第73話 ニア先生と生徒なわんちゃん

 ワクワクスキル講座、はっじまっるよ~。


 生徒はこの子、今までスキルを自己流で覚えて来た一狼君。


 そして先生はこの人、世界最強格とも肩を並べられるかもしれない存在のニア先生だっ!


 さぁ~今日はどんなスキルを覚えられるかなっ?


 ニア先生、よろしくお願いしま~す。




「何を変な顔をしておるのじゃ?」


「(あ、何でもないです)」


 俺がおかしな妄想をしていると、ニアが指摘して来た。・・・そんな変な顔をしていただろうか?


 それはともかく、俺がニアに頼み込んだ修行が今始まろうとしていた。


「話してもよいかや?」


「(ああ、頼むよ)」


「うむ。ではまず、スキルについて少し話すのじゃ」


 俺は姿勢を正し、話を聞き逃さない様に耳に神経を集中させた。


「一部はそうでもないのじゃが、スキルは魔力を呼び水に発動させる事がほとんどなのじゃ。それは解るのじゃ?」


「(ああ、何となくだが)」


 魔法系以外も基本魔力を使って発動させているとは思っていた。最たる例は『黒風』だな。


「うむ。なのでスキル取得を早く覚えようと思うと、魔力の運用が重要になってくるのじゃ。一狼は『魔力操作』を持っておるが、それではまだ甘いのじゃ」


「(え?そうなのか?)」


 魔力を操作できるのだから十分なのではないかと俺は思ったのだが、まだ甘いらしい。


「マ、なのじゃ!より魔力の運用を極めると『魔力掌握』と言うスキルに変わるのじゃ。まぁそこまでイケとは言わんのじゃが、魔力の運用にはまだ先があり、一狼はまだ十全に運用が出来ておらんという事なのじゃ」


「(なるほど・・・、つまりそれを鍛えるのが第一という事なのか?)」


「まあそうなのじゃ。そしてそれは一狼の希望により移動しながら行うのじゃ」


 ニアは俺が早く魔境地帯へ行きたいというのも加味して鍛えてくれる様だ。それはとてもありがたい事だったので、ニアに感謝しつつ頑張って修行しようと俺は一層気合を入れた。


「(で、何をしたらいいんだ?)」


「簡単な事なのじゃ。魔力を外に漏らさぬように内に留め、尚且つ体の内で一切動かぬ様に止めるのじゃ」


「(それだけでいいのか・・・?)」


 俺は以外にも簡単そうな修行で拍子抜けした。これで本当に大丈夫なのか?そう思っているとニアがニヤリと笑った。


「うむ、いいのじゃ。それでは早速始めるのじゃ。走れ走れ!走るのじゃ!」


「(お、おお・・・。それじゃあ・・・)」


 ニアに促され俺は走り出す。勿論ニアから言われた事を行いながらだ。


『魔力操作』を使い、体の中に魔力を留めて動かない様にした。


 ・・・した筈なのだが。


「一狼、漏れておるし動いておるのじゃ」


 以外にも、走ったままそれを行うのは難しかった。

 走るとどうしても魔力が足の方に流れたり、体の各所から漏れたりするのだ。


「(む・・・ぬぐっ・・・わかって・・・る・・・よ!)」


 そして魔力の方に気を取られると走りの方が疎かになり、明らかに走るスピードが落ちた。


「ほれほれ、スピードが段々落ちとるのじゃ。はようはよう」


 ニアはそんな俺を後ろから煽ってくる。しかし再びスピードを上げようモノなら、また魔力は動き漏れ出した。


「また魔力が動いておるし漏れておるのじゃ」


「(わかっ・・・てる!・・・よ!)」


 終始そんな調子で進み、結局今日は森の南側と東側の境までしか進めなかった。


 ・

 ・

 ・


「あんまり進めなかったのじゃ。進んだ距離はおおよそ予定の半分、いや三分の一くらいなのじゃ」


 俺はレモン空間の中で、疲れて地面に横たわったままニアのそんな言葉を聞いていた。


「まあ明日からも頑張るのじゃ。さて、飯を食うて今日は休むのじゃ。」


 ニアはそう言って話を進めようとしたが、俺はそれに一旦待ったをかける。


「(すまんニア・・・自分から言っといてなんだが、修行はやっぱりやめさせてくれないか・・・?)」


 俺はせっかくニアが承諾してくれたのを申し訳なく思ったが、そう切り出した。ニアはやはり不快に思ったみたいで、少し眉間に皺をよせながら問いただしてきた。


「なに・・・?童・・・まさか今日一日やってみて辛かったから辞めたくなった等と言うまいな!」


「(流石にそんな事は言わない!ただ・・・、予想以上に時間が掛かりそうだからさ・・・)」


 俺の見込みが甘かったのか、このままだと予想の倍以上は時間を取られそうだった。流石にそこまで時間をかけているとごぶ助達の事が気になりすぎて、修行等している暇などないと思ってしまったのだ。


