第86話 長老とわんちゃん
木の幹に出来た穴を通ってたどり着いた場所、そこには・・・
「「「ごぶ?」」」
数人のゴブリンが居た。
「何でこんなところにゴブリンが・・・?それに・・・」
こんなところにゴブリンが居るのも謎だったが、今の俺にはそれより気になる事があった。
此処にいるゴブリン達は皆、怪我を負っていた。
「お・・・おい!大丈夫なのか?」
怪我の度合いは様々で、見ただけでも一番ひどい者は片足がなかった。如何しようとオロオロしていると、その片足がないゴブリンが話しかけて来た。
「ここに来たという事は、貴方はエペシュ様のお知り合いですゴブ?何かありましたゴブ?」
「いや・・・俺は」
話しかけて来たゴブリンは俺を誰かの知り合いだと思ったらしいが、その人物の事を知らない俺は困ってしまう。
ここはどう答えるべきか・・・
「ふむ・・・どうやら違うようですゴブ?」
迷っていると片足のないゴブリンは俺が全くの他人だという事を見抜いてしまった。
このゴブリン、ゴブリンなのに賢い!?
俺が片足ゴブリンの賢さに慄いていると、片足ゴブリン以外のゴブリンも俺を見て慄いていた。
一体なんだ?と思っていると、片足ゴブリンが他のゴブリンを諫めてくれ、それにより場は落ち着きを取り戻した。
「済まぬゴブ。皆恐れているのですゴブ」
「んん?恐れる・・・?それはいった・・・」
(一狼よ、エルフが此処に近づいておるのじゃ)
「・・・!すまん!エルフが近づいてきたらしい!皆ここに入ってくれ!」
片足ゴブリンに事情を聞こうと思った所で、ニアからそんな念話が飛んできたので不味いと思い、ゴブリン達をレモン空間へと無理矢理詰め込み急いで外に出た。
そして木の幹の仕掛けを動かして元に戻すと、隠れて息を潜めた。
少しするとニアが教えてくれた通りエルフが3人現れた。
しかし俺達を嗅ぎつけて現れた訳ではなく偶々通りがかっただけみたいで、3人のエルフは雑談をしながら通り過ぎていった。
「ふぅ・・・教えてくれてありがとうなニア。助かったよ」
「うむ」
ニアが教えてくれなかったら気づかなかったかもしれない、まだまだ精進が必要だな。
俺は反省をしつつ、目立たない場所に『レモンの入れもん』を出してニアにレモン空間へ入る事を伝える。
するとニアも入ると言うので俺達はレモン空間へと入る。
視界が白と少しの森に切り替わると、森の中からゴブリン達が出て来た。その中には片足ゴブリンに肩を貸しているごぶ蔵も見える。
「すまないな皆、いきなりこんな所へ入れてしま・・・何してるんだ?」
俺が無理矢理にレモン空間へと突っ込んでしまった事を謝っていると、いきなりごぶ蔵以外のゴブリン達が俺の方へ向かって拝んできた。これは一度見たことのある光景だ。
「ごぶ蔵、皆は一体何をしているんだ?」
「ちょうろうたちはいちろうのことをかみさまだとおもっているごぶ。ちがうっていったけどきかなかったごぶ。やれやれごぶ」
ごぶ蔵に聞いて見るとやっぱりだったが、ヤレヤレといってるお前もやっていた事だからなごぶ蔵?
俺は片足ゴブリン達にごぶ蔵にした様に説明するが、片足ゴブリンはごぶ蔵より賢かった分少し説得に手間取ってしまった。
賢さにもこんな弊害があるんだなと、不思議な驚きを得たわ。
片足ゴブリン達が拝むのを止めて落ち着いてくれたところで、俺は片足ゴブリン達に話を聞くことにした。
「まず・・・片足のゴブリンの人、ごぶ蔵に長老って言われたけど知り合い?」
一旦流していたが、ごぶ蔵は片足ゴブリンの事をそう呼んでいたのだ。知り合いだとすれば話が大分進むことになるのだが・・・。
「ごぶ蔵とはこの者のことですゴブ?それならそうですゴブ。儂はこの者・・・ごぶ蔵と一緒に最近移動して来た者ですゴブ。他の者からは長老と呼ばれておりますゴブ」
ビンゴ!・・・しかし、長老があそこにいたという事は。
「そうか、よろしく長老。そして長老、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「何でもお聞きくださいゴブ」
「まさかと思うが、長老の村に居たゴブリン達は・・・あのエルフの村に捕まっているのか?」
ニアが教えてくれた心当たりの方向と、その方向にあったエルフの村、そして見つけた長老、これらから俺はこの答えを導き出したのだが、結果は・・・
「そうですゴブ。襲撃されて生き残った者達は、ごぶ蔵を除き全員あのエルフの村へと連れていかれましたゴブ」
あまり良くない答えが当たってしまった。
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作者より:読んでいただきありがとうございます。短くてすいません!
「面白い」「続きが気になる」「長老賢いゴブ!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が、賢くなります。
最近本作を書くことに詰まって来たので、気分転換に新作始めました。そちらも読んでくれれば嬉しいです。↓『悪役令嬢は嫌なので、魔王になろうと思います。』
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