第89話 偵察ではなく覗きをするわんちゃん
俺達はごぶ蔵の作った美味いご飯を食べ終え、円を描くように座りながら話をしていた。
「今日俺達は皆をここに連れて来た後エルフの村を偵察していたんだが、それについて話がある」
そこで一度言葉を止め、ゴブリン達の顔を見て行く。
「もしかしたら皆にはツライ話かもしれないが聞いてほしい、話す内容について皆の意見が聞きたいんだ」
ゴブリン達にそう問いかけると、全員が「何でも聞いてくれ」と言わんばかりの顔をしていた。
俺は軽く頭を下げ感謝し、話を続ける。
「まず・・・」
まず頭に裸体の妖精が浮かんだが・・・いや、これは話さなくてイイだろう。しかし浴室で見たゴブリンの事は聞くべきだな。
「部屋の掃除をしているゴブリンを見たんだが、捕まえられた後はそういう事をさせられていたのか?」
俺が聞くとゴブリン達は頭を縦に振ったり横に振ったりとまちまちだった。その中で、長老だけは首を動かさずに口を動かしてくれるみたいだ。
「させられていた者もさせられていない者もいたゴブ。エルフ達は儂達を便利に使っていたゴブ」
「成程・・・」
召使い・・・いや奴隷みたいに使われていたっぽいな。
「じゃあ次に・・・」
俺はこの後エルフ村で見た事をゴブリン達に聞かせ、その事に対する答えを聞かせてもらった。
・
・
・
「今日偵察で見たのはこのくらいだから、これで質問は終わりだ。ありがとう皆」
「こちらこそ儂等ゴブリンの為に動いてくれてありがとうございますゴブ」
ゴブリンへの聞き取りも終わり礼をすると、ゴブリン達も礼をしてきた。互いに礼をし合い顔を上げると、取りあえず今日は終わったなと気が抜けて来た。
「ふぅ~・・・、また明日も質問するかもしれないけど、それまでは何にもないから寛いでいてくれ。俺はもう寝る事にするよ」
「解りましたゴブ。おやすみなさいですゴブ」
流石長老といった感じで、長老はゴブリン達のまとめ役をしてくれていた。
ダンジョンでごぶ助が居た時より楽に感じるので、やはり年の功は偉大だなと感じる。
「ああ、おやすみ」
俺は安心して眠りについた。
・
・
・
翌朝、俺が起きた時にはすでに何名かのゴブリン達は起きていて、すでに朝食の準備も進められていた。
「おはよう皆」
「「「おはようごぶ」」」
「おはようございますゴブ」
勿論長老も起きていて、長老は片足が無いから自分はそれほど動いていなかったが、人を上手く使い円滑に朝食の準備を進めていた。
いや、本当に流石だな長老・・・やっぱりこいつゴブリンではないのでは・・・?
俺の中に再び長老ゴブリンではない説が出て来たが、見た目は何処からどう見ても皺の多いただのゴブリンだった。
そんな風に長老を見ていると、見られていることに気付いた長老はニコリと笑いながら「もうすぐできますゴブ」と言ってきた。
いや・・・別にご飯はまだかと催促していたつもりではないんだが・・・。
そうしているうちに残りのゴブリン達も起きだし、揃ったところで朝食となった。
俺はご飯を食べつつ今日の予定をゴブリン達に伝える。
「俺は今日もエルフの村へ偵察に行ってくる。その時食材とかも適当に取ってくるから・・・ごぶ蔵、確認しておいてくれ」
「わかったごぶ」
「他の皆は・・・そうだな、ゆっくり体を休めておいてくれ。まだ怪我も治ってないしな」
「解りましたゴブ」
長老達怪我をしていたゴブリン達は、収納してあった薬草で簡易的に治療は施したものの、まだそれほど良くなっていなかった。
動き回れないほどではないのだが、ゆっくりしていた方が治りが早いのは間違いない。
「すまんな・・・俺が回復魔法でも使えていたら良かったんだが・・・」
「滅相もありませんゴブ。かみさ・・・一狼様には薬草を貰いましたゴブ。それだけでも十分ですゴブ」
長老、君また神様って言おうとしたね?
