第97話 進化ぁ・・・のわんちゃん

 カッと強い光がレモン空間内を満たし、レモン空間内にいた者達は目を瞑った。


「「「ごぶうっ!」」」


「眩しい!」


「眩しいのじゃ!」


 しかしその光は直ぐに治まり、目を瞑っていた者達は目を開けるのだが・・・


「煙が出てる?」


「丁度一狼が居った所なのじゃ」


 ある場所に何故か濃い煙が漂い、そこに居ると思わしき1人の魔物の姿を隠していた。

 エペシュやゴブリン達はそのすぐ近くまで寄って来て、最初から煙のすぐ傍にいたニアへと話しかけた。


「何かあった?」


「うむ。一狼が進化したのじゃ」


「おお!それは凄い事ですゴブ!お祝いをせねばゴブ!」


「「「おいわいごぶ!おいわいごぶ!」」」


 事情を知ったエペシュとゴブリン達はすっかりお祝いムードになり、煙の向こうにいると思われる1人の魔物に声をかけた。


「一狼お祝いしよ。早く出てきて」


「神様の為に・・・間違いましたゴブ。一狼様の為にお祝いゴブ!」


「「「ごぶごぶ!」」」


 やんややんやとその場は明るいムードになり、煙の向こうからその人が現れるのを今か今かと待っていた。


 やがて煙の奥に影が映り、お祭りムードのその場所へと近づいてくるのが解った。


「随分ゆっくりだったのじゃな?何かあったのじゃ?」


 ニアが影に声をかけると、返答が返ってくる。


「いや・・・何かあったわけではないんだが・・・」


 やがて声の主は煙から抜け、その場に姿を現す。


「唯煙が出てたのに驚いてな・・・。あ、すまん、待たせた」


「そうかそう・・・か・・・のじゃ?」


「あ、き・・・た?」


「おお!神・・・いや一狼さ・・・まゴブ?」


「「「ごぶごぶ!ご・・・ごぶっ!?」」」


 何故かその場にいたモノは1人を除き、全員が固まっていた。

 その固まっていない唯一の魔物・・・一狼は、周りの様子がおかしいのを感じて声をかける。


「どうしたんだ皆?何かあったのか?」


「・・・」


 一狼は一番近くにいたニアへと顔を向けるのだが・・・顔を向けられたニアはズリズリと後ずさった。


 一狼はあれ?と思い次は長老に声をかけるのだが・・・結果は前者と変わらない反応を見せた。


「どうしたんだ皆!何かおかしいぞ!」


 流石にこれは何かおかしいと思い、全員を見渡しながら大きな声で叫ぶと・・・


「だって・・・○○○のじゃ・・・」


「神・・・いや一狼・・・○○○ゴブ・・・」


「「「○○○ごぶ」」」


「え・・・?何だって?」


 皆から何かを言われたのだが、肝心の部分が何故か聞こえず俺は聞き返す。

 するとニアが魔法でも使ったのか、その場に大きな鏡を出して言った。


「一狼・・・キモイのじゃ・・・見よ・・・」


「え・・・?」


 鏡は映し出す・・・その悲しきモンスターを・・・


「ふぁぁぁぁああ!?」


 その悲しきモンスター・・・人面犬は・・・人間の顔を付けた犬の姿をしていた。

 それだけなら未だましだったかもしれないのだが、問題はその顔・・・


 その顔は・・・禿げたおじさんの顔だった。


「なっ・・・なんじゃこりゃぁぁぁああ!?」


 それは正にググったら出て来るような『the 人面犬』だった。


「ちょ・・・ちがっ・・・」


「ひぃ!よるでないのじゃ!」


 ニアの方を向いたら拒絶され・・・ゴブリン達には指を刺された。


「「「ひそひそ・・・ごぶごぶ・・・」」」


「あ・・・あっ!」


 俺はハッとしてエペシュへと顔を向ける。


 エペシュなら!きっとあの女神なら俺を受け入れてくれる!


