第84話 あたらしい眷族とわんちゃん
「よし、それじゃあ出発するか」
活動方針を決めた俺達は早速ごぶ蔵の仲間を探しに行くことにした。
とりあえず決めた猶予は20日、魔境地帯への移動日数に少しだけ余地を残した結果この日数となった。
「まぁ全力で走ればもう少し短縮も出来るだろうしな。ごぶ蔵達を連れて行くのもレモン空間改に入ってもらえばいいし」
カッコよくレモン空間改とか言っているが、実はただ単に白一色のレモン空間に木や土等の白以外の物体を配置しただけだ。
しかし効果は抜群で、今配置してある物だけでも大分心は休まる様になった。・・・もっと早く気づいてやっておけばよかったと後悔したのは秘密だ。
因みにだが、ごぶ蔵は現在レモン空間の中で料理をしてもらっている。移動するだけならごぶ蔵を背中に乗せてもいいのだが、エルフに出くわした時に隠れる必要があるのでレモン空間の中にいてもらう事になった。
なのでこの場には俺ともう一人だ。おれはチラリともう一人・・・ニアを見る。
「んで・・・あっちに行けばいいんだよな?」
「うむ、そうなのじゃ」
「本当にこれ以上の情報は教えてくれない・・・?」
「駄目なのじゃ、方向を教えただけでも良しとするがよいのじゃ。後は・・・自分で確かめ行動するのじゃ」
「お・・・おぉ、解った」
突然圧のある声色で言われたので少しビビったが、ニアはあの作戦会議の時から偶にこんな感じになる。
・
・
・
「それじゃあかける猶予は20日がマックスとして、捜索の方針だが・・・ごぶ蔵は何か心当たりはあるか?」
「うーん・・・ないごぶ。でもまえにいたところはもどらないとおもうごぶ。だからちかくにいるかもごぶ?」
「そうか・・・むぅ・・・」
作戦会議を開き、先ず捜索にかける日数を決めた俺達は次に捜索の方針を決めていたのだが、これが中々に難しかった。
ごぶ蔵達もこの森へ来たのは最近なので土地勘もなく、逃げるにしても何処へ行くか予測が全くつかないとの事だった。
作戦会議は座礁に乗り上げ、取りあえず適当に辺りを捜索するかと言いかけた瞬間、それまであまり口を開かなかったニアが口を開いた。
「一狼よ・・・」
「な・・・なんだ!?」
「・・・いや」
口を開いたニアからは少しだけ圧を感じた為俺は少し身構えてしまうが、直ぐにそれは治まり、ニアはいつも通りの感じで話を続けた。
「一つだけ心当たりがあるのじゃ」
「え!?本当か!?」
思いがけないニアの言葉に俺もごぶ蔵も驚くのだが、続くニアの言葉に疑問が生じた。
「うむ、それの方向だけ教えてやるのじゃ」
「ごぶ?」
「うん?方向だけ?その心当たりとやらは教えてくれないのか?」
「うむ、方向だけなのじゃ」
心当たりがあると言うのに何故方向だけ?
俺は少し食い下がり教えてくれと頼むが、結果はノー。方向を教えるだけでもサービスだと言われた。
「解った・・・。まぁ方向だけでも教えてもらえることに感謝だな」
「かんしゃごぶ!」
俺とごぶ蔵は捜索方針が決まった事を喜びニアに感謝の言葉を送るが、ニアは真顔でそれを受け取るとぽつりと呟いた。
「うむ・・・そのほかは自分で行動し、確かめるのじゃ」
・
・
・
と、この様に、作戦会議の時から偶に様子が変わるのだ。
「まぁ嫌な感じではないから大丈夫か」
「うん?何がなのじゃ?」
独り言をぽつりと漏らしてしまったのだが、流石ニアといったところかバッチリ聞こえていた。
何もないデス!と必死にごまかし事なきを得たが・・・まじで下手な事を口に出すと危険すぎる・・・。ごぶ蔵にも改めて教育せねば!
その後俺はごぶ蔵の仲間を捜索しながら、頭の中で対ニア用マニュアルを製作していた。
時々休憩を入れながら走る事半日と少し、明るかった森も真っ暗になって来た。
「今日はこの辺にしておくか・・・」
「うむ」
本日は何も成果は得られなかったが、今日はこの辺りにして休むことにした。
正直今の俺なら、数日寝ずに朝から晩までフルに使う事も可能なのだが、人間だった時の癖か夜は休むと言った習慣になっていた。
「動けるからと言って動き続ける必要もないのじゃ。物事は自分の歩調で進める事が大事なのじゃ」
やっぱりもっと探すべきか・・・?と思っていたところ、心でも読んでいるかのようにそんな事を言われた。
まさかニアはエスパータイプ?
「顔に出ているだけなのじゃ。そして今も何か変な事を考えている顔をしておるのじゃ、・・・助平な童なのじゃ」
「そんな事は考えてないっ!」
心は読んでおらず、顔色を読んでいたみたいだが・・・ガバガバやんけ!
「まぁ・・・忠告はありがとうな」
「うむ」
まぁ、言われたことはもっともで有り難かった。伊達に俺のママじゃないな・・・ってママじゃねぇわ!他人だわ!
あぶねえ・・・大人みを感じて同時にママみも感じていたぜ・・・。ニアは本当に恐ろしい子っ!
「さ・・・さぁ休もうか!『レモンの入れもん』!」
「うん?何か甘えたそうな顔をしておるのじゃ」
何か恐ろしい言葉が聞こえたので、俺は急いでレモン空間へと入り込むのだが、目の前に小さな森と言った感じの場所があって驚いてしまった。
「何を驚いておるのじゃ?」
「いや、色々配置のを忘れていて・・・。おーいごぶ蔵~」
直ぐ後から入って来たニアに突っ込まれたが、とりあえず帰って来た事を知らせるためにごぶ蔵の名前を呼んで小さな森へと入る。
すると入った直ぐにある開けた場所にごぶ蔵はいた。
「おかえりごぶ。ごはんできてるごぶ」
一日レモン空間の中で住処づくりをしていたごぶ蔵は、どうやら料理も作ってくれていたらしい。
「おお、ありがとな・・・って材料どうしたん?」
「ほしいってかんがえてたらでてきたごぶ?」
「え・・・?」
一体どういう事だ?
俺が混乱していると、ニアが恐らくだが・・・と推察を話してきた。
「眷族であるごぶ蔵は一部このスキルに干渉できたのじゃろう」
「え?眷族?ごぶ蔵が?」
何時の間に!?っていうか俺『眷族化』のスキル使った覚えないんだが!?
「うむ、大方拝まれた時にでも眷族になったのじゃろう。偶にそういう事はあるのじゃ」
「えぇ!?」
俺はせっせとご飯を食べる準備をしているごぶ蔵を見た。
「ごぶ?じゅんびできたごぶ、たべるごぶ」
ごぶ助へ・・・どうやら働き者の眷族が増えたみたいです まる
------------------------------------
作者より:読んでいただきありがとうございます。再び日数が空いた上に短くてすいません。
「面白い」「続きが気になる」「眷族様は料理上手☆」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。
☆や♡をもらえると ごぶ蔵が、奥様になります。
↓こちらも絶賛連載中です、よろしかったらどうでしょう。
『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859115427347
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます