第88話 ピンクな思考とわんちゃん

 俺が見たエロフ村・・・そこはまさにこの世の楽園だった。


「うふふ・・・やだもう・・・」


「えぇ~、いいじゃない」


「あら貴女・・・」


「やんっ・・・」



「お・・・おぉぉ・・・」


 俺が覗き見た先には裸体の妖精たちがキャッキャウフフと戯れ、まさに天国!ここがヴァルハラ!存在したのかエロフ村!といった桃色空間で、俺は思わず声をだしていた。

 裸体の妖精たちは小屋の様になった空間で、その美しい裸体を惜しげもなく曝しあいキャッキャしていた。

 壁を小屋の壁の一面として利用しているのだろうか?偶々とはいえ凄い光景にでくわしてしまった。


 ・・・だが今は余計な事を考えなくてもいい。唯々神に感謝して・・・頂きます!(?)


 俺は壁の穴に噛り付くように張り付き、鼻息を荒くしながら素敵な光景を見ていた。


「む?」


 そんな俺を不思議に思い、ニアもチラリと穴を覗き見る。


「うん?エルフ達が水浴びをしているだけではないかや?・・・あぁ!そういえば一狼は元人だったのじゃ!・・・童のくせに助平な奴なのじゃ」


「・・・っは!?ち・・・違う!こ・・・これは・・・そう!観察!れっきとした観察だ!決して女の裸が見たくて覗いているんじゃない!」


 ニアに覗きで喜んでいることを指摘されると、俺は何故か不貞を指摘された夫みたいな言い訳をしてしまった。


「助平め、言い訳も助平そのままなのじゃ」


「ち・・・違うんですニアさん!話を聞いてください!」


 俺はその後、何故か30分ほどニアに言い訳と謝罪を繰り返した。


 ・

 ・

 ・


「・・・」


「へ・・・へへへ・・・」


 俺は下手な三下みたいな笑い方と仕草でニアにぺこぺこと頭を下げていた。


「それじゃあ、ま、仕事ですんで、はい」


 納得していないが納得したという感じで、俺の方をじ~っと見て来るニアに背を向け俺は再び穴の方へと向き直る。・・・ニアがジト目に見えたのは俺の心の弱さなのだろうか?


「それじゃ失礼しますよっと・・・うへへ・・・」


 それはともかく、今はこの素敵・・・いや怪しい空間をよく見なくてはと、俺は再び開けた穴に目を近づけ中の様子を見る。


 俺に見られたい子はどの子だぁ~い?


「・・・(´・ω・`)」


 長々とニアに言い訳と謝罪をしていたせいだろうか、すでに覗いた先にエロフはいなかった。

 あったのは水が張られた大き目の浴槽に木の桶、小さな椅子にゴブリンだけだった。


 ん・・・?


「ゴブリン!?」


 ため息を吐きながら穴から目を離したのだが、よくよく考えるとおかしなモノが混じっていたことに気付いて再び穴を覗く。

 するとそこにはやはりゴブリンが居た。


「ごぶごぶ・・・」


 ゴブゴブ言いながら何をしているんだ?・・・っは!さては妖精たちの残滓を楽しんでいるんだな!?


 ふてぇ野郎だな!と思ってみていたのだが、どうやらゴブリンは浴室の片付けをしている様だった。


「ふむ・・・?」


 その後も少し様子を見ていたが、ゴブリンはもくもくと片づけを続け、それが終わると浴室を出ていった。


 ゴブリンが出ていってからも少し様子を見ていたが、その後は誰も浴室へは現れなかった。


「うーん・・・。場所を変えて何か所か様子を見てみよう」


 この穴からでは浴室内しか見えないので、俺は場所を移すことにした。


『索敵』を使い警備の薄そうなところを探し移動すると、またそこの壁に爪で穴を開けた。


「どれどれ・・・」


「助平め」


 冤罪ですよニアさん、私は何もやっていません。


 後ろから感じる視線にそう言い訳をし、ちょっとだけ期待をしながら中を覗き見る。


「・・・外れだ」


「いや、当たりであろうに。目的が覗きになっておるのじゃ、助平も程々にしておくのじゃ」


 おっとそうだった。俺の目的は敵情視察、エルフの外見に騙されてはいけないのだ。


 初心を思い出し、俺は真面目に壁の向こう側を見る。


 壁の向こうは美味い具合に村の中が見えた。確かに当たりの様だ。

 村の様子は・・・まぁ普通?

 家があり道にはエルフ達が歩き、店の様な物の前には数人のエルフが集まって話をしていた。

 壁の感じから砦という印象を受けたが、まぁ村だな。


「成程・・・後数か所見てみよう」


 俺はこの場を離れ、移動を始めた。


 ・

 ・

 ・


「今日はこのくらいにしておこう。あんまり穴開けすぎたら流石にばれそうだ」


「解ったのじゃ」


 一応ぐるりと一周、警備の薄そうなところを狙って中の様子を覗き見たので、初回の偵察は切り上げる事にした。帰ったら長老達にも話を聞かせて確認してみよう。


 俺達はエルフ村から離れて長老達が居た木の近くまで移動すると、そこでレモン空間へと移動した。


「おーい、帰ったぞー」


 レモン空間内へと入ると、小さな森に向かって呼びかける。するとごぶ蔵が出てきて出迎えをしてくれた。


「おかえりごぶ。ごはんできてるごぶ。それともみずあびでもするごぶ?それとも・・・」


 出迎えたごぶ蔵は漫画に出て来る新妻みたいな事を言い出した。まさかこいつ、最後は「わ た し ?」とでも言うんじゃなかろうな!?


 俺は戦々恐々としながらごぶ蔵の言葉の続きを待つ。





「ゴクリ・・・」





「それとも・・・




         ねるごぶ?」


「何故その言葉を溜めて言った!!!」


 昭和のコントみたいにずっこけかけたわ!


「ごぶ?」


 突っ込みを受けたごぶ蔵は「何の事?」とでも言わんばかりの顔だった。


「こ・・・このゴブリン野郎!!ってまぁいいわ・・・ご飯食べよう。その後長老達に話があるんだ」


 おとぼけ能天気種族のゴブリンに言ったところで仕方がないと思い、ご飯にしようと言うと、「解った、長老達にも伝えておく」と言ってごぶ蔵は森の中へと先に戻って行った。


「一狼はゴブリンと一緒におると生き生きするのじゃ」


「か・・・勘違いしないでよね!俺はゴブリンなんて好きじゃないんだから!」


 俺とごぶ蔵の掛け合いを見て何が面白かったのか、ニアがクスリと笑いながらそう言ってきたのが少し恥ずかしくて、俺はツンデレみたいな台詞を吐いてしまった。


「おお、妾は知っておる、それはトンデンとかいう奴なのじゃ」


「それは開拓兵!俺のはツンデレ!・・・ってツンデレ違うわぁぁぁあ!」



 俺は見事な捨て台詞を残して森へと走った。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白い」「続きが気になる」「すけべぇ・・・」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると ごぶ蔵が、すけべぇになります。


 最近本作を書くことに詰まって来たので、気分転換に新作始めました。そちらも読んでくれれば嬉しいです。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860702355532

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る