第90話 出会うわんちゃん

 レモン空間での夕食時、俺はモソモソと静かにご飯を食べていた。


「どうしたごぶ?おいしくないごぶ?」


 そんな俺の様子に気付きごぶ蔵が声をかけてくれるのだが・・・


「いや、おいしいよごぶ蔵」


「うむ、一狼が暗い感じなのは助平の結果なのじゃ。あまり気にせずともよいのじゃ」


「ごぶ?」


 ニアから再び助平め!と言われテンションがまた下がる結果に・・・


 おとこだし いいじゃないか すけべでも  一狼


「うん?何か変な感じの思念を感じたのじゃ」


「キノセイデスヨ、キット」


 何となく頭に浮かんだ俳句(っぽいもの)を詠んだらニアに察知されてしまった。

 いかん・・・、気分を切り替える為にも話題を変えよう。


「そういえば長老、長老達を助けてくれたエルフ・・・エペシュだっけ?そいつは何時頃に来ていたんだ?」


「ゴブ・・・、何とも言えないですゴブ」


 明日接触してみる予定のエペシュとやらについて長老に聞いて見たのだが、そんな答えが帰って来た。

 となると、現れるまでずっとあの木の近くで待機していた方が良さそうだな。


「そうか、解った。因みにエペシュってやつは小柄な感じのエルフでよかったんだよな?」


「そうですゴブ。他のエルフに比べて小さかったので、もしかしたらまだ子供だったのかも知れないゴブ」


 エペシュというエルフは、長老達が隠れていた場所でみた小柄なエルフであたっていたみたいだ。


「成程・・・ありがとう長老」


「お役に立てたならよかったゴブ」


 長老に話を聞いたおかげで明日の方針は固まったな。


 俺は明日に備えて早めに寝ようと、ご飯を食べたらすぐに眠りについた。


 ・・・決してニアの「助平め」という視線から逃げた訳ではない。


 ・

 ・

 ・


 翌朝起きるとニアの俺を見る目は平時の感じに戻っていた。スパッとした性格で助かったとホッと息を吐く。

 その後ご飯を食べ終えると、俺は外に出る前にゴブリン達へ一声かけていく事にした。


「それじゃあ行ってくる。もしかしたら次はエペシュってエルフも連れてくるかもしれない」


「解りましたゴブ」


 長老に話をするとスムーズで助かるな!


「それじゃあまた後で!」


「いってらっしゃいゴブ」


「「「いってらっしゃいごぶ!」」」


 俺とニアはゴブリン達に見送られて外へ出るのだが、今日はスキル等は使わずそのまま出た。


「うん?今日は『隠蔽』等使わんかったのじゃ?」


「ああ、実は・・・」


 実は昨日、密かに『レモンの入れもん』スキルの検証を行い、中から外の様子が見れることを発見できたのだ。

 流石進化特典のスキルだな!とその時テンションが一時上がったのだが、助平事件のせいで直ぐにテンションが下がったのは秘密である。


 俺がテンションの事以外をニアに説明すると、「日々精進しておるのじゃ。良い子なのじゃ」と褒められた。


「ま・・・まぁね?」


 素直に褒められると照れるんだが!


 照れた俺はその後、心落ち着かぬままエルフが現れるのを待っていたのだが、昼くらいには何とか平時の心持ちに落ち着いていた。


「うーん・・・、しかし来ないな・・・」


「果報は3年寝て待て、という奴なのじゃ」


「ちょっと違う・・・」


 通じない事も無いだろうが少し違うんだよなぁ・・・。とはいえ、待つしかないってのは確かだ。


 俺達はその後も隠れていたのだが、日が落ちて暗くなった辺りで『索敵』に反応があった。


「ん・・・?来たか?」


「そのようなのじゃ」


 エルフ村の方から此方へと向かってくる気配を『索敵』で捉えたのだが、気配は1つだけではなかった。

 その為少し警戒を強めながら待っていると、視認できる距離に2人の人物が現れた。


 2人はフードみたいな物を被っていたので顔が解らなかったが、体形的には小柄な感じがするので、片方はあのエルフだと思われた。


 しかしあと1人は一体誰だ・・・?ゴブリン達を助けていたエルフは複数いた?


 そんな事を考えていると、2人は例の木へと近づき仕掛けを作動させ、空いた穴へと入って行った。


「おっと・・・行ってくる」


「解ったのじゃ」


 ニアに一声かけて俺も例の木にある隠れ家へと入ることにした。

 相変わらずギリギリの穴に体を詰め込み中へと入ると、奥の方から何やら声がした。


「居ない・・・!?一体何が・・・、まさか見つかった!?」


 声の主は消えた長老達の事で焦っている様だったので、長老が話していたエルフ『エペシュ』とやらで間違いが無さそうだ。

 俺は長老達の居た広い空間へと静かに入ると、オロオロとしている背中に声をかけた。


「ここにいるゴブリン達なら大丈夫だ、俺が保護した」


「・・・っ!?」


 俺がいきなり声をかけたモノだから吃驚した様で、1人はこちらを振り向きながら後ろへ飛びのいたのだが・・・


「・・・」


 もう1人はその場で振り向いただけで特に動かなかった。・・・寧ろ近づいてきた。


「お・・・?」


「近づいたら駄目!」



 後ろへ飛びのいた方が声を上げるのだが、そいつは俺へとそのまま近づき、手を伸ばして・・・



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。短めですいません!

「面白い」「続きが気になる」「いちろうこころのはいく」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が、毎回俳句を詠みます。


 最近本作を書くことに詰まって来たので、気分転換に新作始めました。そちらも読んでくれれば嬉しいです。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

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