決めた」


「は・・・はぁ?」


 そして・・・


「じゃあ、行動は早い方がいいからもう行く」


「え?今からですの?」


「うん。行こ一狼」


「えっふえっふ・・・えっふ?」


 エペシュ以外の頭が混乱している内に、俺達は砦村から出発する事となった。


 ・

 ・

 ・


 頭は依然混乱していたが「取りあえず急いで離れた方がいい」というエペシュの言に従い、変身を解いてエペシュを背中に乗せ全速力で北へと走った。

 辺りが明るくなるまで走った所で俺の頭も大分冷えて来たので一度止まり、エペシュと話をする事にした。


「大分離れたし一旦休憩にしよう」


「うん。エメちゃんが本気で走ってきたら危ないけど、流石に未だ砦村の復旧とかしてると思うから大丈夫そうだし賛成」


 少ししか見ていないが、確かにあのエルダーが本気で走ってきたらこの距離も直ぐだろう。まぁ時々スキルを活用して空を飛んだりしたので痕跡もまばらだし、エペシュの言う通り未だ砦村の復旧作業してるだろうし大丈夫だろう。


「っと・・・それよりちょっと言いたい事と聞きたいことが・・・」


「うん?」


「先ずはすまん!テンパっておかしな事を言ってしまったせいでこんな事に!本当にすまん!」


 俺は犬式土下座・・・まぁ伏せなんだが、それをエペシュにしながら謝る。


「ううん、いいよ。それに私も恋人って言ったらいいって言ってたし」


 エペシュは軽い感じで気にしていないと言ってくれるのだが、本当にいいのだろうか?・・・というか


「それで・・・何であそこで俺の話に乗っかったんだ?頷いてくれたからてっきりいい感じに調整してくれるかと思ったのに。『やっぱり心配だから村に残る』みたいな感じでさ?」


 一緒に村の中を歩いている時に思ったのだが、エペシュとあの砦村に住むエルフ達は仲が良かったように思う。

 気さくに会話を交わしていたし軽い冗談等も言いあっていたので、互いに信頼し合えるいい仲間なんだなと俺は思っていた。


「ゴブリン達をぞんざいに扱っているところを見ても嫌いになれなかった仲間達だろう?なのに離れても良かったのか?」


 優しい心を持つエペシュは、虐げられるゴブリンに同情的だった。普通それだと虐げている方のエルフ達に悪感情を持ったりするものだが、そんな感情が出てこないくらいに仲間達が好きだった筈なのだ。


「えっと、着いてきたのはちゃんと考えたから」


 全てに優しい心を持つエペシュが言ったのはそんな言葉だった。


「仲間達の事は大事、だけどゴブリン達も嫌いじゃない。だから、できれば何か他の方法はないかって探してみたい。だから一狼に着いて行ってその方法を探すのもいいかなって思った」


「なる・・・ほど・・・?」


 エペシュの言いたいことはなんとなく解った。

 つまりゴブリンを錬成せずにエルフが繁殖できる方法を探したいという事か?


「・・・ごめん、実は逃げてるだけっていうのもある。エルフの村にいるとゴブリン達の虐げられる姿を見てしまうから、それをあんまり見たくなくて旅に出たいっていうのもある」


「あー・・・」


 エペシュはあまりにも大きな問題にぶち当たりどうしていいのか解らなくなっていたみたいで、しょぼんとしながら『逃げている』と告白して来た。

 そんなエペシュに俺は何と声をかけていいのか迷った末に、ありのままを話してみる事にした。


「まぁ・・・逃げるのもありっちゃありかもしれない。正直俺もなんて答えていいのか解らないし、この問題の答えは自分で考えるしかなさそうだしな。まぁ・・・ゆっくり答えを探すしかないと思う」


「うん・・・」


「妾もそう思うのじゃ。そして何と答えるか、それこそが妾が見たいものなのじゃ」


「うおっと!?」


 いきなりニアが会話に入ってきたので驚いたが、言っている事は中々の台詞だった。普通の人がこの台詞を言ったのならば、つい『この外道がぁぁあ!?』とか言ってしまいそうだ。


「・・・っとまぁ幸いにもエペシュはエルフだろ?ゆっくり考えればいいさ。問題に逃げずに立ち向かうのはそれからでもいいんじゃないかな?」


 俺がそう言うと、エペシュは声を出さずに頷いたので前足で頭を撫でてやり、ゆっくり休ませるために今日はもう休むことにした。

 エルフが追ってくるかもと少々気がかりではあったが、ニアも「恐らく2,3日は村の復旧を優先するはずなのじゃ」と言っていたので気にしないことにして、俺達はレモン空間へと移動した。



「おぉ一狼様、作戦は成功ですなゴブ。ゴブ?エペシュ様ゴブ?」


 レモン空間内へと入ると長老が出迎えてくれた。


「ああ、最終的にちょっとな。取りあえず疲れたから休ませてもらうわ」


「解りましたゴブ」


 俺とエペシュはオークとの戦闘で疲れていたので休ませてもらう事に・・・森の中へと入り、適当な所でエペシュを囲む様に丸くなって腰を下ろす。


「ふぅ・・・疲れたな」


「うん、疲れた。おやすみ」


 オーク達と激闘と繰り広げていたので疲れていたのだろう、エペシュはどこぞの漫画のキャラの様に、お休みと言った1秒後にはスヤスヤと眠りについていた。


「はっや・・・って俺も眠くなってきたな・・・」


 エペシュの可愛い寝顔を見ていたら俺も眠くなってしまい、大きな欠伸をしてしまう。


「ふぅぁ~・・・・ぅ・・・起きたらいよいよ移動再開だし・・・寝よう・・・」


 ゴブリン達の救出が済んだので、明日からは魔境地帯への旅がいよいよ再開される。



 早くごぶ助達に再開したいなと思いながら、俺は眠りへと落ちていった。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「お嬢様口調のエルフは大好物です」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると エメラダが 鞭でビシバシ叩いてくれます。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る