・・・とまぁそれはイイとして、回復魔法ほしいなぁ。
依然ニアにチラッと聞いたが、回復魔法は覚えるのが難しいらしく、ニアも得意ではないらしい。まぁそれでも仕えているので流石と言わざるを得ないのだが。
進化出来そうだったら『ワンチャン』使ってみて、次の進化特典で出てくるのを期待するのもアリかもしれないな。
・・・っと、思考が逸れたがそろそろ出かけるか。
「じゃあソロソロ俺達は出てくる。夕方・・・っていってもここじゃ解らないと思うが、夕方に戻ってくるな」
「解りましたゴブ。行ってらっしゃいゴブ」
「「「「いってらっしゃいごぶ」」」」
俺とニアはゴブリン達に見送られてレモン空間から外に出る。
一応外に出る前に最大限『隠蔽』等を施し気配を消して出ているが、出る前に外の様子を確認したいものだな。・・・後で出来るか確認しておこう。
「・・・よし、大丈夫だな」
しかし今回は出てから確認するしかなかったので、すばやく確認を済ませてホッと息を吐く。
そしてそのまま『索敵』を使いながらエルフの村へと向かわず、取りあえず食材を探すことにした。
先にエルフの村へ向かって後で食材探しをしても良かったのだが、何となく先に食材探しをして、いい感じに集まったところでエルフの村へと向かう事にした。
そんな訳で食材を取ってレモン空間へ放り込む事小一時間程、そろそろいいかとエルフの村へと向かった。
「さてと、今日も警戒の薄そうな所を探してみるか」
エルフの村外壁へと辿り着くと、昨日と同じく壁に穴を開けて様子を伺う事にした。
「え~っと、まずはここら辺かなぁ~」
「・・・」
俺はさり気無くここは確認するべきと定めたポイントへと移動し、すでに開いていた穴へと近づいた。
若干後ろからの視線が気になるが、これは偵察、エルフの様子と生態を探らなくてはいけない重要な事なのだ。
「オット、ココハキノウモミタトコロダッタ。デモイチオウミテオコウ」
「・・・助平め」
何か言われた気がするが、気づかないふりをして俺は穴の中の様子をまじまじと見る。
そこには今日も妖精達が裸体で戯れていた。
「今日私外周りなのよねー」
「えーそうなんだー」
「あら貴女やっぱり・・・」
「やぁ~ん」
「・・・」
う~ん、神秘・・・神秘が満ち溢れた光景ですぞぉぉぉ!
俺は女体と言う未知なる神秘を解き明かすべく、覗いた先の浴室をマジマジと見て頭に焼き付けていく。
ええやん・・・ええやん・・・ええやんけ・・・。ボインボインも居るしスラッとしたのも居るし・・・ええやんけぇ・・・。
ラノベやゲーム等では、エルフと言えば大体スレンダー体形が殆どなのだが、この世界のエルフはそうでないらしく、個人差が凄かった。
背が高いのもいれば低いのもいるし、体形がボンキュッボンなのもいればペターンなのもいる。しかし一様に皆美しく、とても目に眼福だった。
1人1人よく見ていったのだが、その中でも1人、何故か妙に気になる子がいた。
特に目立った感じではないのだが、俺の目は何故かその子に惹き付けられたかのようになり、目が離せなくなった。
そして気が付くといつの間にか浴室からはエルフ達が消えて、代わりにゴブリンが掃除をしていた。
「何時の間に・・・」
「一狼があの幼げなエルフを食い入るように見ている間に、なのじゃ。助平な上に性癖も歪んでおるのかや?」
「ち・・・違います!違うんです!」
確かに俺が見ていたのは少女とも呼べる感じの子だったが、決して俺が炉理のコンな訳ではないんです!
俺は何故かニアに必死に弁解をした。俺は炉理のコンではなく、オールマイティだと。下から上まで何でもイケちゃうんだと。
その後俺は必死に弁解を続けたが、俺を見るニアの目、あの何とも言えない目を俺は忘れる事はないだろう。
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「おまわりさんこのひとです」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると 一狼が、聖人になります。
最近本作を書くことに詰まって来たので、気分転換に新作始めました。そちらも読んでくれれば嬉しいです。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます