第83話 料理ガチ勢とわんちゃん

 翌朝起きると、ぬいぐるみの下にごぶ蔵がうつ伏せになって寝ていた。


「どうやったらそんな事に・・・」


 俺は軽くごぶ蔵の寝相に疑問を覚えたが、ゴブリンに対して多少の疑問はあまり意味がないと思い、考える事を止めた。


「ふぅあぁ~・・・。っと、おはようニア」


「おはようなのじゃ」


 欠伸を一発かましていると、ニアが起きていることに気付き挨拶をした。俺が意識がある時は何時も起きているが、ちゃんと寝ているんだろうかとこちらも疑問に思った。

 しかしこちらも「ニアだしな・・・」と考える事を止めて、朝食の準備をすることにした。


「今日は俺がご飯準備するわ」


「解ったのじゃ」


 ここの所ニアが毎回ご飯の準備をしてくれていたので、偶には俺がしなきゃと思い申し出た。

 了解を得たのでアイテムリストを呼び出し、材料を用意する。


「まぁ肉とキノコ、それに果物くらいかな・・・」


 余り代わり映えはしないが、俺達の様な四足の獣だとこれくらいしか用意できないよなぁ・・・とレパートリーの低さを嘆いていると、いつの間に起きたのかごぶ蔵が話しかけて来た。


「ごはんつくるごぶ?」


「ああ、肉とキノコ、それに果物だけどいいか?」


 まぁこれくらいしかないんだけどな?と朝食のメニューを言うと、ごぶ蔵は何故か手を上げた。


「ごぶ!」


「ん?」


「ごぶ!」


「・・・」


 元気に手を上げるモノの訳が解らない。一体何だ?と待っていると、手を挙げた理由を話し始めた。


「ごはんのよういてつだうごぶ!ごぶはごはんのよういとくいごぶ!」


「あー・・・なるほど。じゃあ頼もうかな」


 昨日もご飯の用意をしていたら襲われたと言っていたので、ごぶ蔵は村の料理番か何かだったらしい。

 ゴブリンは気用に両手を使うので、渡りの船だなとばかりに手伝ってもらう事にした。


「じゃあまず・・・」


「ごぶはくだものでおにくにつけるたれをつくるごぶ」


「なん・・・だと・・・!?」


 このゴブリン・・・!


「あ、でもどうぐとかがないごぶ」


「何が必要なんだ!?」


 俺はごぶ蔵が指定する道具や材料を出していく。

 するとごぶ蔵は鼻歌交じりに作業をこなし、あっという間に肉用ソースを作ってしまった。


「おにくときのこをやくのもまかせるごぶ」


「お・・・おぉ・・・」


 焼きも任せろと言うので、指定して来た通りに石を熱してやるとそこで肉を焼き始めた。

 そこで更に数種類の草等を要求されたので渡す。


 そして10分ほどたった時にごぶ蔵の声が上がった。


「できたごぶ!」


「「ゴクリ・・・」」


 先程からいい匂いが漂っていたので、俺とニアは完成と聞いた瞬間反射的に唾を飲みこんでいた。


「よし・・・それじゃあ、いただきます!」


「いただくのじゃ」


「いただくごぶ」


 それぞれに料理が配られたところで食事開始だ。


 俺は先ず肉にかぶりつく。


「・・・!んまぁぁぁぁぁああああい!」


 食べた瞬間、思わず叫んでしまった。


「なんだこの肉の美味さは・・・中からジュワっと肉汁が出るのもそうだが、下味がちゃんとついていて何時もの肉と全然感じが違う!更にタレ!このタレが肉の美味さをいっそう引き立てる!」


 俺のただの焼いただけの肉とは雲泥の差だ!やはりこのゴブリン、料理ガチ勢!


 俺は余りに美味い料理をガツガツと食べ進め、気が付くと目の前から料理が消えていた。


「もうない・・・。しかしキノコも美味かったな・・・、まるで肉の様なジューシーさに香りを引き立てるスパイス・・・」


 肉もよかったがキノコもよかった。ただ焼くだけでなく、独自に草をブレンドしてスパイスとして使ってあったので、下手をしたらキノコがメインを張るくらいの美味さだった。


「うむ、美味かったのじゃ。このゴブリン中々の拾い物だったのじゃ」


「ごぶ?」


 ニアが確認した所、ごぶ蔵は料理のスキルを持っているらしい。本人が料理好きなのもあるだろうが、スキルによって一層ブーストが掛かったわけか。


「やるなごぶ蔵!」


 ごぶ蔵を褒めてみるが、本人はよく解っていないみたいで「なにごぶ?」と言わんばかりにポカーンとしていた。


「これはあれだな・・・ごぶ蔵の仲間を発見出来たら一緒に付いて来てもらって、俺達の仲間にするのもありだな・・・」


 俺達は30人にも満たない少人数のグループなので、ごぶ蔵の料理の腕を抜きにしても仲間になってもらうのはありかもしれない。


 俺が移動に掛かる残りの日数等、ごぶ蔵の仲間捜索に当てる時間を考えていると、ニアが何かを考えている様子だった。


「ふむ・・・」


「うん?どうしたんだ?」


「うむ、気が変わったのじゃ。一切手出しも口出しもせぬつもりだったのじゃが、この飯の美味さに免じて少しだけ手伝ってやるのじゃ」


「!?」


 ニアは普段自ら進んで何かをするという事をあまりしないみたいだが、気分によってどうとでもなる気分屋でもある。

 そのニアを動かすほどの料理だというのかごぶ蔵よ・・・!恐ろしい子・・・!


 ニアの協力が得られそうなので、俺はごぶ蔵の仲間の捜索を手伝う事にした。

 元から一切手伝わないという選択は取らなかっただろうが、ニアに捜索に掛ける日数等を相談して本気の構えを取ることにした。


「ということでごぶ蔵、お前の仲間を探すのを手伝う事にした!よろしくな!」


「ほんとうごぶ!?ありがとごぶ!」


 ごぶ蔵にその事を伝えると、ごぶ蔵はとても喜んでいた。


 まぁこれも何かの縁ってやつだよな・・・ごぶ助。


「あぁ、それじゃあちょいと会議でもしようか!」


「わかったのじゃ」


「ごぶごぶ!」



 俺達は消えたごぶ蔵の仲間を捜索する為の会議を開き、捜索方針や掛ける日数等を話し合った。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。日数が空いた上に短くてすいません。

「面白い」「続きが気になる」「うーまーいーぞー!」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

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 ↓こちらも絶賛連載中です、よろしかったらどうでしょう。

 『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。

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