第85話 5ごぶ蔵とわんちゃん
何時の間にか増えていた新たな眷族、その事実に驚いた翌日の朝の事だ。
「あさごはんごぶ、たべるごぶ」
「ありがとうごぶ蔵、いただきます」
「うむ、いただくのじゃ」
これからは自分がご飯を用意するとごぶ蔵が言ってくれたので、俺達はそれに甘える事にした。
それで早速朝ご飯をごぶ蔵が用意してくれた訳だが・・・
「んまぁぁぁぁい!」
「うむ、なかなかいい味をしておるのじゃ」
「ごぶごぶ・・・」
美味い!そして美味い!もういっちょ美味い!
ごぶ蔵の作るご飯は何故かすごく美味しく、俺は美味い美味いと言いながら用意されたご飯を食べる。
俺があまりにも美味いというモノだからごぶ蔵は少し照れていたのだが、突然シュンとした。
「んん?どうしたんだごぶ蔵?」
「じつは・・・」
ごぶ蔵は凄く深刻そうな顔をして、中々言葉の続きを話してくれなかった。それほどの事態が起こったのだろうか?
「ゴクリ・・・」
「じつは・・・・・・しょくざいののこりがすくないごぶ」
「・・・」
「じつは・・・・・・たべられるものののこりがすくないごぶ」
「いや、聞こえてはいるから」
深刻そうな顔でものすごく間を溜めるモノだから何かと思えばそんな事!?まぁ重要といえば重要だが!
「まぁ解った。んじゃあ今日はごぶ蔵の仲間を探しながら、ついでに食材も探すわ。それでいいだろ?」
「たのむごぶ!できればこういうくさもさがしてほしいごぶ」
ごぶ蔵は料理に使うのだろう、色々な草や木の実、キノコ等を取って来てくれと頼んできたのだが・・・こいつ、仲間の事忘れてね?
疑わしいごぶ蔵の事をジロジロと見ていると、「なに?」とばかりに見返してきたので、まぁゴブリンだしな・・・と酷い納得の仕方だが納得して気にしないことにした。
・
・
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「まぁこんなものかな・・・」
集めてレモン空間へと送った食材等を思い出し、言われた物は突っ込んだかなと確認をしていると、前方に獣の気配を感じた。
「あれを取って取りあえず終わりとするか」
捜索方向へ進む序での食材探しだが、昼になった現在終わりが見えていた。
ごぶ蔵が指定して来た物は全て集まり、今は指定してない食材を適当に集めているところだ。
「これからは進みながらちょくちょく採取するべきかなぁ」
「食べれそうな獲物を見つけた時はそうしても良いかもしれんのじゃ。修行をするにしても魔力制御をするくらいじゃから、余裕はあるはずなのじゃ」
師匠とも呼べるニアもそう言っているので、これからはそうしようかなと言う所で獲物が目視出来た。
「鹿か、そこそこのサイズだしいいな!」
「美味そうなのじゃ」
見えた獲物は大き目の鹿型魔物、よく知らない魔物だが今の俺なら・・・。
「っと、この通りっと」
鹿へと高速で詰め寄り、すれ違いざまに首を爪で一撫でするとあっさり撃破完了。
俺も強くなったものだ!
「大きさ並みの力はあるのじゃが、まぁ精々5ゴブリンぐらいの強さなのじゃ。今の一狼にとっては餌なのじゃ」
5ごぶ蔵か・・・、言っちゃ悪いが弱そうだな。5ごぶ助ならヤバそうだがな!