 その事をニアに言って再び謝ると、ニアは怒りを収めてくれた。


「あんな事を言うて妾を乗せ師事させておいて、なのに府抜けたことを言いよると思ったのじゃがそう言う事なら解らんでもないのじゃ」


「(ああ、本当にすまないと思っている・・・。けど鍛えてもらってそのせいで間に合わなかったとかになったら意味がないしさ・・・。本当にすまな)」


「ならば一狼の仲間が無事だと解ればよいのじゃろう?」


 俺の言葉を遮り、ニアはそんな事を言い出した。


「(は・・・?それは一体どういう事だ?)」


 俺はニアの言う事の意味が全く分からず、ニアに聞いて見るが・・・。


「妾も確実に大丈夫だとは言えんので、取りあえず明日を待つのじゃ」


 とだけ言って、それ以上詳しい事は話してくれなかった。


 不満には思ったが、恐らくこれ以上言っても無駄かと思ったので大人しく引き下がり、ご飯の用意をし始める。因みにだが、対ニアの必殺技は多用すると危なそうだし効果が落ちそうなので使うのをやめておいた。


 俺はもやもやを抱えたまま就寝する事になったのでなかなか眠れず、恐らく眠れたのは二時間くらいだった。


 ・

 ・

 ・


 翌朝、俺はニアに体を揺さぶられて目を覚ました。


「ようやく起きたか。声をかけるだけでは起きなかったのじゃが、そんなに疲れてたのかや?」


「(どちらかと言えば体より心の疲れなんだが・・・まあ・・・)」


「ふむ?まあとにかく飯を食うのじゃ。そしたら少しルートを外れて寄り道なのじゃ」


「(うん・・・?それは一体どういう事なんだ?)」


 いきなりニアはそんな事を言ってきたのだが、意味が解らず俺は聞いた。

 だが昨晩と同じく詳しい事は話してくれず、再びモヤモヤしたまま気持ちになりながら朝食を取った。


 朝食が終わりレモン空間から外へ出ると、今日はニアが先頭に立って進むから着いてこいと言ってきた。俺はそれに従うしかなく、ニアの後を追って走り出した。


 暫く走っていると俺はある事に気付き、ついついニアに声をかけてしまった。


「(お・・・おい、ニア!これって魔の森の中心方向に向かってないか!?)」


「うん?向かっておるが、如何かしたのじゃ?」


 ニアはあっけらかんと答えるが・・・。


「(いやいや!魔の森の中心にはニアですら敵うかわからない、やばい奴がいるんだろ!?それなのに行くのか!?)」


 どう考えてもこれは自殺行為なんじゃないかと、俺は少しパニック気味になってニアに問いただした。


 するとニアはスピードを落とし俺の横に並んだ。そして俺を落ち着かせるように体を寄せて優しい声で言ってきた。


「大丈夫、そこまでは行かんのじゃ。もうちょっとだけ行ったら目的地なのじゃ」


 ニアにそう言われて幾分かは落ち着いたのだが、それでも中心に行くにつれて空気が変わってくる感じがして、俺はソワソワしっぱなしだった。


 やがてニアの言う目的地に着いたのか、合図を送ってきたので走るのを止めて立ち止まる。

 しかし立ち止まった場所には何もなく、目の前にはただの森が広がっていた。


「(ここがその目的地なのか・・・?一体ここに何が?)」


「ふむ、解らぬかや。やはりまだまだ童なのじゃ」


 何もない事を疑問に思い聞いただけなのに、何故か俺はディスられた。


 このクソ婆!お前みたいに長生きしてねぇんだよ!と、心の中でだけ言い返しておいて、口からは全く違う言葉を出しておいた。


「(俺にはただの森にしか見えないな?ニアには何か見えてるのか?)」


「うむ、と言ってもあるのは地上ではなく地下、それも物理的には見えぬ物なのじゃ」


「(うん?謎々か?)」


 ニアが急に謎々みたいな事を言いだしたが・・・何だろう?

 地上になくて地下にある、そして目に見えない物・・・。つちのうえ、つちのした・・・。


「(てつ!は目に見えるか・・・)」


 謎々はあんまり得意じゃないんだよなぁ・・・とか思っていると、ニアは不思議な顔で俺を見ていた。


「何を考えておるのか知らんが多分違うのじゃ。答えは『龍脈』なのじゃ」


「(は・・・?龍脈ってあの龍脈?)」


「うむ、あの龍脈なのじゃ」


 謎々かと思って考えていた俺は、急にそんな予想外の事を言われて固まった。


 龍脈と言えばポンコが良く口にしていて、何やら凄いイメージがあったんだが・・・。


 まさか・・・?


「(ニアさん?まさかその龍脈を使って何かをするおつもりですこと?)」


「なんでそんな変な口調なのじゃ・・・?まあよい、するのじゃが?」


 マ・・・マジカ。ニアレベルになるとダンジョンコアですら大分制限がありそうな龍脈を使えると言うのか・・・。


 俺が驚愕して呆けていると、その間にニアは龍脈に何かをしたらしく、ステータスみたいな半透明の板がその場に現れた。



 そしてそこに映っていたのは・・・。



 ------------------------------------

 作者より:読んでいただきありがとうございます。チョコチョコと一章の改修をしており、ご迷惑をおかけしております事をお詫びいたします。

「面白い」「続きが気になる」「○○かける○○とる」等思ったら☆で高評価や♡で応援してください。

 ☆や♡をもらえると 一狼が、最高の子供になります。

 ※カクヨムコンテストに応募中です。ぜひ応援をよろしくお願いします。

 ↓こちらも絶賛連載中です、よろしかったらどうでしょう。

 『女の子になったと思ったら霊が見えるようになった話』 ※一応ホラーです。

 https://kakuyomu.jp/works/16816927859115427347

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る