 そう思いながら女神エペシュへと顔を向けると・・・


「キモイ・・・帰る・・・」


 嫌な顔をされて帰ると言われた・・・


「ふぁ・・・ふぁぁぁぁぁああああああ!!!???」




 ・

 ・

 ・




「ふぁ・・・ふぁぁぁぁぁああああああ!!!???」


「何を叫んでおるのじゃ?」


「ふぁ?」


 すぐ横から声を掛けられ振り向くと、ニアが不思議そうな顔をしていた。


「え・・・?あれ・・・?」


 周りを見渡すと、少し離れた所ではエペシュとゴブリン達が何かをしていた。


「え・・・?夢・・・?」


 そこで俺は初めて気づいたのだが・・・どうやら先程のは夢、というか妄想だった様だ。

「よ・・・よかったぁ・・・」と気が抜けてへたり込む俺の横で、ニアは俺のステータスを見ていた様でふむふむと頷き、その後俺の周りをグルグルと周り出した。


「まぁこんなものじゃろうな。うーむ・・・それにしても、こんな種族は初めて見たのじゃ。やはり転生者は不思議なのじゃ」


 ニアの言葉にビクッ!と体を震わせてしまい、俺は恐る恐るニアへと尋ねた。


「や・・・やっぱり俺は悲しきモンスターなのか・・・?」


「うん・・・?悲しいのかや?」


「いや、そうじゃなくて・・・その・・・」


 俺は言葉に詰まってしまう。ストレートに「俺はキモイのか?」と聞ければいいのかもしれないが・・・俺にはそんな勇気はなかった。

 もしあの妄想みたいに「うわぁ・・・」って顔をされたら・・・そんな風に考えた時、俺は妄想のある場面を思い出し聞いて見た。


「なあニア・・・?魔法で鏡みたいな物って出せたりする?」


「うん?出来るのじゃ。ああ、自分の進化後の姿を見たいのじゃな」


 あれは妄想だったのだが、ニアは現実でも鏡の様な物を魔法で作り出せるみたいで、ニアが「ほれ」と軽く声を出すと、俺の後ろに何かが現れた気配がした。


「あ・・・ありがとう」


「うむ」


 俺は礼を言った後ゆっくりと後ろを向く・・・



「人に引かれないくらいの姿であってくれ!」と祈りながら・・・



 そんな事を願いながら見た鏡に映っていたのは・・・




 進化前とほとんど変わらない姿だった。




「え・・・?変わってない・・・・?」


 鏡に映った姿が以外すぎて、ついついそんな事を言ってしまうのだが・・・


「逆に良かった・・・」


 俺はホッとしていた。

 映った姿が意外と言うが、俺はてっきり妄想の時みたいな『the 人面犬』を想像していたので、変わっていなくて逆に良かったと思っていた。

 そんな俺の心を知らず、「ん?変わってなくてよかったのかや?」とニアは言うが・・・良かったんだよっ!


「しかし本当に変わってないな・・・しいて言えば小さくなった?」


 体を回しつつ側面等も見ていたのだが、俺の目には進化して変わった個所が解らなかった。

 唯一解ったのが体の大きさで、今まではニアの3分の2程度の大きさだったのが、半分くらいのサイズまで縮んでいた。


「まぁこれくらいのサイズ変化なら許容範囲かなぁ・・・」


 ニアの半分とは言うがゴブリンやエペシュ達からすると大きく、何かあった時は背中に十分乗せれると言った大きさだったので問題はなさそうだった。


「となると、気になるのはステータスだな」


 外面問題が解決すると、今度は途端に内面・・・ステータスが気になってきたので俺はステータスチェックをすることにした。



 名前:一狼

 種族:人面犬

 年齢:0

 レベル:1

 str:963(105↑)

 vit:796(98↑)

 agi:1026(97↑)

 dex:792(141↑)

 int:975(133↑)

 luk:694(126↑)

 スキル:雄たけび 咬みつき ひっかき 鑑定 氷魔法 念話 守護の壁

     火魔法 集中 調理 統率 教練 黒風 レモンの入れもん

     魔導の心得 索敵 隠蔽 ≪進化特典・選択≫

 ユニークスキル:ワンチャン 神つっこみ

 称号:元最弱犬 転生者 ダンジョン1階層突破 特殊進化体 群れの長

    軟派者



 ステータスの上りも中々よく、この感じからするとdexとintがよく伸びる数値らしいが、最近魔法・・・主に『黒風』を使う俺としては、intが伸びるのは大歓迎なので嬉しいかもしれない。


「さて・・・進化で一番の目玉を見てみるか・・・」


 進化した時に毎回もらえている進化特典、これは毎回俺的神スキルがもらえているので期待せずにはいられないモノだ。

 俺はゴクリと喉を鳴らしながら選択画面へと移る。



 ≪進化特典・選択≫

 ・1つ のスキルの中から一つ選択して取得できます。

『シェイプシフト』



 あれ・・・?1つだけ・・・?



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「夢で良かった!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が、怪盗100面相になります。

 

 お知らせ:皆様のおかげで累計PV1万に到達いたしました。ありがとうございます。特にこの文章を読んでいる方は、ここまでずっと読んでくれている方達なので、拙作を支えてくれている人だとも言えます。本当に感謝しております。

 長くなりましたがこの辺で・・・、これからも応援よろしくお願いいたします。


 こちらも連載中です。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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