第100話 作戦決行のわんちゃん
≪ゴブリン達の救出作戦決行直前≫
レモン空間内にある森にて、俺はゴブリン達の前で気合を入れながら声を出していた。
「よしっ、んじゃあ行ってくる!」
「はいゴブ、ご武運をお祈りしますゴブ!」
「「「たのんだごぶ!」」」
ゴブリン達も心なしか気合の入った返事と共に踊りで見送りをしてくれたので、俺はそれを見てからレモン空間の外へと出た。
「うっし・・・やるぜぇ!」
外へと出ると、俺は自分を奮い立たせるかのように声を出す。
するとそれを聞いたニアが鼻から息をフンッと出しながら呆れ声を出した。
「先ほどまで『これでエペシュとはもう会えないのかぁ・・・はぁ~・・・』とうじうじしておったが、漸く集中し始めたのじゃ。会おうと思えば10年後でも20年後でもいくらでも会えるじゃろうに・・・」
「う・・・うじうじなんてしてないし?それに10年後20年後って・・・忘れられてるかもしれないじゃんかよ・・・」
ニアに図星を刺されて、折角奮い立たせたテンションがまた下がり気味になって来たのが解った。
(くぅ・・・っは!イカンイカン、今はゴブリン達の救出だ。エペシュの事は・・・うぅ・・・さらば俺の女神・・・)
このゴブリン救出作戦なのだが、実は終わり次第俺達は魔境地帯へと出発する事になっていた。
なので昼間にエペシュとは別れを済ませていたのだが・・・
(はぁ~・・・俺の女神・・・せっかく見つけたヒロインなのに・・・)
俺は未だにそれを引きずっていた。
(っていかんいかん。今からゴブリン達を助けるんだ!気合を入れろ俺っ!)
しかし今からゴブリン達の救出作戦だ。ヒロインも大事だが、俺にとっては家族も同然なゴブリン達も大事なのだ!集中しなければ!
俺は再度心を奮い立たせ、エルフの砦村へと『隠蔽』を全力で掛けつつ移動する。
今の時刻は真夜中で、月も新月にほど近いので月明りも薄っすらだ。それで俺が『隠蔽』を使いつつ移動したのなら、毛の色も相まってとても見つかりづらい筈だ。
(これで隠密行動をしつつゴブリン達をレモン空間へ収納し離脱、シンプルだが成功率は高い作戦な筈だ!)
俺・エペシュ・長老の建てた作戦はとてもシンプルだった。
といっても事前に現地も偵察して下準備は万全なので、作戦はシンプルでもこれで十分な筈なのだ。
一応懸念点として俺の隠密行動を見破れそうなエルフのエルダーもいるのだが、他の一般エルフに見つかり『敵襲ぅ!』とでも叫ばれない限り寝ている筈なので大丈夫!とはエペシュ談だ。
(何回か接近されたこともあるが、全然気づかれる様子もなかったから問題はない筈だ。いざとなれば騒がれる前に・・・)
あまり取りたくない選択肢だがそれも考慮しながら進む。
そしていよいよ砦村が見えて来た時の事だ・・・
『敵襲ぅぅ~~~!!』
「あるぅえ?」
(何故ばれたっ!?今日に限ってエルダーのエルフが見張りでもしていたと言うのか!?)
万が一の確率でも引いたのだろうか?一応出かける前にユニークスキルを使ったのだが、こんなワンチャンいらないのだが!?
【一狼、見つかったのはお主ではないのじゃ。よう見てみるのじゃ】
(んぇ?)
漏れていた思念へと返答してくれたニアなのだが、最初は言っている意味がよく解らなかった。
しかし常時展開するようにしている『索敵』に反応があった事でそれが解って来た。
(成程・・・俺とは別の魔物の敵襲か)
俺の『索敵』にはエルフ以外に反応が多数あり、一番近い反応だと何とか目視できる距離だったので見てみると、魔物が砦村を襲っている様だった。
薄っすらと姿が確認できた魔物はどうやらオークの様で、『索敵』に反応しているだけでも結構な数のようだ。
(ふぅ・・・見つかったのが俺じゃなくて良かった・・・けど・・・)
見つかったのが俺でなくオークだったのは良かったのだが、救出作戦はどうしようと考えてしまう。
このまま混乱に紛れてゴブリン達を救出するか、若しくは日を改めるか・・・
このまま救出するとなると砦村全体が騒がしいのでそれに紛れて行動を行えるのだが、作戦の懸念点であるエルダーが起きているかもしれない。
逆に日を改めるとエルダーに会う確率が低くなりやや安全になるかも知れない。
となると、日を改めた方が良さそうなのだが・・・
(取りあえず遠巻きに様子を伺ってみるか。もしエルダーが出張っているなら、その内にあの建物に忍び込めば安心してゴブリン達を救出できるしな)
俺は一先ず様子を伺う事に決め、『索敵』を意識的に強めて、戦場の様子を目視とスキルで確認していく。
ざっと村の周囲を探った所、西側・・・魔の森方面からオークは来ている様で、戦場はそちらに偏り東側は割りと静かだった。
(これは東側からこっそり行けば大丈夫かも知れないな・・・。どうやらエルダーが2人共戦場に出ている様だし・・・)
こっそりとエルフ達の会話を聞いたところ、どうやら2人のエルダーは西側の南北に分かれて戦っているそうだ。
かなり強いらしいまとめ役はともかく、エルダーだがまだ幼いエペシュは大丈夫なのかと心配になるが、ここで俺が出ていくと俺まで退治されかねないし、万が一エペシュが俺を庇ったりしたらエペシュの立場が不味くなるかも知れない。
なので『索敵』を使い最大限気にはするが、やばい状況にならない限りは手出しをしないでおこうと決めた。
それにニア曰く・・・
【あやつの強さは一狼ぐらい強いと言ったであろ?オーク如きには負けんのじゃ】
との事。
一応強めのオークの進化種もいるみたいだが、後方に控えているのでゴブリン達の救出が終わってからでも間に合うし、まとめ役のエルダーが助けるだろうともニアは言った。
俺の方でもオークの進化種の事は確認して、確かにその通りっぽいと思ったので、俺は救出作戦を決行する事にした。
(よし!行くぜっ!)
心の中で気合を入れると、俺は静かな東側の壁を飛び越えて砦村へと侵入した。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「敵襲ぅぅ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると エロフが、襲撃を仕掛けてきます。
お知らせ:皆様の応援のおかげでついに100話です!(ちょっと話が短いのはご愛敬という事にしてください。
何時まで続くか解らない拙作ですが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます