第81話 拝まれるわんちゃん

 俺は暖かくてふわふわした空間で目を覚ました。


「ぬぅ・・・うん・・・もふもふだぁ・・・」


 とても気持ちが良かったので感触を確かめる様に顔を擦り付けると、もふもふした物が俺を包み込んできた。


「もふ・・・もふ・・・」


「うむ、妾の毛並みは素晴らしいであろう?堪能するとよいのじゃ」


「うん・・・うん?」


 声をかけられたからか、少し頭が回りだし昨晩の事が思い出された。


「・・・っは!?お・・・おはようニア・・・」


「なんじゃ、もうよいのかや?おはようなのじゃ一狼」


 思い出したからには流石にこのままではいられないと思い、俺はもふもふしたニアから離れて朝の挨拶をした。


 昨晩も盛大にオギャってしまったのだが・・・俺はこの先まともに生きていけるのだろうか・・・。


 心の中で一抹の不安を案じていると、最近恒例のカラフル飯が目の前にスッと差し出された。


「ありがとう、いただきます。・・・って言うかこれまだ続けるのか?」


 慣れて来たのか何の躊躇もなく食べ始めてしまったのだが、このカラフル飯は何時まで続くのだろうかと疑問に思い聞いて見た。


「うん?残念ながら材料が切れてしまったので、これで最後なのじゃ。継続すればするほど良いとはおもうのじゃが、材料をそろえようと思うと少し苦労するので、まぁよしとするのじゃ」


「そうか・・・」


 ・・・っは!?何で少し残念がっているんだ俺!・・・すでに調教されていたという事か。

 それはともかく、材料を揃えるのにニアが少し苦労するって・・・実はけっこう凄いモノが色々入っているんじゃ・・・。


 食べている最中のカラフル飯を恐々としていると、すぐ傍でうめき声が聞こえたのである事を思い出し急いでご飯を食べ終えた。


「『回復魔法』をかけてもらって大丈夫だと思っていたらすっかり忘れてた・・・、おい大丈夫か?」


 俺が声をかけるとそいつはうっすらと目を開けたのだが、直ぐに閉じて再び意識を失ってしまった。


「まいったな・・・」


 俺としては起きて準備が出来次第出発したかったのだが、流石にこいつを助けた地点から大きく引き離すのは躊躇われた。

 助けはしたけど君が倒れていた場所からは歩いて1週間の距離なんだ、とかは流石にな・・・


 俺がどうしようかなぁと頭を捻っていると、ニアが何をしておると聞いてきたので俺の考えを話すのだが、ニアとしては命は助けのだから放り出してもよいのでは?との事。

 だが流石にそれはしたくなかったので拒否すると、なら今日の夜には目覚めそうだから待つとよい、と提案されたので俺はそれを採用する事にした。


「それでは待っている間にまた修行を付けてやるとするのじゃ」


「おぉ!ありがとうニア!」


 暇な時間は一人で何か訓練でもするかと思っていたのだが、修行を付けてやると言われたので喜んで受けさせてもらう事にした。


 夜まで実戦形式での修行を付けてもらい、それが終わって夕ご飯を食べている時の事だ。


 ・

 ・

 ・


「まだまだなのじゃ、じゃがセンスはあると思うのじゃ」


「あざっす・・・」


 超絶フルボッコにされたがそんな評価を頂いた俺は出されたご飯をもそもそと食べていた。


「けどもうちょっと優しくしてほしかったな・・・全身ガクガクなんだが。・・・明日ちゃんと動けるだろうか」


「普通にやったら一狼がはじけ飛んでしまうから十分優しくしたのじゃ」


「ひぇ・・・」


 ちょっと股の間がヒュンっとしたのを感じたのと同時に、視線も感じたのでそちらを見るとそいつは意識を取り戻していた。


「お、起きたのか。大丈夫か?」


「・・・?」


 そいつは起きたものの現状が全く理解できていないのか、誰が見ても困惑といった感じになっていた。

 起きたらいきなり一面真っ白なおかしい空間だったらそうなるか、と今更ながら理解して俺はそいつに説明をする事にした。


「すまんすまん、そりゃぁ困惑するよな。現状を説明するから聞いてくれ・・・っとその前に俺は一狼と言う。そしてあっちがニア」


「うむ」


「因みにだが、ニアは優しく穏やかでめったに怒らない美しすぎる聖母様だが、怒らすと怖いので失礼のないように」


「うむっ!」


 ニアに粗相した時が怖かったので取りあえずそんな感じで説明すると、ニアは若干ドヤ顔になり、もっといってもいいのじゃぞ?的な視線を向けて来たが、気づかない振りをして話を先に進めよう。


「んで、現状を説明するんだが・・・」


 と言った瞬間そいつは何故か俺達を拝み始めた。


 いきなりなんだ!?と思ったのだが、拝んでいるそいつ曰く・・・俺達を神か魔神だと思ったらしい。


 違うと否定したのだが、そいつは拝むことを止めなかった。


「・・・因みに、何で俺達を神か魔神だと思うんだ?」


 いくら言っても聞かなかったので理由を聞くと、主に俺達の容姿を見てそう思ったらしい。


 片や真っ黒い毛に目だけが赤い獣に、もう片方は謎の圧を感じる神々しい角を生やした美しい獣。


 これは・・・森に棲む弱い魔物なら確かにそう思っても不思議ではないか、と自分で納得したのだが、いやいや違う違うと慌てて思い直し拝んでいるそいつにも説明した。


 説明を続けているとようやく納得してくれたのか、拝むのを止めてくれた。


「ふぅ・・・、それじゃあ簡単に・・・というか本当に簡単なんだが現状を説明するな?」


 俺は目の前で座っているそいつに現状を説明した。

 と言っても、倒れていてエルフに追われているみたいだったから助けた、ココは俺が創った安全な場所と本当に簡単な説明だが。尚レモン空間は詳しく説明するのが面倒なので適当に説明しておいた。


 そいつは説明を聞いても「なんのこっちゃ?」という感じだったが、もっと簡単に「助けた」「ここは安全な場所」と言うと解ってくれた。


「それでだ、こっちからも少し聞きたいんだがいいか?」


 現状の説明が終わったところでこちらからも聞きたいことがあったので尋ねてみたのだが、そいつは何でも聞いてくれと言わんばかりに頷いた。


「んじゃあ・・・これからどうする?それと何で追われていたんだ?」



 俺はエルフに追われていた魔物・・・ゴブリンにそう聞いた。



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 作者より:読んでいただきありがとうございます。短めですいません。

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