ニアが教えてくれた情報から馬鹿な事を考えていると、再び何かの気配を感じたのだが・・・これは。
俺はニアに目配せをすると、流石のニアは解っていたようで頷いて直ぐに見えなくなってしまった。
「流石・・・って俺も急いでっと・・・」
言ってる場合じゃないと思い出し、『隠蔽』を発動させてから魔力にも制御をかけ、木の陰に隠れる。
すると直ぐに気配の主が現れた。
「あら?獲物が居そうだったけど、気のせいだった?」
「なら帰りましょうよ?これだけあれば十分だわ」
「そう?なら帰りましょうか」
声の主・・・エルフ達は会話をしながら引き返していった。
「ふぅ・・・今回もバレなかったな」
「うむ、戦闘要員でもなさそうだったし、あれくらいなら問題なさそうなのじゃ」
奴らはエルフの中でも最弱・・・という訳でもなさそうだが、まぁ一般エルフなら余裕って事だな。
うまくエルフをやり過ごし、食材も集まったところで、ごぶ蔵の仲間捜索開始と行きますか!・・・と言いたいところだが。
「エルフが進んで行った方向がちょっと問題だな・・・」
そうなのだ。エルフが引き返していった方向と俺達が向かう方向、これが重なってしまっていた。
進んで行った先でエルフと出会わなければいいのだが・・・。
「まぁ行くしかないか」
「うむ」
もしこの先にごぶ蔵の仲間がいるのならば、下手をするとエルフ達と出会ってしまうかもしれない。そうなるとごぶ蔵の仲間はピンチに陥る可能性が大だ。
となると、俺達もエルフの後を追って同じ方向に向かうしかないのだ。
俺達は気持ち急ぎながら、エルフの去って言った方向へと向かう事にした。
少しすると、『索敵』の範囲に恐らく先程のエルフ達と思わしき気配をとらえる。
しかし止まるわけにも行かないので、『索敵』に平行して『隠密』と魔力の制御を行いエルフ達と着かず離れずの距離を保つ。
もしもごぶ蔵の仲間達の反応がとらえられた時の為に、微妙な距離を保ったまま進むこと3時間程経ったときの事だ。
「む・・・?エルフ達が止まった。しかもこの反応は?」
俺達が後をつけている事にも気づかないエルフ達はある場所で止まったのだが、その場所には複数の気配が察知出来た。
しかしその気配はどうも全てエルフらしく・・・。
「まさか・・・エルフの村?」
俺は頭の中で地図を描くと、現在地を思い浮かべる。確かに東方向には来ていたが、まだここは魔の森の中な筈だった。
聞いた話によるとエルフ達が住んでいるのは魔の森の外、普通の森になっている場所だと聞いたのだが?
俺はチラリとその話をしたニアの顔を見るが、その顔からは何もわからなかったし、何も話す気はないといったものを感じた。
如何するべきかな。・・・ってまぁ避けていく訳なんだが。
「どれくらいの規模か解らないから大回りしていくか」
エルフの村の大きさが解らないから、安全マージンを十分にとって回り込もうと村の横に逸れていく。
エルフ村の近くだからいつもより念入りに『隠蔽』と魔力の制御を行ってだ。
『索敵』にも気を使いソロソロと進んでいると、村の方から此方へと向かってくる気配を感じた。
(ばれた!?いや、まだわからない・・・とにかく隠れて様子見だ!)
周りを見ると隠れるのにちょうど良さそうな場所を見つけたので、そこへと滑り込み息を潜める。
少しすると村の方から近づいてきた気配の主が姿を見せた。
「・・・」
現れたのはフードを被った小柄なエルフだった。
と言っても、雰囲気から子供とは違うといった物が感じられたので、ただ単に小柄なだけなのだろう。
彼女・・・彼かもしれないが、彼女はキョロキョロと周りを気にしながら一際大きな木に手をあてたかと思うと、そこからウロウロと歩き回った。
暫くウロウロしていたのだが、何の変哲もない木の前に着いたかと思うとしゃがみ込み、幹の下方に手を当てた。すると・・・
(・・・!?)
その後、小柄なエルフは用事が済むと、また周りを気にしながら村の方へと帰っていった。
完全にその気配が消えたのを感じ、俺は隠れていた場所から身を現した。
「・・・」
俺は小柄なエルフが最後に居た木の前へと移動すると、幹の下方を調べ始めた。
「ん・・・、何かあるっぽいな」
ある一部分から魔力を感じる事に気付き、そこに触れてみるのだが・・・何も起こらなかった。
「これなら?」
なので、とりあえず魔力を流してみると・・・ビンゴ!
魔力を流した場所を起点に、木の幹が変形して下方へと続く穴が現れた。
しかしその穴は割と小さく、俺でギリギリ、ニアだとアウトといった大きさだった。
「入ってみるか・・・ニアは入れなさそうだから待っててくれ」
俺はニアの返事を聞く前に穴の中へと体を突っ込み、中へと入って行く。
「ぐぬ・・・ぐぬぬ・・・」
ギリギリの大きさを何とか進むと、段々道が広がって来て楽になって来た。そのまま道を進んで行くと、やがて広い場所へとたどり着いた。
そこで見たのは・・・
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作者より:読んでいただきありがとうございます。
「面白い」「続きが気になる」「一狼はごぶ蔵何人分?」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が、5人になります。
↓完結しました、よろしかったらどうでしょう。
『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』
※ホラーの皮を被った現代ファンタジーです。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859115427347
お知らせ:微修正 現れたのは小柄なエルフだった。
↓
現れたのはフードを被った小柄なエルフだった。
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